こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の中から『ケーススタディ7:空き家・空きビルの福祉転用』について5回に分けて書いていきます。今回は最終の5回目になります。
「なじみやすさ」と安全性
Contents
1.ケーススタディ7:福祉転用のあるべき姿
1⃣相次いだ小規模福祉施設の火災
◉近年の小規模福祉施設の火災(表)
2⃣「なじみやすさ」と安全性
3⃣良い建物を長く使う
2.まとめ
1.福祉転用のあるべき姿
現在、全国各地で使われなくなってしまっている空き家が急増しています。このような貴重な地域資源を福祉用途に転用することは、高齢者や障害者の生活環境の改善に大きな期待が出来ます。
しかし、福祉転用は簡単なことではなく、多くな課題が存在します。そこで、福祉転用の概要や実際の進め方についてまとめていきます!!
5回に分けて書いていきますが…全体の流れとして、
- ①福祉転用とは
- ②福祉転用の条件
- ③福祉転用の実例
- ④福祉転用の注意点
- ⑤福祉転用のあるべき姿
となっています。
良かったら、
- 初回:【①空き家・空きビルの福祉転用】福祉転用が注目を集めている理由 vol.778
- 2回目:【②空き家・空きビルの福祉転用】消防法に関する規定 vol.779
- 3回目:【③空き家・空きビルの福祉転用】実例:グループホーム開設までの経緯 vol.780
- 前回:【④空き家・空きビルの福祉転用】福祉へ転用する際の3つの注意点 vol.781
から見ていただけると、流れがわかりやすくなると思います。
今回は、「⑤福祉転用のあるべき姿」について書いていきます。
1⃣相次いだ小規模福祉施設の火災
2006年(平成18年)1月8日、2003年(平成15年)に新築・開設された認知症高齢者グループホームで火災が発生し、入居者9人中7人が亡くなるという大惨事が起こりました。
この火災をきっかけに「消防法」等が見直され、小規模な福祉施設に対する防火義務も強化されました。
しかしながら、その後も下記の表にある通り、小規模福祉施設における火災は相次いでいます。
- ◉近年の小規模福祉施設の火災(表)
- ◉2006年1月8日
・認知症高齢者グループホーム
・死者7名、負傷者3名
◉2008年6月2日
・障害者ケアホーム
・死者3名、負傷者1名
◉2008年12月26日
・小規模多機能型居宅介護
・死者2名、負傷者3名
◉2009年3月19日
・未届け有料老人ホーム
・死者10名、負傷者1名
◉2010年3月13日
・認知症高齢者グループホーム
・死者7名、負傷者2名
◉2013年2月8日
・認知症高齢者グループホーム
・死者5名、負傷者7名
特に、2010年(平成22年)3月の火災で、7人が亡くなった認知症高齢者グループホームは、民家を改築して開業した際、「建築基準法」に基づく建物の住宅から寄宿舎への用途変更手続きをしておらず、「建築基準法」違反状態であったとされています。
しかし、規模が小規模だったため用途変更を行ったとしても、当時の基準ではスプリンクラーの設置義務は生じず、火災通報装置の取り付けについても猶予期間中のため義務ではありませんでした。
また、住宅用火災報知器(非連動型)は設置済みでした。
2⃣「なじみやすさ」と安全性
福祉転用の意義の1つとして、これまで地域で長く使われてきた建物を利用するため、利用者や地域にとって「なじみやすい」施設になることをこれまで書いてきました。
しかし、この「なじみやすさ」は、もともと福祉用途ではない建物であるという点で、上記の表の火災に対する安全性や、地震に対する安全性などと常にせめぎ合いを迫られています。
ここで重要になるのが、2010年の火災が示すように、設備が完全であれば安全であるというわけでは、必ずしもないということです。
その後、スプリンクラーの設置が義務付けられましたが、スプリンクラーは原則として避難する時間を確保するためのものであり、防火について万能であるわけではありません。
大切なことは、日頃から地域の消防や住民組織と密接なつながりを持ち、非常時には素早く連携した対応を取れるような関係を構築しておくことです。
3⃣良い建物を長く使う
福祉転用を考えるとき、ともすればコスト面にばかり目が行ってしまうことがあるかもしれません。
確かに、既存の建物を改修して利用することは、全てを新築することに比べれば安価であることが多いです。
しかし、結果としてできた建物が、快適性や安全性を十分に担保できないものになるようでは、むしろ新築を選択するべきでしょう。
福祉転用の意義は、地域にとって価値のある建物を、福祉用途という、社会的に意義のある目的のために再利用することにあります。
単に安価であるからといって、質の悪い建物を再利用することは、福祉転用の本質から大きく逸脱しています。
他の『福祉住環境』記事はこちらから・・・
【バリアフリーとは?】ユニバーサルデザインの7原則 vol.118
【バリアフリー・ユニバーサルデザインの歴史と取り組み】vol.119
【高齢者を取り巻く住環境と施策】5つの高齢者向け住宅 vol.121
【高齢者に多い疾患の特徴と治療】求められる住環境整備 vol.122
【高齢者に多い骨折の特徴と治療】生活上の問題点と福祉住環境整備 vol.125
【①段差の解消と床材の選択】転倒による骨折を防ぐための方法 vol.176
【②段差の解消と床材の選択】高齢者等への配慮に関する評価基準 vol.177
【手すりの種類】取り付け位置や取り付け方法とは? vol.178
【引き戸・開き戸とは?】建具の種類と特徴について vol.179
【心身の特性に合ったインテリア】住宅改造の費用と緊急事態の対応 vol.181
【①外出】屋内から屋外へ安全に移動出来る住環境設備とは? vol.182
【②外出・車いす】玄関・式台等の福祉住環境設備とは? vol.183
【設計図面13の読み方】福祉住環境の実践に必要な建築知識 vol.192
【住環境整備における留意点】住宅建築における基礎知識 vol.193
2.まとめ
これまで日本では、建物を造っては壊すことを繰り返してきました。
