認知症の理解

【③認知症】主要な11個のBPSDと個別の背景因子について vol.202

2021-01-01

こんにちは 介護ラボ・カナログのカナです。認知症の「BPSD」について、前々回前回・今回の3回にわけて書いていきます。

暴言・徘徊・不穏・うつ・妄想・幻視・異食…とは?

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11個の主要なBPSD

多様な要因によりBPSDが生じやすい基盤がつくられ、不満や不安が鬱積しているところに、介護する者からのきつい言動などの誘因・きっかけが加わると顕著なBPSDとなります

火山に例えると、様々に要因が積み重なってマグマだまりが出来ている所に、誘因・きっかけが加わって火山が爆発するというイメージです。

アルツハイマー型認知症の易怒性では、スイッチ(誘因・きっかけ)があることが多いですが、行動障害型前頭側頭葉型認知症ではスイッチが入らなくてもいきなり怒り出すことがあります。

BPSDにおいて不満や不安などの現れを「予兆」と気付けば、BPSDが生じる前に現れるイライラなど認知症の人が満足していない徴候を見つけだし、その予兆を早めにキャッチすることでBPSDを回避できるというエビデンスを示す研究が始まっています。

❶暴言・暴食・易怒性

多くの認知症の場合「怒る原因」が存在します。認知症だから怒るのではなく、介護者や周囲の人の行動が怒りスイッチをオンにしています。。

それは、前頭前野などの脳病変によって怒りっぽくなるスイッチが入りやすい状態になっているためです

従って、対策はスイッチをオンにしないことです。介護者が失敗や困りごとに目をつぶっておおらかに接することが対処方法となります。介護者が一緒になって怒って対応すれば、本人の怒りをさらに燃え上がらせてしまいます。

普段から嫌なことを強制される状態があって不満が蓄積されていると、「暴言」「暴力」に結びつうことがあります。例えば…

「入浴したくない時間に無理やり入浴させられた」

「やりたくないレクリエーションにしぶしぶ参加した」

などの不同意、不満の蓄積が、暴言・暴力や帰宅願望、介護拒否などに結びつきます。

  • 『ケアは本人の同意を得て行う⇒不同意・不満を生じさせない』

が大原則で、これによってBPSDを予防できます。

家族がケアをしている場合、「どんな時に怒りますか?」と質問し、「気に入らないことを言うとすぐに怒ります」と答えれば、家族はスイッチは分かっているけれど、注意や反論を抑えられない状況なので、スイッチを入れない家族間の介護方法の支援(教育)が有効です。

怒りたい気持ちを抑えると、ケアする介護者のストレスが溜まるので、同時に「レスパイトケア」が大切になります。

レスパイトケアとは?

レスパイトとは「小休止」「息抜き」「休息」を意味し、介護者が一時的に介護から解放され、リフレッシュや休息をとる「介護者のため」のケアを指す言葉です。

施設の場合では、環境整備が有効です。他の利用者が食べこぼしをするのを見て、認知症の人が大声で注意する例では、本人の正義感があだになっています。その場合は、席を話したり、壁に向かって落ち着いた環境で食事をするなどの対応で、怒りスイッチを入れないで済むことがあります。

前頭側頭型認知症では、理由が不明でスイッチが入ることがあります。介護者は「自分の介護が悪いから怒るのだ」と自分を責める必要はありません。手に余る場合は薬剤の併用が必要となります。

❷徘徊・無断外出

「徘徊」や「無断外出」は、介護者が疲弊する症状なので、予防することが大切となります。

例えば、夕方になると施設から出ようとするAさんは、「幼稚園に孫を迎えに行く」と言います。それは20年前に行っていたことなので、見当識障害が背景にあります。

そこで「現在Aさんは88歳で、お孫さんは28歳です。迎えに行く必要はありませんよ」という説得は有効でしょうか?Aさんの言動からは中等度以降のアルツハイマー型認知症が疑われるので、説得はおそらく無効です。そして本人の考えを全否定するような対応は、不満の蓄積から更なるBPSDへと繋がる可能性があります。

