こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の中から『ケーススタディ7:空き家・空きビルの福祉転用』について5回に分けて書いていきます。今回は3回目になります
エレベーターの種類
Contents
1.ケーススタディ7:福祉転用の実例
◉建物の概要
1⃣本ケースの始まり
2⃣グループホーム開設までの経緯
3⃣改修の概要
4⃣設計の進め方
5⃣福祉転用に関わる設計内容
◉エレベーターの種類
6⃣その他の設計上の工夫
1.福祉転用の実例
現在、全国各地で使われなくなってしまっている空き家が急増しています。このような貴重な地域資源を福祉用途に転用することは、高齢者や障害者の生活環境の改善に大きな期待が出来ます。
しかし、福祉転用は簡単なことではなく、多くな課題が存在します。そこで、福祉転用の概要や実際の進め方についてまとめていきます!!
5回に分けて書いていきますが…全体の流れとして、
- ①福祉転用とは
- ②福祉転用の条件
- ③福祉転用の実例
- ④福祉転用の注意点
- ⑤福祉転用のあるべき姿
となっています。
良かったら、
から見ていただけると、流れがわかりやすくなると思います。
今回は、下記の「③福祉転用の実例」について書いていきます。
- ◉建物の概要
- ・名称:重度身体障害者グループホームよこかわ
・所在地:東京都
・運営:特定非営利活動法人 若駒ライフサポート
・構造:定員4名/木造2階建て
・規模:敷地面積308㎡/建築面積118㎡/延べ床面積212㎡
・開設:2002年11月
1⃣本ケースの始まり
今回のケースは、身体・知的ともに重度の障害のある子どもの親たちが、「生まれ育った場所で、仲間と共に暮らしてゆく」ための活動を始めたことに遡ります。
「仲間づくり」と「親以外の人からの介助を受けて暮らす」ことを重要視しながら、まず初めに障害者が親元から離れて宿泊できる場を作り、10名のメンバーが3人ずつ、交代でグループ宿泊を始めました。1990年(平成2年)のことです。
その後、グループ宿泊体験及び緊急一時宿泊ができる場を開設し、そこで1人暮らしを始める利用者も現れました。
このように地域で徐々に活動を展開していく中で、重度の障害を持った人たちでも住むことが出来るグループホーム建設への動きが始まりました。
2⃣グループホーム開設までの経緯
今回のケースの運営者たちは、障害者が地域で親から離れて暮らせるよう、資金集めや宿泊体験、スタッフの育成、地域ボランティアの呼びかけなど、地道な活動を続けていました。
2001年(平成13年)には、今回のケースの元の建物である店舗(編み物教室)付き住宅を借りて、3~4人で1週間ずつ宿泊する一次体験宿泊を開始しました。
そして、2002年(平成14年)、この建物をグループホームとして利用することを決め、設計士に改修の設計を依頼しました。
2002年1月に設計士に設計を依頼し、8月には改修工事にに着工、3か月後の11月にグループホームがオープンしました。
3⃣改修の概要
改修前の建物には、1階の北側に土間、その南側には住宅と編み物教室が配置されていました。
編み物教室だった部分をリビングダイニングとし、その西側に台所が設けられました。1階の2つある和室は居室としました。
2階については、北側に設けられていた玄関や台所を撤去し、廊下で繋げ、南側に居室を2つ設け、東側の1室を管理人室としました。
4⃣設計の進め方
2002年1月に設計が依頼された直後、設計士がまず行ったことは、既存建物の調査になります。その結果、間取りの変更はもちろん、耐震補強が必要であることが判明しました。
今回の事例では、設計依頼時にグループホームの入居者が決定していました。
設計士は、入居予定者の自宅に泊まり込み、生活の様子を確認したうえで設計に当たりました。
建築費は補助金(東京都重度身体障害者グループホーム緊急整備費補助、2400万円)で賄うため、限られた予算の中で安全性を担保しつつ、入居者が出来るだけ自立した生活を送れるよう、打ち合わせを重ねながら設計がすすめられました。
