こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今回は「福祉住環境」の中から『高齢者住宅・施設の種類と機能』について、7回に分けて書いていきます。今日は4回目です!!
厚生労働省が所管する高齢者住宅・施設
Contents
1.厚生労働省が所管する高齢者住宅・施設
◉高齢者住・施設と関連する法令・制度
1⃣ケアハウス
(1)ケアハウスの事業主体
(2)ケアハウスの整備
2⃣有料老人ホーム
(1)有料老人ホームの形態
(2)有料老人ホームの整備
◉有料老人ホームの類型
1.厚生労働省が所管する高齢者住宅・施設
今回は、様々な高齢者施設について、「福祉住環境」の視点から複数回に分けてまとめていきます。※過去にまとめた『高齢者施設』も記事内にリンクを貼ってあります。重複する部分もありますが、良かったらそちらもご覧ください!
わが国の高齢者住宅・施設は種類が多いうえに、いくつもの法令・制度が複雑に絡んでおり、それぞれの特徴を正しく理解するのは容易ではありません。
今回は、高齢者住宅・施設ごとに、
- 法令上の定義
- 創設の経緯や変遷
- ハード・ソフト両面からみた機能
を整理していきます。(次項で図にまとめています)
◉高齢者住・施設と関連する法令・制度
1⃣ケアハウス
ケアハウスは、1989年度に「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」が策定されたのに合わせて創設された軽費老人ホームの一形態で、60歳以上(夫婦の場合はどちらか一方が60歳以上)の高齢者が利用できます。
当初、自炊ができない程度の身体機能の低下が認められるか、高齢のため独立して生活するには不安があり、家族による援助を受けることが難しい高齢者を対象として、
- 生活相談
- 入浴サービス
- 食事サービス
- 緊急時対応
を行う施設として位置づけられました。
その後、1992年の制度改正により、特別養護老人ホームに入所するほど重度の要介護状態ではないが、訪問介護などの居宅サービスを利用することによって日常生活の維持が可能な高齢者も利用できるようになりました。
介護保険制度の導入後は、一定の要件を満たしたケアハウスは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けられるとともに、10人程度を1つの単位とするユニットケアを行う場合には、「介護保険法」に規定する要介護者を優先的に入居させることができるようになりました。
従来のケアハウスでは、身体が虚弱化した場合には、介護サービスが提供される、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどへ住み替えざるを得ませんでしたが、サービス提供体制の整ったケアハウスでは、要介護状態になっても住み続けることができるようになりました。
(1)ケアハウスの事業主体
ケアハウスの事業主体は、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人などに限定されており、営利法人による設置・運営は認められていませんでした。
しかし、政府の規制改革推進3か年計画の後押しにより、2002年度(平成14年)からは、企業が公共用地に建設したケアハウスを地方公共団体がいったん買い取り、当該企業に貸し出すというPFI方式(PFI:Private Finance Initiative)を活用することで、民間企業がケアハウスを運営することが可能になりました。
ただし、この方式を活用したケアハウスの数は少なく、また、近年では事業化された事例がほとんどない状況です。
(2)ケアハウスの整備
ケアハウスの整備には、国庫補助制度(社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助))がありましたが、2004年度までで廃止され、2005年度以降は、都道府県や市町村ごとに定める条例(社会福祉施設等施設整備費補助金交付要綱など)に基づき、都道府県や市町村の判断により行われています。
※2005年度は地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金のうち高齢者施設を対象とする都道府県交付金による整備補助でしたが、2006年度以降は、都道府県等の一般財源による整備補助となりました)。
また、定員29人以下のケアハウスについては、地域医療介護総合確保基金を活用した施設整備補助も行われています。
軽費老人ホームは、低所得高絵里者の受け皿としての役割を期待されている面があります。
しかし、都市部に比べて施設を設置するのに適した広い土地が少ないうえに、地価も高いことから、利用料が都市部以外の地域と比べて高額となりやすく、低所得者でも利用しやすい軽費老人ホームの整備が進まないという問題がありました。
このため、2010年度(平成22年)に、東京都や大阪府などの大都市で、低所得高齢者を対象とした家賃の低い「都市型軽費老人ホーム」(定員20人以下)の制度が創設されました。