上記のような場合は、Aさんが落ち着くような対応が必要となります。例えば「一緒に出掛ける準備をするのでお茶を飲んで待っていてください」と持ち掛けて昔話をするなど・・・が有効です。

基本的には、本人に日課や役割があり、話し相手がいて、安心して暮らせるような環境整備が、このような見当識障害に基づく外出の訴えを減らすのに有効となります。

徘徊という専門用語に対して、当事者からは「自分たちは目的があって行動しているので、徘徊と言わないで欲しい」という要望があります。介護者側から見れば「うろうろしている」と見えますが、本人は「ここがどこか確認している」「探し物をしている」「孫を迎えに行く」など、行動意図を持っています(行動意図が明確でない場合もあります)。

アルツハイマー型認知症では、場所の見当識障害や、空間認知障害があるので近所でも道に迷います。無断外出すると、どんどん遠方に行ってしまう傾向があり、行方不明になりやすくなります。「着衣に名前や電話番号を付ける」「GPS装置を使う」、リスクが場合は警察に登録する(静脈認証を進めている地域もあります)などの対策を講じておくことも必要となってきます。

行動障害型前頭側頭型認知症では、同じ経路で戻ってくる傾向があり、これは「周回」といわれます(常同行動)・外出しても戻ってこれる点は安心ですが、「隣家の果物をに勝手に捥いで持ってくる」「自転車を無断で持ってくる」など、介護者が困る反社会的行動も多くあります。また、出たいという衝動・脱抑制を抑えることが難しいので、外出を制止すると暴力に結びついて危険です。施設では外出よりももっと楽しいことに注意を向けるようにして、それを常同化する取り組みが有効です。

アルツハイマー型認知症

❸不穏・焦燥

イライラしながら質問を繰り返したり、うろつきまわるような行動がみられますアルツハイマー型認知症レビー小体型認知症で、記憶障害や見当識障害、幻視などに起因する不安を背景に生じます。本人が安心して過ごせるような介護・ケア(役割や居場所)が求められます。

レビー小体型・血管性認知症

他の『レビー小体型・血管性認知症』記事はこちらから・・・
認知症の人の心理【不安・喪失感を抱く理由】vol.91

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❹不安

  • アルツハイマー型認知症でエピソード記憶(過去に行った旅行など、自分の行動記憶)が繋がらず、時間軸が消えると、なぜここにいるのか、さっきまで何をしていたかもわからなくなり不安になります。エピソード記憶(経験)が徐々に失われていくことは、「自分自身が崩壊していく」漠然とした不安感をもたらします。
  • レビー小体型認知症では、「幻視」「幻覚」に基づく妄想・知らない人が家の中にいるなどが起こり、不安がもたらしていることがあります。

❺うつ

悲観的な思考が「うつ」の特徴となります。例えば失敗をしたとき、
①失敗をしたのは自分の能力が低いからだ
②誰も助けてくれない
③もうこの先は希望もない
と、悪い方向に考えてしまい、さらにこの考えを反芻し(頭からラ離れず何度も考えてしまう)ことで、更に「うつ」が悪化してしまいます。


認知症になると失敗体験が増えるので、アルツハイマー型認知症の初期には「うつ」になりやすい傾向があります。しかし症状が進行すると病識が低下し(失敗の自覚が減る)、うつになりにくい傾向となります。

但し、家族が失敗を指摘するほど「うつ」になりやすくなります。
レビー小体型認知症では、「うつ」がしばしば合併し、初発症状のことも多いです。これは脳病変自体が「うつ」を引き起こしているからだと考えられます(中核症状)。また、血管性認知症の場合も、前頭葉白質病変などが「うつ」に関連すると言われています。

❻拒否

「拒否」が見られたら、本人はどのように感じ・どのように考えて拒否しなのかを冷静に捉える必要があります。

例えば「おむつ交換」のようなケアも、認知症の人はその必要性を理解出来なかったり、「尊厳を侵された」や「恥ずかしい」と感じているかもしれません。

施設での入浴も、

  1. 入りたくない時間に入浴させられる
  2. 身ぐるみはがされて服を盗まれる
  3. 入浴中に部屋に泥棒が入る
  4. 人前で裸になるのが恥ずかしい
  5. 体を洗ってもらうのが屈辱だ

