こんにちは💛 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の視点から『ケーススタディ:重度身体障害者・グループホームの開設』について7回に分けて書いていきます。今回は6回目になります。
建築面の課題と地域との関係
Contents
1.重度身体障害者・グループホームの開設
◉建物の概要/開設当初の入居者の概要
1⃣評価と新たな課題
(1)開設直後の状況と問題点
❶ヘルパーの確保
❷食事の課題
❸建築面の課題
(2)開設直後の入居者の生活と変化
❶地域との関係
❷リフトの設置
1.重度身体障害者・グループホームの開設
今回は、事例として「重度身体障害者・グループホームの開設」について書いていきます。
全体の流れとして、
- 1⃣対象ケースの概要
- 2⃣課題の把握
- 3⃣課題の検討
- 4⃣課題への対応1・2・3
- 5⃣評価と新たな課題
- 6⃣まとめ
となっています。今回は、「5⃣評価と新たな課題」について書いていきます。
良かったら、
- 1回目:【❶ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】3つの課題 vol.761
- 2回目:【❷ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】東京都の設備基準 vol.762
- 3回目:【❸ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】入居者・設計士の選定 vol.763
- 4回目:【❹ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】設計に求めた3つの要望 vol.764
- 前回:【❺ケーススタディ4:重度身体障害者・グループホームの開設】資金計画(設備資金/内訳) vol.765
から見ていただけると、流れがわかりやすくなると思います。
- ●建物の概要
- ・所在地:東京都
・構造・規模:定員4名/木造2階建て/敷地面積116㎡/建物面積69㎡・延床面積139㎡
・開設:2006年5月
- ◉開設当初の入居者の概要
- ・性別・年齢:男性24歳(Kさん)/男性31歳(Lさん)/女性20歳(Mさん)/男性27歳(Nさん)
・疾患:脳性麻痺
・身体障害者手帳:1級
・移動方法:介助用車椅子(Kさん・Lさん)/標準型電動車椅子(Mさん・Nさん)
1⃣評価と新たな課題
(1)開設直後の状況と問題点
工事は2006年(平成18年)1月から始まり、同年5月には竣工、竣工とほぼ同時に開設しました。
入居者は、開設後ただちに毎日グループホームで過ごすということにはならず、初めは週に数日間、その後毎日グループホームで過ごすというように、徐々にグループホームでの生活に慣れていきました。
❶ヘルパーの確保
開設後、事前の予想通りヘルパーの確保が大きな課題となりました。
グループホームでの介助時間は、入居者が起床してから日中活動に出掛けるまで(本ケースは午前6時前後から午前10時まで)、加えて日中活動から帰宅した入居者が就寝するまで(午後3時から午後11時前後まで)となり、ヘルパーは日中に長時間働くことができないうえ、早朝・深夜勤務も求められます。
また、「身体障害者」の介助に慣れた介助者が少ないということもあり、ヘルパーの確保は困難を極めました。
初期は、いくつかの居宅介護派遣事業支所からヘルパーが派遣されていましたが、このような不規則な労働時間や身体障害者への介助可能なヘルパーの不足から、現在では全てのヘルパーが開設者らが設立した事業所から派遣されています。
❷食事の課題
ヘルパーの確保と同じく、朝食・夕食の調理スタッフの確保も大きな問題となりました。
調理は、ヘルパー(重度身体介護)の職務範囲ではなく、またグループホームの職員が調理を行うことも、基本的にはヘルパー作業を行っているため困難になります。
当初は、調理スタッフを確保できていましたが、継続的な確保が難しく、民間の配食サービスを利用したところ、入居者からは不満の声が聞かれました。
このような折、Oさんの知人で、一般就労をしていた軽度知的障害を持つ人が、勤め先が閉店したため職場を失ってしまいました。
これらの状況から、開設者らが設立した事業所は事業の一環として飲食店を開業します。
ここでは、通常の飲食店業務と並行して、グループホームへの配食も行い、同時に知的障害者の就労の場としても機能しています。
❸建築面の課題
建築面では、Oさん側からの意見として、せっかく「家庭的」なグループホームを目指したにもかかわらず、「消防法」などの改正により様々な消防設備等の設置が義務付けられるなど、施設的な要素が生じてしまったとの声が聞かれました。
具体的には、2012年(平成24年)3月には自動火災警報装置が、また、2014年(平成26年)8月にはスプリンクラーが設置されました。
グループホームの安全性という面では、これらの設備は極めて有効ですが、他方で、後付けでの設置のため、一部スプリンクラーの配管が露出してしまっています。
(2)開設直後の入居者の生活と変化
開設後、約15年を経過した現在、ヘルパー確保の問題は依然として残るものの、入居者は職員・ヘルパーとともに落ち着いた生活を送っています。
平日の日中は入居者全員が作業所等に通い、帰宅後は買い物や入浴、夕食など、それぞれの生活を過ごしています。
開設後しばらくして、月に1度入居者と職員、法人関係者を交えての入居者会議が始められ、日常生活の細かなことから将来の生活まで、多岐に渡る内容が話し合われるようになりました。
また、定期的に入居者が担当して夕食の献立を作り、ヘルパーの介助の下に買い物や調理を行う「手作り夕食会」などの活動も行っています。
加えて、年に数回、職員による防災や衛生管理などについて研修会を実施しています。
入居者の変化としては、開設時の入居者2人が1人暮らしを希望したことにより退去し、新たな入居者が加わりました。
❶地域との関係
地域との関係について、特に地域住民と積極的に交流を持つための活動はしていませんが、作業所へ向かう送迎バスの待ち合わせ場所へ向かう途中、近隣の住民が「おはよう」などと声をかける姿を見かけるようになりました。
また、ほとんどの入居者が家族のそばで暮らしているため、それぞれの地域生活が持続できています。
自治会には、全ての入居者が加入し、自治会主催の防災訓練や清掃活動などに積極的に参加してます。
❷リフトの設置
開設後の建築的な大きな変更点として、2009年(平成21年)に、浴室に入浴用リフトが設置されました。
これは主に入居者の身体状況の変化に対応したためですが、このような変更は設計時から予測され、必要な個所には補強下地が取り付けられていたため、設置時に特に大規模な工事は行われませんでした。
また、2015年(平成27年)には、入居者の入れ替わりに伴い、居室1部屋と2階の廊下・トイレに据置式リフトが設置されました。
ここでも、特段大規模な工事は発生していません。
今回はここまで。次回は、「6⃣まとめ」について書いていきます。良かったら見に来てください!
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