認知症の理解

【①認知症6つの評価法】長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは? vol.203

こんにちは 介護ラボ・カナログのカナです。今日は認知症の「認知症の診断」について、今日と明日の2回にわけて書いていきます。

認知症診断・長谷川式、MMSE、GDS-5とは??

Contents

1.認知症の診断
 1⃣認知機能低下(HDS-R、MMSE)
 2⃣生活の支障
 3⃣症状の持続・継続
 4⃣精神疾患の除外(GDS-5)
 5⃣意識障害
 6⃣画像診断
2.長谷川式認知症スケール(HDSーR)

1.認知症の診断

認知症の診断にはいくつかの基準を満たすことが必要です。これを診断基準と言います。この基準は6つあり、
❶認知機能が低下していること
❷生活に支障が出ていること
❸一時的ではなく症状が持続していること
❹意識が清明で覚醒していること
❺うつ病などの精神疾患ではない
❻画像診断
ことが、概ね共通した基準となります。これから1つずつまとめていきます。

1⃣認知機能低下

認知機能が低下していることを明らかにするため、全般的に認知機能を評価する、長谷川式認知症スケール(HDS-R)と、MMSE(ミニメンタルステートテスト)が良く用いられます。

長谷川式認知症スケール・HSD-Rは30点満点で(最後の項に表を記載しています)、記憶の評価が中心であり、検者との会話だけで検査をする質問形式の簡便なものです(筆記作業を含みません)。20点以下が認知症の目安になりますが、点数だけで認知症を決めつけることは出来ません。

MMSE・ミニメンタルステートテストは、30点満点で全般的認知機能を評価し、23点以下が認知症の疑いになります。MMSEは文章を書いたり図を書き写したりと、HSD-Rよりも幅広い認知機能を評価できますが、書く作業などが加わり煩雑になります。原版が英語の為、いくつかの日本語訳が出回っていて最も出回っている版には3段階の命令を1段ずつ区切ってしまうという語訳があります。更にMMSEは学歴・職歴の影響を受けます。

HSD-RMMSEは、認知症のスクリーニングテストとして1970年代に開発されました。その当時は認知症と診断するにはもっと厳密な認知テストが必要と考えられていましたが、現在はこれらのテストはスクリーニングだけではなく、診断にも使われています。なぜなら、厳密な認知テストは認知症の人への負担が大きいからです。例えば成年後見制度の鑑定書もHSD-RやMMSEが実施してあれば、それ以上厳密な認知テストは求められません。

スクリーニングとは?

集団の中から「認知症の疑い」を選び出す簡便な検査のこと。

認知機能による簡便なスクリーニングとして、「山口キツネ・ハト模倣テスト」があります。これは影絵のキツネやハトの手の形を提示し、「よく見て同じ形を作ってください」と言い、相手が同じ形を作ったら正解というものです。キツネの方は重度の認知症でない限り作ることが出来ますが、ハトの方は、同じ形ではなく羽の向きが内側なのに外側に向いたり、その逆だったり、手の形が異なる失敗が多くみられます。軽度認知症でも6割、中等度認知症で8割が失敗します。但し、認知機能が正常でも1割位は出来ないので、これで認知症だと決めつけてはいけません。

この他、時計の文字盤を描いて11時10分の針を入れてもらう「時計描画テスト」は、出来なければ認知症が強く疑われますが、認知症でも上手に書けることがあります。

軽度認知症であるMCI(Mild Cognitive Impairment)も診断には、記憶機能に特化した検査であるWMS-R・ウェークラー記憶検査や、RBMT・リバーミード行動記憶検査の論理記憶が必要です。一般的には短い物語を聞いてもらい、直後に聞いたことを全て話してキーワードの数から点数化する即時再生と、30分後に思い出してもらう遅延再生で評価します。例えば、アルツハイマー型認知症になると、30分後にはほぼ0点になります。中等度以降は話を聞いた事すら覚えていない場合もあります。

また、社会のルールを守れるか、他人に共感できるか、我慢できるかなど、社会的認知(社会脳)の評価も必要です。このような前頭葉機能に特化した認知テストもあります。

レビー小体型認知症が疑われる場合は、視覚認知のテストが必要です。

このように疑われる認知症のタイプによって、必要な認知テストを追加します。

2⃣生活の支障

認知症の初期には生活管理能力であるIADL(手段的日常生活動作)が低下するので、生活状況をチェックします。「金銭管理」「買い物」「1人での外出」「献立考案から料理」「住居の整理整頓」などが出来ているかどうかが基準となります。