など、様々な拒否の要因があるので、その人の立場に立って対応することが大切です。

例えば、施設の都合で本人の望まない時間に入浴してもらうのであれば、「〇さんが今入浴してもらえるととても助かります。私を助けると思って今から入浴してもらえませんか?お風呂上りには冷たい飲み物を用意しますね」と言った声掛けを行い、本人がしょうがないとは思いながらも、納得出来るような対応を心掛けることが必要です。

❼アパシー

意識が無い状態、自発性が欠けた状態を「アパシー」と言います。情熱・パッションが欠けた状態がアパシーの語源です。

声掛けや刺激がないと、1日中テレビ番をするなど、自発的な行動がみられない状態です。悲観的なうつとは異なり、アパシーは本人があまり困っていません。

介護者からすると、危険行動や無断外出などがないので手が掛かりませんが、放置すると「廃用症候群」が進み、認知機能低下も加速します。
※低活動性せん妄は、アパシーと似た症状ですが、せん妄の治療が必要です。

❽妄想

アルツハイマー型認知症では、健忘に起因する「物盗られ妄想」が主体です。自分でしまい忘れたものを「盗られた」と言い出したりします。妄想は、訂正しようと説得を試みても成功しないからこを「妄想」と言います。よって、妄想を全否定するのではな無く、その人が妄想に至った過程を推測して対応方法を見いだしていくことが必要です。

背景には「不安」「喪失感」が潜んでいることが多いので、普段から本人が安心する環境調整を行い、日課や役割があり、褒められる設定が有効となります。

レビー小体型認知症では誤認妄想が見られます。誰かが2階に居るといった「幻の同居人」や、配偶者などの身近な人を別人という「カプグラ症候群」、テレビの場面と現実の区別がつかなくなってしまう「誤認」などがあります。

誤認妄想とは?

レビー小体型認知症では、幻視が妄想に結びつく場合があります。例えば幻視で妻の横に男性が見えたり、幻の同居人がいたり、妻が浮気をしているという嫉妬妄想に結びついたりします。

❾幻視 

レビー小体型認知症の中核的臨床症状では、何もない所に人物や動物が見えることがあります。実際には、何か物があって見間違える「錯視」が大部分です。

幻視はせん妄で現れることがありますがアルツハイマー型認知症ではまれです。

例えば、椅子の背もたれに掛かっている上着を見て「そこに男の人が座っている」などということがあります。幻視は環境の影響を受けるので、

  • 照明を明るくする
  • 部屋を整理整頓して影を減らす
  • カーテンや壁紙などを模様の無いものにする

などの環境整備が有効になります。

❿異食

本来食べられないものを食べてしまうのが「異食」です。原因は2つに分けられます。

  • 1つ目として、中等度以降のアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、視覚認知障害が見間違いにより食べられない物を食べられると誤認して食べてしまうことがあります。これは「失認」なので、BPSDであると同時に中核症状でもあります。
  • 2つ目は「冷蔵庫から肉を出してそのまま食べてしまう」等です。肉という食物であることは認識していますが、加熱が必要だということを忘れてしまいます。

アルツハイマー型認知症が重度以降に進行すると、食べられるかどうかの判断なしに手当たり次第に口に持って行く「口唇傾向」がみられるようになります。これは1歳児が示す行為と同じで、口唇傾向はBPSDというよりは認知障害そのもので、中核症状となります。

⓫異所排尿

アルツハイマー型認知症の人が、トイレを見つけられず廊下のすみに排尿してしまうことがあります。

この「トイレを見つけられない」という行為を側面から見れば見当識障害という中核症状ですが、「普段は排尿しないところに排尿した異常行動」という側面から見ればBPSDです。


そして排尿というADL(日常生活動作)が上手くいかないという面から見れば生活障害です。1つの行動が、見方を変えれば中核症状であり、BPSDであり、生活障害であるということがあります。

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kana

はじめまして(^-^)/
介護ラボのカナです。
ブロガー歴2年半(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士として就業中。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」「介護福祉士」 ◉現在福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
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