これは、従来の軽費老人ホームの設備基準や、職員配置基準を緩和することによって、利用料を低廉な額に抑えたケアハウスの一形態で、要介護度は低いものの、見守りなどが必要なため、居宅での生活が困難な低所得高齢者などが主な利用者となることを想定しています。
都市型軽費老人ホームについては、地域医療介護総合確保基金を活用した施設整備補助が行われています。
2⃣有料老人ホーム
有料老人ホームは「老人福祉法」に規定される届出施設で、高齢者の福祉を図るため、その心身の健康保持及び生活の安定のために必要な施設として整備されるものです。
従来、有料老人ホームは、「常時10人以上の老人を入所させ、食事の提供、その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設であって、老人福祉施設でないもの」と定義されていました。
しかし、2006年度の「老人福祉法」の改正により「10人以上」の人数要件が撤廃されるとともに、
- ❶入浴・排泄または食事の介護
- ❷食事の提供
- ❸洗濯・掃除等の家事
- ❹健康管理
の少なくとも1つのサービスを供与していれば、全て有料老人ホームに該当することになりました。
特例として、「老人福祉法」で規定される老人福祉施設、認知症高齢者グループホームは除外されますが、1人でも高齢者を集めて、上述の❶~❹のいずれかのサービスを提供していれば、全て「老人福祉法」上の有料老人ホームとなります。
(1)有料老人ホームの形態
有料老人ホームが注目を集めるようになったのは、1970年代中頃からになります。特別養護老人ホームが量的に不足するとともに、措置制度による施設は誰もが自由に利用できるわけではなかったこと、また個室や広い居室面積など質の高い居住環境を希望する高齢者が増えてきたことなどが、その背景にあったと考えられます。
当時の有料老人ホームは、健康な高齢者が老後の生活を楽しむ場として、居室以外にも多様な共有施設を有し、食事やレクリエーションなどのサービスを提供する高齢者向けマンションという形態のものが多くありました。
バブル経済の1980年代後半には有料老人ホームブームが起こり、新設ラッシュを迎えます。
大手の民間企業が数多く参入し、自立高齢者を対象とした、入居一時金が数千万円~数億円という高級有料老人ホームが都市部を中心に数多く供給されました。
当時は、単身または夫婦で入居して食事や家事サービス、レクリエーションなどを受け、要介護状態になった場合は介護室などで介護サービスを受ける「入居時自立、終身介護」という形態のホームが一般的でした。
バブルが崩壊すると、高額な有料老人ホームの販売が低迷し、1990年代前半は供給が落ち込みました。しかし、1990年代後半になると、企業のリストラで遊休化した社宅や単身寮を借り上げて改修し転用することで、入居一時金の額を数百万程度に抑えた低価格型の有料老人ホームが数多く登場するようになりました。
また、バブル期とは異なり、要介護高齢者を主な対象とするホームが増加しました。
2000年代以降は、一定の要件を満たした有料老人ホームは、「介護保険法」上の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けることで、介護保険の給付対象となりました。このため資金参入する事業者が増え、施設数は増加しました。
形態は、特定施設入居者生活介護サービスを利用するよう要支援・要介護者向けのホームが大半を占めるようになり、自立者向けホームは数が増えず、相対的に割合が低下していきました。
2006年度に「老人福祉法」が改正され、法律上の定義が大幅に変わりました。加えて、入居者保護の強化を目的とした新たな規定も数多く盛り込まれ、有料老人ホームを取り巻く環境は大きく変化しました。
(2)有料老人ホームの整備
有料老人ホームは事業主体の制限がないものの、設置に当たっては建築確認後速やかに都道府県知事等へ届け出を行うこととされています。
また、都道府県等が定める「有料老人ホーム設置運営指導指針」にのっとって設置することが求められており、
- 事業者は立地条件
- 建築の構造設備
- 施設の管理・運営
- サービス
- 契約内容
など、事業全般にわたって、様々な要件を遵守しなければなりません。
有料老人ホームは、厚生労働省が定める「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」により、
- 「介護型」
- 「住宅型」
- 「健康型」
の3つに大別されます。
◉有料老人ホームの類型
【介護付き有料老人ホーム】
[❶一般型特定施設入居者生活介護]
・介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となっても、当該有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら、当該有料老人ホームの居室で生活を継続することが可能
・介護サービスは有料老人ホームの職員が提供する
・特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームについては、介護付きと表示することはできない
[❷外部サービス利用型特定施設入居者生活介護]