3⃣症状の持続・継続

症状の経過が極めて重要になります。「アルツハイマー型認知症」や、「前頭側頭型認知症」は症状が何カ月もかけて、”徐々にゆっくりと進行する””ことを確認する必要があります。
「レビー小体型認知症」は、症状が変動しますがやはり燃カ月も継続しています。症状が一時的(一過性)の場合は、一過性の健忘を示す「てんかん」や「内科疾患」「せん妄」などを疑います。
因みにWHO・世界保健機関では、6カ月以上の症状継続が基準となっています。

4⃣精神疾患の除外

うつ病や統合失調症は除外されます。うつはスクリーニングテストがあります。本人がチェックするGDS-15・老年期うつ病評価尺度という、15項目の評価表で、6点以上がうつの疑いです。さらに下記の簡便な5項目版もあり、2点以上がうつの疑いです。

CDS-5 の5項目

❶毎日の生活に満足していますか?

❷毎日が退屈だと思うことが多いですか?

❸外出したり何か新しいことをするよりも家に居たいと思いますか?

❹生きていても仕方がないと思う気持ちになることがありますか?

❺自分が無力だと思うことが多いですか?

2項目以上「はい」だとうつの疑い

妄想がある場合は、医師による統合失調症や妄想性精神障害との鑑別が必要になります。しまい忘れに起因する「物盗られ妄想」であれば、アルツハイマー型認知症の可能性が強いです。レビー小体型認知症も「嫉妬妄想」や「誤認妄想」が現れます。

5⃣意識障害

「ぼーっ」としている場合は、せん妄などの意識障害である可能性を除外することが必要です。但し、レビー小体型認知症や血管性認知症。正常圧水頭症では、「ぼーっ」としていることがその症状です。
急にぼーっとしてきた場合は、「慢性硬膜下血腫」や「脳梗塞」の新たな発症などの精査が必要になります。

6⃣画像診断

認知症診断で使われる脳の画像検査は、
❶形態を画像化するCTやMRI
❷機能(血流)を画像化する脳血流SPECTや、脳病変を画像化するアミロイドPET
にわけられます。

機能や病変をが画像化できる装置は高額で、核物質を扱う専門施設が必要なため、大学病院などに限られた病院にしか設置されていません。このため、一般的にはCTやMRIで脳の形態をチェックし、

  • 萎縮部位はどこか
  • 出血や梗塞、腫瘍はないか
  • 大脳白質の状態は保たれているか

といったことを評価します。

MRI画像はコンピューター処理によりアルツハイマー型認知症に高頻度にみられる海馬領域の萎縮度を数値化するVSRADという解析も使われています。CTやMRIの形態画像だけから認知症を診断することは出来ません。これらの検査は脳梗塞や脳腫瘍などを除外して認知症であることを確信するための補助検査です。

機能画像検査である脳血流SPECTは、機能が低下したために脳血流が低下している部位を画像化する検査です。

  • 頭頂葉の血流が低下する⇒アルツハイマー型認知症
  • 後頭葉の血流が低下する⇒レビー小体型認知症
  • 前頭葉や側頭葉の血流が低下する⇒前頭側頭型認知症

など、認知症の原因疾患により血流低下部位が異なるので、脳血流SPECTで特徴的な所見から正確な認知症の原因疾患の診断を下すことができます。若年性認知症など、きちんとした鑑別診断が必要な場合には大切な検査となります。

アミロイドPETはまだ保健適応にはなっていませんが、アルツハイマー型認知症の病変である脳のβたんぱくの沈着部位を発症の10年以上前から検出することができます。タウたんぱくの異常蓄積を画像化するタウPETの開発も進んでいます。これらの開発により、アルツハイマー型認知症のの脳病変を可視化出来るようになってきています。

2.長谷川式認知症スケール(HDSーR)とは?

長谷川式認知症スケールの質問内容

1.お歳はいくつですか?(2年までの誤差は正解)
2.今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
3.私たちが今いるところはどこですか?
  自発的に出れば2点
  5秒おいて、家ですか?病院ですか?施設ですか?
  このなかから正しい正解をすれば1点
4.これから言う3つの言葉を言ってみて下さい。後でまた聞くのでよく覚えていてください。
5.100から7を順番に引いてください。
  (100-7は?それからまた7を引くと?と質問する。最初の答えが不正解の場合は打ち切る)。
6.私がこれから言う数字を逆から言ってみて下さい。
  (3桁逆唱に失敗したら打ち切る)
7.先程覚えてもらった言葉をもう1度言ってみて下さい(問4)。
  (自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合はヒントを与え正解であれば1点)。
8.これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言って下さい。
  (時計や鍵、携帯、ペン、硬貨など相互に無関係なもの)。
9.知っている野菜の名前を出来るだけ多く言って下さい。

30点満点中20点以下は認知症の疑いあり。

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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
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