こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「コミュニケーション技術」の中から『軽度・中度・重度認知症のコミュニケーション技術』についてまとめていきます。
重度認知症の人に保たれている言葉の能力の例
Contents
1.進行度合いに応じたコミュニケーション技術
1⃣軽度認知症(HDS-R/MMSE)
2⃣中度認知症
3⃣重度認知症
◉重度認知症の人に保たれている言葉の能力の例
1. 進行度合いに応じたコミュニケーション技術
介護の現場では必ずしも認知症の原因疾患が確定診断されているとは限りません。
アルツハイマー型認知症に加えて血管性認知症を発症したというように、いくつかの認知症が合併していることもあります。
今回は、認知症の進行度合いという観点から、それぞれの重症度に応じたコミュニケーション技術を考えていきます。
1⃣軽度認知症(HDS-R/MMSE)
軽度認知症は、HDS-RやMMSEで、概ね20点以上が目安です。日付の見当識はあいまいですが、自分が今いる場所はなんとなくわかる、まわりの状況も一応は把握しているといった状態です。
- HDS-R、MMSEとは?
-
HDS-R(改定長谷川式簡易能評価スケール)とは、見当識、記憶など9項目からなり、30点満点で20点以下は認知症の疑いがあるとされる。
MMSE(ミニメンタルステートテスト)とは、検討S気、記憶、図形的能力など11項目からなり、30点満点で23点以下は認知症の疑いがあるとされる。
軽度認知症は、認知機能やコミュニケーション能力にある程度の改善が見込める場合があります。したがって、出来る可能性のある課題を提示したり、言葉のやり取りだけでコミュニケーションが成立する場合は、長い文、複雑な文をあえて使って刺激を与えることも大切です。
また、季節の行事などを通して見当識を保つようにすることも必要です。
昔の思い出話だけでなく、現在の社会の出来事や地域のニュースなど、現在と未来に繋がる働きかけも重要です。ただし、ドリルのようにノルマを課すのではなく、利用者の生活史や教育歴を考慮して、興味や関心が湧く題材を選ばなくてはいけません。
強制されていやいやながら承知する、あるいは折角問題を出してくれるのだからと利用者がこちらに気を使って課題を取り組むのは効果がありません。
他の『長谷川式スケール』記事はこちらから・・・
【①認知症6つの評価法】長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは? vol.203
2⃣中度認知症
中度認知症は、HDS-RやMMSEで、概ね11~20点の人と考えます。日付の見当識があいまいなことに加え、自分が今いる場所がわからない、施設を自分の職場と思っていたり、介護福祉職を近所の人と思っていたり、まわりの状況が把握できない状況です。
わかりやすく簡単の説明すると、その場で理解しますが、すぐに忘れてしまいます。中度認知症の人に対するコミュニケーションは、能力を改善する、能力を身に付けるといったことを目的とするのではなく、今持っている能力を維持することが重要です。
基本的なコミュニケーションは言葉のやり取りで可能です。
しかし質問に対して見当外れなことが返ってきたり、話の内容がテーマからそれて、何を話しているのかわからなくなるといった状態が良くみられます。
話しかける時は、長い文や複雑な文を避け、短く単純な言葉を使うことが大切です。例えば、
- 「今日の気分はどうですか?」
- 「今日は何をしますか?」
といった開かれた質問であるオープンクエスチョンも有効ですが、考えがまとまらず答えが返ってこな語り、現実離れして現実困難な答えが返ってきたりすることも多いものです。そこで、
- 「咳は出ますか?出ませんか?」
- 「今日は体操にしますか?書道にしますか?」
といった閉じられた質問であるクローズドクエスチョンを多く使った方がコミュニケーションを取りやすくなります。また、ジェスチャーや表情を十分活用して楽しい雰囲気を保つことも大切です。
- 「聞く」
- 「話す」
- 「読む」
- 「書く」
という言語の4つの機能のうち、どれが保たれているかは、個人差が非常に大きいので一概に言えません。しかし、文字を読む力や書く力は、ある程度保たれていることが多いものです。
本人が興味を示す内容の文章を声に出して読んでもらうといった働きかけが有効になることもあります。
漢字と仮名では、徐々に仮名しか読めなかったり書けなかったりといった状態になるので、本人の能力に合わせることが大切です。
目的はあくまでも能力の向上ではなく維持です。出来ないところを指摘するのではなく、出来ることに目を向けましょう。
3⃣重度認知症
重度認知症は、HDS-RやMMSEで、概ね10点以下の人と考えます。日付はもちろん、季節の移り変わりなど、現在の状況に関する認識がほぼ失われている状態です。自分の周りに起こっていることへの興味関心も極めて薄く、自発的な行動がない場合が多いので、こちらからの促しが欠かせません。
重度認知症の人のコミュニケーションの目的は、今残っている能力を維持すること、あるいは、低下し名を可能な限り防止することです。
言語4つの機能のうち、書く能力はほぼ失われ、漢字を読むことも出来なくなっている場合があります。
しかし、自分の名前を書いたり、仮名で書かれた単語を読んだりすることは出来る場合があります。
重度認知症では、話す能力のうち、相手の言ったことをそのまま繰り返す復唱能力は多くの人に保たれています。復唱能力を活用したコミュニケーションとして「挨拶」があります。
「おはようございます」、「こんにちは」など、正面から相手の目を見てしっかりとあいさつすることは、重度認知症の人との大切なコミュニケーションになります。
その他にも、ことわざや歌など、保たれている言葉の能力を探して活用することも大切です。
◉重度認知症の人に保たれている言葉の能力の例
【挨拶】
・おはよう
・こんにちは
・いただきます
・ごちそうさま
・おかえりなさい
・おやすみなさい
【ことわざ】
・嘘つきは泥棒の始まり
・急がば回れ
・犬も歩けば棒に当たる
【系列語】
・1,2,3,4,5,6・・・
・月火水木金土日
・1月、2月、3月、4月・・・
【歌】
・童謡
・唱歌
私たちが話しかける時の表情や雰囲気についての判断、つまり、
- 「この人は好ましい」
- 「この人は苦手」
といった感情は、認知症の重症度にかかわらず、健常な高齢者と同じくらい十分残っているという研究があります。
笑顔や声の調子、明るく柔らかい雰囲気などに気を配ることが大切です。
一方で、ジェスチャーを認識する能力は低下していますので、軽く身体に触れるボディタッチを使い、安心感や心地よさを伝えることが必要です。
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