こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の中から『ケーススタディ7:空き家・空きビルの福祉転用』について5回に分けて書いていきます。今回は4回目になります。
「建築基準法」上の用途に関する注意点
Contents
1.ケーススタディ7:福祉転用の3つの注意点
1⃣「建築基準法」上の用途に関する注意点
◉特殊建築物に分類される建築物の用途(表)
2⃣用途変更の建築確認申請に関する注意点
3⃣既存不適格に関する注意点
1.福祉転用の3つの注意点
現在、全国各地で使われなくなってしまっている空き家が急増しています。このような貴重な地域資源を福祉用途に転用することは、高齢者や障害者の生活環境の改善に大きな期待が出来ます。
しかし、福祉転用は簡単なことではなく、多くな課題が存在します。そこで、福祉転用の概要や実際の進め方についてまとめていきます!!
5回に分けて書いていきますが…全体の流れとして、
- ①福祉転用とは
- ②福祉転用の条件
- ③福祉転用の実例
- ④福祉転用の注意点
- ⑤福祉転用のあるべき姿
となっています。
良かったら、
- 初回:【①空き家・空きビルの福祉転用】福祉転用が注目を集めている理由 vol.778
- 前々回:【②空き家・空きビルの福祉転用】消防法に関する規定 vol.779
- 前回:【③空き家・空きビルの福祉転用】実例:グループホーム開設までの経緯 vol.780
から見ていただけると、流れがわかりやすくなると思います。
今回は、「④福祉転用の注意点」について書いていきます。
1⃣「建築基準法」上の用途に関する注意点
まず、最も注意を要することは「建築基準法」の用途に関することで、建築基準法ではそれぞれの下記の表(特殊建物に分類される建築物)にある通り、用途別に細かい規定があります。
そのため、建設しようとしている建物が、下記の表に示す用途のうち、どれに該当するのかは、最終的には建築確認申請を提出する行政機関等の判断に委ねられ、全国一律ではありません。
◉特殊建築物に分類される建築物の用途
【建物の用途:区分1】
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場など
【建物の用途:区分2】
・病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
【建物の用途:区分3】
・学校、体育館など
【建物の用途:区分4】
・百貨店、マーケット、展示場、カフェ、キャバレー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場など
【建物の用途:区分5】
・倉庫など
【建物の用途:区分6】
・自動車車庫、自動車修理工場など
※「建築基準表」別途第一に基づく区分
特に、認知症高齢者グループホーム・障害者グループホームの用途について、一般的には「寄宿舎」とすることが多いですが、ごくまれに「児童福祉施設等」とする自治体もあります。
その場合、耐火規定が厳しくなり、既存の木造住宅を転用することは極めて厳しくなります。
2⃣用途変更の建築確認申請に関する注意点
特殊建築物ではない建物を、特殊建築物に用途変更し、また用途変更に該当する部分の面積が200㎡を超える場合は、建物確認申請を行わなければなりません。
建物確認申請を提出する際には、転用しようとする建物が建築当時の法規に適合していることが前提となりますが、これを証明するためには、建築時の「検査済証及び副本(建築確認申請許可時の図面、構造計算書等)」が必要になります。
しかし、建築から時間が経過した建物の場合、「検査済証」が散逸してしまい、容易に入手できないこともあります。
このような場合は、その建物が建築当時の法規に適合しているのか調査を行い、適合していない部分がある場合には改修を行って、適合させたことを行政機関に報告してはじめて、建築確認申請を提出することが出来ます。
この調査は、壁体内の柱など構造部材を全て確認する必要があり、かなりコストが必要となるので、「検査済証」等の書類がない建物を転用しようとする際には慎重な検討が必要になります。
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3⃣既存不適格に関する注意点
「既存不適格」とは、建設当時は「建築基準法」の基準に適合していた建物が、その後の「建築基準法」が改正され基準が厳しくなったため、現状での基準には適合していない状態を意味します。
既存不適格であっても、用途変更のみで一切の改修を行わない場合は問題ありませんが、増改築を行い、また増改築部分の面積が建物の面積の半分以上の場合は、原則として建物全体を現行法規に合致することが求められます。
既存不適格のうち、最も対応が難しいものが耐震基準になります。
特に、1979年(昭和54年)の宮城沖地震を踏まえて行われた1981年(昭和56年)6月の「建築基準法」改正では、耐震基準が大きく見直されました(1981年6月以降の耐震基準を一般的に「新耐震基準」と呼びます)。
この新耐震基準で確認申請を行っていれば耐震性能について概ね問題はないといえますが、そうでない場合は十分な耐震性能を満たしていないことが予測され、耐震補強が必要となる可能性が高くなります。
既存不適格状態にある建築物の取り扱いについては、近年建築ストックの有効活用の面から、規制が合理化・緩和されています。
状況は現在でも変化しつつありますが、利用者の安全と生命を守るためには、基準への適合は極めて重要な要素で、設計者・行政機関等との十分な相談・検討が必要になります。
今回はここまで。次回は 「⑤福祉転用のあるべき姿」について書いていきます。よかったら見に来てください。
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