こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の中から『ユニバーサルデザインの概念』について、5回に分けて書いていきます。今回は1回目です!
ユニバーサルデザインの目的
Contents
1.ユニバーサルデザインの沿革と概念
1⃣ユニバーサルデザインの誕生
2⃣障害者の人権
3⃣ユニバーサルデザインの目的
1.ユニバーサルデザインの沿革と概念
1961年(昭和36年)に世界で最初のバリアフリーデザイン基準「NSI A117.1」が、米国基準協会で策定されました。
この基準は、対象範囲などに一定の限界はありましたが、1960年代後半から各国が制定を考え始めたバリアフリー基準に大きな影響を与えてきました。
1⃣ユニバーサルデザインの誕生
アメリカでバリアフリーデザインの問題が表面化し始めたのは、1970年代後半からで、バリアフリーデザイン(accessibility&usability)が、障害者に特化しているとの批判が建築業界から起きました。
特に、1973年(昭和48年)に、リハビリテーション法504条(障害を理由とした差別禁止事項)が改正され、連邦政府が関わる事業で障害者差別が禁止され出したことからになります。
2⃣障害者の人権
1977年(昭和52年)、504条が施行されると、障害者の権利意識が高まり、同時に障害者問題への対処の仕方に変化が見え始めました。
この時期は、ヨーロッパの福祉先進国でも新たな動きが見られました。
スウェーデンでは、1969年(昭和44年)に建築法が改正され、就労の場でのバリアフリー環境の構築が始まりました。
1975年(昭和50年)には、世界で初めて住宅分野でのバリアフリーデザイン基準が建築法に導入され、1960年代後半からのノーマライゼーション、インテグレーションの政策を具現化する法制度の進展がみられました。
アメリカでは1970年代後半、障害者の自立生活を獲得するために「障害者の障害者による障害者のため」のサポートセンターである『自立生活センター』(アメリカ初の自立生活センターは1972年(昭和47年)にバークレー市内で設立された)が登場し、市民社会における障害のある人自身による人権行動が本格的にスタートしました。
1981年(昭和56年)には、障害のある人の「安全参加と平等」を掲げた国際障害者年が日本、欧米をはじめ世界各地で大きな社会的関心事となりました。
アメリカで、障害者のためのデザインであるバリアフリー(アクセシブル)が批判され、ユニバーサルデザインが登場した背景は、以下の通りになります。
- 1980年代後半、建築業者や建築主は、州法などで規定される一定の戸数(州により異なるが概ね全戸数の5%)を、連邦法や州による各種ガイドラインの規定に基づいてバリアフリー住戸としました。
しかし、あまりにも障害者用で特別なデザインの住宅であったために、賃貸住宅では借り手が無く経営上も問題になり、同居の家族にとっても使いづらく、病院的なデザインへの反発が潜在化し始めました。
この時期、アメリカではバリアフリー・ガイドライン法の見直し時期に当たっていて、米国基準協会やロナルド・メイス氏らは、住宅のガイドラインの変更に取り組むことになりました。
その結果生まれたのが「アダプタブル・ハウジング」(1988年(昭和63年))です。
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3⃣ユニバーサルデザインの目的
ロナルド・メイス氏は、1985年(昭和60年)アメリカのデザイン雑誌に「ユニバーサルデザイン」の目的を、「ユニバーサルデザインとは追加的なコストを殆ど掛けずして、建築や施設の設計が障害の有無に関わらず、全ての人々にとって魅力的かつ機能的となるようなデザインのあり方である」と述べている。
ユニバーサルデザインは、移動制約者を対象とした製品及び設計における効果で『特別』なラベルを排除し、同時に、現在普及しているアクセシブルデザインにおける無機質な外観を払拭する、という考え方に立脚しています。
しかし、実際には、建築物や建築に付帯する設備で、全ての人が利用しやすいものをつくり出すことは容易ではありません。
そこで、ユニバーサルデザインが誤解されないためには、可能な限り全ての人が利用出来ることを目標に置きながらも、つくり出すその環境や、製品を利用できる人々と、利用できない人々がいることを、設計者も利用者もしっかりと理解しておくことが必要になります。
つまり、1歩ずつ全ての人に近づくユニバーサルデザインのプロセスがとても重要になるのです。
ロナルド・メイス氏らが提案した「アダプタブル・ハウジング」とは、最初から「完全」なアクセシブルデザインにするのではなく、段差の解消や、移動スペースや方向転換のスペースの確保など、基本的なアクセシブル条件のみを確保し、利用者や入居者に応じて特別なコスト負担がなく安易に空間変更や設備変更が可能なデザインのことです。
1988年アメリカの連邦法である「公正住宅法」が改正され、アダプタブル・ハウジングの概念が取り入れられました。
1990年(平成2年)には、障害者のある人のあらゆる差別を禁止する法律、「障害を持つアメリカ人法(ADA)」が成立し、障害者の人権が連邦法「公民権法」として、正式に認められ、ユニバーサルデザインを実現するためのベースとなる、建築、交通機関、公園等のデザイン・ガイドラインが「ADA」のもとに策定されました。
ロナルド・メイス氏らが提案したユニバーサルデザインは、障害のある人の人権と平等を根底にしつつ、市場活動との融合性をも求めたアクセシブル・デザインのゴールといえます。
2006年(平成18年)に、国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」は、ADAの考え方の世界的広がりも大きな影響を与えたと考えられます。
障害者権利条約には、ユニバーサルデザインの考え方を、「調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる「製品」「環境」「計画」及び「サービスの設計」をいう、とうたわれています。
「ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除すべきではない。」とされています。※条約第2条、外務省ホームページより
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