しかし、今後の人口減少が予想される状況で、そのような建物の造り方、使い方を考え直す時期に来ています。
建物を新築するときから長期的な使用を前提として、なるべく良質な建物をストックとして蓄積すること、これが福祉転用の本質的な意義になります。
他の『高齢者』記事はこちらから・・・
高齢者の生活支援において大切なこと【10の方法】 vol.55
【老年期の定義】日本と世界の平均寿命、高齢化率とは? vol.82
【介護保険制度】介護保険がつくられた4つの理由! vol.85
【❸認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式】センター方式の3つのポイント vol.498
【高齢者】サクセスフルエイジング・プロダクティブエイジング・アクティブエイジングとは? vol.587
【高齢者の疾患7つの特徴】廃用症候群の3種類と老年症候群の3分類 vol.588
【①少子高齢化による社会保障の影響】年金、医療、介護などを支える財源不足 vol.595
【②少子高齢化による社会保障の影響】社会保障関係費・一般会計歳入・社会保障給付費について vol.596
【③少子高齢化による社会保障の影響】社会保障における給付と負担の関係 vol.597
【❶高齢者保健福祉】福祉の歴史・恤救規則~救貧施策~老人福祉法制定まで vol.598
他の『ケーススタディ』記事はこちらから・・・
【①ケーススタディ1:住宅編】脳性麻痺のある子どもがいる家族の転居 vol.748
【②ケーススタディ1:住宅編(脳性麻痺のある子ども)】課題の検討・3つのリフト案 vol.749
【③ケーススタディ1:住宅編(脳性麻痺のある子ども)】リフト設置計画における3つの配慮 vol.750
【④ケーススタディ1:住宅編(脳性麻痺のある子ども)】リフト設置後の2つの課題と3つの変化 vol.751
【❶ケーススタディ2:障害者の転居先の改修】築45年の戸建住宅からマンションへ vol.752
【❷ケーススタディ2:障害者の転居先の改修】プランニングのポイント vol.753
【❸ケーススタディ2:障害者の転居先の改修】制度の利用(日常生活用具給付等事業) vol.754
【❹ケーススタディ2:障害者の転居先の改修】改修の6つの問題点 vol.755
【❺ケーススタディ2:障害者の転居先の改修】工事結果の7つの評価 vol.756
【①ケーススタディ3:脳梗塞による障害を持つ高齢者の住宅改修】ヒアリングで課題の整理 vol.757
【②ケーススタディ3:脳梗塞による障害を持つ高齢者の住宅改修】4つの課題と対応策 vol.758
【③ケーススタディ3:脳梗塞による障害を持つ高齢者の住宅改修】介護保険制度の利用 vol.759
【④ケーススタディ3:脳梗塞による障害を持つ高齢者の住宅改修】今後のフォローアップ vol.760
【❶ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】3つの課題 vol.761
【❷ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】東京都の設備基準 vol.762
【❸ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】入居者・設計士の選定 vol.763
【❹ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】設計に求めた3つの要望 vol.764
【❺ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】資金計画(設備資金/内訳) vol.765
【❻ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】ヘルパーの確保と食事の課題 vol.766
【❼ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】開設までのスケジュール vol.767
【①ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】対象ケースの概要 vol.768
【②ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】住民主導の福祉 vol.769
【③ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】通所介護事業の開設 vol.770
【④ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】住民から土地の提供を受ける vol.771
【⑤ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】「風の丘」の機能や特徴 vol.772
【⑥ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】活動を継続するためには? vol.773
【❶ケーススタディ6:地域共生社会】介護予防・住民主体の支え合い vol.774
⭐気になるワードがありましたら、下記の「ワード」若しくは、サイドバー(携帯スマホは最下部)に「サイト内検索」があります。良かったらキーワード検索してみて下さい(^▽^)/
ADL QOL グループホーム ケーススタディ コミュニケーション ノーマライゼーション バリアフリー ブログについて ユニバーサルデザイン 介護の法律や制度 介護サービス 介護予防 介護保険 介護福祉士 介護福祉職 他職種 住環境整備 入浴 入浴の介護 医行為 喀痰吸引 地域包括ケアシステム 多職種 尊厳 感染症 支援 施設 権利擁護 社会保障 福祉住環境 福祉住環境整備 福祉用具 経管栄養 老化 脳性麻痺 自立支援 視覚障害 認知症 誤嚥性肺炎 障害について 障害者 障害者総合支援制度 障害者総合支援法 食事 高齢者
に参加しています。よかったら応援お願いします💛
Twitterのフォローよろしくお願いします🥺