・介護付きのサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となっても、当該有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら、当該有料老人ホームの居室で生活を継続することが可能
・有料老人ホームの職員が安否確認や計画作成等を実施し、介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供する
・特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームについては、介護付きと表示することはできない
【住宅型有料老人ホーム】
・生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となった場合は、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら、当該有料老人ホームの居室での生活を継続することが可能
【健康型有料老人ホーム】
・食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となった場合は、契約を解除して退去しなければならない
介護保険制度の特定施設入居者絵師かつ介護の指定を受けられるのは、介護付き有料老人ホームだけであるため、2000年~2006年にかけて開設された有料老人ホームの大半は介護付きでしたが、2006年度以降、新規開設を認めない(特定施設入居者生活介護の指定に一定の制限を設けた)地方公共団体が増え、2007年(平成19年)以降は、住宅型有料老人ホームが急速に増加し、現在に至るまでこの傾向は続いています。
有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、事業主体が自ら介護サービスを提供するタイプ(介護付き)がある一方で、訪問介護や通所介護など外部の居宅サービスと連携し生活支援を行うタイプ(住宅型)もあるなど、その運営内容は多様です。
そうした中、従来「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」の対象からは除外されていた、
- サービス付き高齢者向け住宅についても位置づけを明確にすることが求められていること
- 有料老人ホームの届け出規定を順守していない事例が増加していること
- 入居者が自由に外部の居宅サービスなどを選ぶのを妨げていると疑われるような事例が一部にみられること
などから、有料老人ホーム運営について様々な課題が生じているとして、厚生労働省は2015年3月、「有料老人ホーム設置運営標準指針」を改正し(施行は同年7月)、これらの問題や課題委の改善を目指すこととしました。
また、2017年6月に公布された「地域包括ケア強化法」により、「老人福祉法」「介護保険法等の一部を改正する法律」が改正され、有料老人ホームについては、2018年4月から、入居者保護を必要とし、次の4つを一層の強化が図られるようになりました。
- ❶事業停止命令の創設:再三の指導に従わず悪質な事業を続ける有料老人ホームへの指導監督を強化するため、未届けの有料老人ホームを含め、悪質な有料老人ホームに対する事業停止命令を行えるようになった。
- ❷前払金保全措置の義務の対象拡大:万一事業者が倒産などした場合も有料老人ホーム入居者の生活が守られるよう、入居一時金など前払金を受領する場合の保全措置の義務対象を拡大した(従来義務対象外だった2006年3月31日以前に届け出がされた有料老人ホームも、2021年4月1日以降の新規入居者からすべて適用)。
- ❸都道府県等による入居者に対する援助:事業停止命令や事業者の倒産などの際に、有料老人ホーム入居者の心身の健康の保持や生活の安定を図るため、都道府県等は必要があるとき、入居者が介護などのサービスが引き続き受けらえるように必要な援助を行うこととした。
- ❹有料老人ホームの情報の報告・公表:入居希望者の入居の選択が適切に行われるとともに、事業者の法令遵守を促すため、各有料老人ホームが提供するサービス内容などの情報について都道府県等への報告を義務付けました。また、有料老人ホームの情報を一覧表として公表することとしました。
2021年度の「介護保険法」改正により、有料老人ホームの入居者保護のための取り組みはさらに強化されることになりました。同時に「老人福祉法」を改正し、都道府県に届け出のあった有料老人ホームの情報を、市町村に通知することを義務付けるととともに、未届けの疑いのある有料老人ホームを市町村が発見したときは、都道府県に通知するよう努めることとしました。
都道府県と市町村が連携して、密接な情報共有を行うことで、有料老人ホームの設置状況を的確に把握し、「老人福祉法」などの規定に違反する施設の早期発見と是正のための指導が徹底されることになりました。
次回は、「認知症高齢者グループホーム」と「生活支援ハウス」についてまとめていきます!!
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