相談援助と福祉住環境整備

【②ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】住民主導の福祉 vol.769

2022-07-22

こんにちは💛 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の視点から『ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設』について6回に分けて書いていきます。今回は2回目になります。

建物の概要

Contents

1.地域密着型有料老人ホームの開設
 ◉建物の概要
 1⃣住民主導の福祉の胎動
 (1)「伊勢原ホームサービス」を立ち上げるまで
 (2)「高森台福祉のまちづくり勉強会」発足

1.地域密着型有料老人ホームの開設

今回は、事例として「地域密着型有料老人ホームの開設」について書いていきます。

全体の流れとして、

  • 1⃣対象ケースの概要
  • 2⃣経緯1:住民主導の福祉の胎動
  • 3⃣経緯2:「デイ愛甲原」開設
  • 4⃣経緯3:「風の丘」開設に向け
  • 5⃣地域密着型複合施設「風の丘」
  • 6⃣まとめ

となっています。今回は、「2⃣経緯2:住民主導の福祉の胎動」について書いていきます。

良かったら、前回の「【①ケーススタディ5:地域密着型・有料老人ホームの開設】対象ケースの概要 vol.768  」から見ていただけると、流れがわかりやすくなると思います。

●建物の概要
・名称:風の丘
・所在地:神奈川県伊勢原市
・運営:NPO法人一期一会
・事業:食事サービス、居宅介護支援事業所、小規模多機能型居宅介護(登録定員25名)、介護保険外の生活支援サービス、住宅型有料老人ホーム(14室)
・構造・規模:個室14室(11.7~13.83㎡/木造2階建て/建物面積688.71㎡・延床面積499.80㎡(うち、有料老人ホーム337.68㎡)
・開設:2006年5月

地域の中で住み続けたいとする地域住民の普遍的な願いは、自分たちの手によって地域の中で活動を起こし、顔の見える範囲の地域内協力関係をさらに強めることによって実現されていきます。

今回のケーススタディは、社会資源や地域の人的資源を活用しながら、人々の思いを具体化していくプロセスになり、街づくりに繋がる福祉住環境コーディネートとしての効果的な一事例になります。

1⃣住民主導の福祉の胎動

(1)「伊勢原ホームサービス」を立ち上げるまで

川上さん(愛甲原住宅で住民参加福祉を主導していく人物)は、子どもの幼稚園入園を契機に夫の両親と同居するため、高森台に移り住みました。

その時、姑から「ここでは、ご近所付き合いは挨拶程度にして、上がり込んでのお茶飲みはなしね、立ち入らないこと。ただし、向こう三軒両隣なので、家の前はきちんと掃除をしてくださいね」と言われました。

隣近所を含めた地域と良い関係を保つためには、適切な距離の取り方と礼儀が何よりも重要であることを姑に教えてもらったと、川上さんは話しています。

それが、利用者の多くと、スタッフの3分の1が高森台の住民である「風の丘」を運営する際のポイントだったことに後になって気づきます。

移り住んで間もない頃から、幼稚園の園長に頼まれて、延長保育の「ちびっこひろば」を始めたり、娘たちがヴァイオリンを習い始めると、「伊勢原ジュニアオーケストラ」をつくったりと、川上さんは進んで地域で必要と思うものを作り出してきました。

ある時、隣家の高齢夫婦の奥様が、退院直後で食事作りに困り、「お宅の夕飯の一品を分けて下さらない?」と声を掛けてきました。それから毎日、隣に夕食を届け始めましたが、これが川上さんの「地域福祉の始まり」となりました。

姑が地域の人に華道を教えるなど、高齢の知人が多かったこともあり、ちょっとした家事を頼める人がいなくて困っている高齢者世帯が多いことに気づいていました。

そこで、川上さんは幼稚園のママ友達に呼び掛けて、1987年(昭和62年)に「伊勢原ホームサービス」を9人で立ち上げました。

  • 通院のための車の運転や食事作り
  • 買い物の付き添いなどの家事援助サービス

などを、低料金で提供したところ、非常に評判がよく、口コミで利用者は増えていきました。その利用者の中に、のちに「風の丘」の土地を提供する津崎能子さんがいました。

また、活動が楽しそうだからと新たに加わる人もいて、スタッフは11人になりました。

津崎さんは、1967年(昭和42年)に、国家公務員の夫と愛甲原住宅に越してきて、庭の芝生が美しい瀟洒な2階建ての家に住み始めました。

津崎さんの夫は、愛甲原の2代目の自治会長となり、津崎さんは近所の人たちを積極的に自宅に招いて交流の場を作るなど、夫婦で地域に尽くしました。

子どもはおらず、1984年(昭和59年)に夫に先立たれた津崎さんは、広い家で1人暮らしになりました。

ある日、電球を交換しようとして脚立から転げ落ち、入院したことをきっかけに、かねてから評判の伊勢原ホームサービスを利用するようになりました。

具合がよくなってからも、川上さんの子どもが節分の豆まきに訪れて津崎さんを喜ばせるなど、家族ぐるみでのお付き合いが始まりました。

川上さんは、戦中・戦後を懸命に生き、力を合わせて高森台のまちづくりを行ってきた津崎さん達から、地域での生き方や暮らしの知恵など、多くのことを学びました。

(2)「高森台福祉のまちづくり勉強会」発足

町の高齢化率は上昇し、やがて30%に届こうとする1998年に、ある市民から「町の高齢化の進行が早いようだから、福祉の勉強会をしませんか?」と相談を持ち掛けられました。

同じ問題意識を持っていた川上さんは、早速、元自治会長や老人会代表、民生委員、住民の代表等に加え、地域医療やまちづくり、福祉を専門とする大学教授等に声をかけて「高森台福祉のまちづくり勉強会」を発足させました。

地域の課題を話し合うだけでなく、具体的な解決策を編み出していく場となることを期待しました。

「課題が見えたら、即、走り始める」

がモットーの川上さんは、1999年(平成11年)には、社会福祉協議会の委託を受けて「高森台ミニサロンの会(ミニデイサービス)」を、2003年(平成15年)には、通所介護施設「デイ愛甲原」を立ち上げました。

また、この勉強会からは高齢女性ばかりの「アジサイの会」も生まれ、まちの中心にあるショッピングセンターが撤退するという噂が広まると、すぐさま「買いましょ運動」を初めて、徒歩で自分たちが買い物に行ける店を守ろうとしました。

このような活動に至った理由について、「この地域の人たちは、公共財が殆どないところから住み始め、自分たちの力で働きかけていろんなものを実現させてきたからかもしれません」と川上さんは分析しています。

高森台の高齢者は、元国家公務員が多く、夫婦ともに高学歴という特徴があります。一定の距離を保ちながら良好な人間関係を作ってきた都市型のライフスタイルを持つ人たちでしたが、高齢化率が30%を超えたころから、だんだんと互いに歩み寄り、より親密に付き合う傾向が出てきました。

川村さんが仕掛けた勉強会は、住民が自発的に支え合おうとするきっかけや場づくりとなりました。

「知り合いの数と幸せ度は比例する」は、川上さんの口癖ですが、こうして、目指す参加型福祉の土壌が育っていきました。

今回はここまで。次回は、「3⃣経緯2:「デイ愛甲原」開設」について書いていきます。良かったら見に来てください!

地域密着型サービス
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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
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