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5⃣福祉転用に関わる設計内容
改修の設計における最大の課題は耐震補強でした。もともとの建物の耐震力が不足していたため、工事に際しては、内部の壁や床を取り払い、柱・針・筋かいには補強が施されました。
既存の基礎については、鉄筋コンクリートが増し打ちされ、加えて基礎と柱の金物も追加されました。
次に課題となったのは、1階と2階の移動です。既存建物にエレベーターは設置されていませんでしたが、今回の事例では利用者全員が重度の身体障害を持ち、2階に入居予定の2人は車椅子を利用しているため、エレベーターの導入は必要不可欠でした。
ここで、簡単にエレベーターの種類について簡単に説明します。
- ◉エレベーターの種類
- 【乗用エレベーター】
●一般乗用エレベーター
・用途:事務所、共同住宅、商業施設、ホテル、病院、倉庫、駅など
●共同住宅用エレベーター
・用途:共同住宅
●ホームエレベーター
・用途:個人住宅
●小規模建物用小型エレベーター
・用途:寺院、無床診療所、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム、集会所、養護学校、児童福祉施設、保育所など
【寝台用エレベーター】
・用途:病院、有床診療所、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)、 身体障害者療養施設、重症心身障害児施設など
※出典:日本建築学会編「空き地・空きビルの福祉転用」より
一般の建築に使用されるエレベーターには、乗用・寝台用エレベーターがあり、乗用エレベーターは人の輸送のためのものになります。
寝台用エレベーターとは、ベッドやストレッチャーに乗せた人を輸送するためのもので、乗用エレベーターに比べ床面積の設定を大きくすることが出来ますが、住宅や事務所ビルなどに設置することはできません。
乗用エレベーターには、ホームエレベーター(個人住宅用エレベーター)と共同住宅用エレベーター、小規模建物用小型エレベーターが含まれ、それぞれ主な用途が定められています。
ホームエレベーターは、個人住宅に用途が限られるため、福祉用途で使用することが出来ません。
今回の事例の場合、住宅ではないグループホームに設置するため、小規模建物用小型エレベーターを設置することになりました。
1階と2階との移動だけでなく、地面から床までの段差や、浴室での浴槽への移動も、重度の身体障害者には課題となります。
今回の事例では、玄関の上がり框に段差が残されていますが、これは天井走行式リフトを設置することで解消されています。そして、浴室と脱衣室、1階の廊下にも天井走行式リフトが設置されました。
6⃣その他の設計上の工夫
今回の事例では、前述のとおり設計者が入居者の自宅での暮らし方を綿密に観察し、グループホームでも入居者が暮らしやすいよう、きめ細やかな設計が行われています。
例えば、トイレについて、1階に1か所、2階に2か所の計3か所に設けられ、それぞれトイレ用手すり付きの洋式便器、床埋め込み式和式便器など、入居者の使い方に合わせたものを使用しています。
また、1階の入居者のうち1人は、室内では這って移動するため、使いやすいように低い位置に洗面台を設けました。
入居者の多くが車椅子を利用することに対する配慮も、今回の事例では随所に見られます。
建物内の廊下のうち入居者が利用する部分は、車椅子で移動がしやすいように十分な幅が確保され、エレベーターは、玄関の正面に配置され、アクセスが容易であるように配慮されています。
また、脱衣室では車椅子の乗り降りや脱着衣、入浴後に体を拭くなど、多くの行為が行われるため、浴室よりも広い面積が確保され、各種動作が介助を伴いながら問題なく行えるようにしつらえてあります。
その他、コストを抑えるため、もともと使っていた建具を再利用したり、中古品を利用するなど、さまざまな工夫がされています。
今回はここまで。次回は 「④福祉転用の注意点」について書いていきます。よかったら見に来てください。
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