こんにちは
介護ラボ・kanalogのカナです。
前回『vol.29で【視覚障害(先天性・中途)の理解】観察の視点4つ』を書きましたが、今回はその続き『支援』について考えます。
視覚障害(先天性・中途)の4つの支援について
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住み慣れた地域で、障害のある人も、ない人も、区別なく生活していくことが本来の姿であるという『ノーマライゼーション』の考え方が定着し、多くの視覚障害のある人は地域で生活しています。
介護福祉職は、視覚障害にある人の自立支援にあたり、本人のニーズを把握し、満足が得られるサービスを提供することが課題となります。
移動(歩行)の支援
中途視覚障害のある人が1人で移動(歩行)する場合は、どうしても危険が伴いますが、単独歩行できることは、その人のQOL(生活の質)において、とても大切な要素です。
例えば、通勤や通学が可能になれば、就労・就学の機会を得られます。
①移動(歩行)の支援
利用者に「お待たせしました。それでは出かけましょうか」と声を掛けます。視覚障害のある人が白杖を使っている場合は、白杖と反対側の手の甲で触れて合図を出します。
介護者の腕を伝いながら肘の少し上を握ってもらいます。なかには手を取って肘の少し上まで誘導しなければ確実に握ることができない人もいます。また、介護者の肘に腕を絡める方法や肩に手をかける方法などを希望する人もいます。
外出に慣れていない視覚障害のある人は、不安や緊張から腕を強く握る傾向があります。「歩く速度はこのくらいでいいですか?」などと声をかけることで、不安や緊張は軽減されます。
歩く速度は、視覚障害のある人のペースに合わせ、常に2人分の幅を意識して歩きます。傾斜、曲がり角、段差など道路の状況が変わるときは、その直前で「路面が少し傾斜しています」と説明することが必要です。
②階段の上り方
❶階段の入り口に正面から向かいます。
❷階段の直前で止まり、「階段です。ここから上ります」と説明します。
❸次に、「横並びになりましょう」と声をかけ、白杖及びつま先で階段の側面を確認してもらいます(確認したかどうかを見届けます。必要に応じて手すりの利用も促します)。
❹介護者は「先に1段上ります」と説明し、階段の1段目に上がります。
❺安全のために重心を前方にかけながら、2段目のステップに足をかけてリズムよく上っていきます。
❻介護者は最上段の着地は、出来るだけ大きく歩幅を取り、両足をそろえて止まります。
❼上りきったら「階段は終わりです」と伝えます。
③階段の下り方
❶階段の下り口に正面から向かいます。
❷階段の直前で止まり、「階段です。これから下ります」と説明します。
❸次に、「横並びになりましょう」と声をかけ、白杖及びつま先で階段の縁を確認しておらいます(確認したかどうかを見届けます。必要に応じて手すりの利用も促します)。
❹介護者は、「先に1段下ります」と説明し、階段を1段下がります。
❺安全のために重心を後方にかけながら、2段目のステップに足をかけてリズムよく下りていきます。
❻介護者は最下段の着地は、出来るだけ大きく歩幅を取り両足をそろえて止まります。
❼下りきったら、「階段は終わりです」と伝えます。
階段の昇降は高齢者や体力の低下している人には負担が大きいものです。ゆっくり上り下りする事や、必要に応じて負担がないようにエレベーターを利用する判断が必要となります。
また階段に手すりがある場合は、視覚障害のある人が安心できるので、出来るだけ利用することを促します。
コミュニケーションの支援
コミュニケーション(読み書き)の支援では、音声パソコンの利用があります。介護福祉職は、視覚障害のある人から、「音声パソコンについて教えて欲しい」と相談を受けることがあります。実際に、音声パソコンの訓練の見学と相談を経て、施設に入所し、訓練を受けることになった例もあります。
●音声パソコン
市販のパソコンに音声によるガイド機能のある視覚障害のある人向けのソフト。視覚障害のある人は、マウスによる捜査が困難なので、音声化ソフトが画面を読み上げる声により、キーボードでパソコンを操作する
視覚障害のある人向けに、「スクリーンリーダー」という音声化ソフトが販売されています。このソフトは、キーボードをタッチすると、音声でキーに振られた文字や数字、記号等を読み上げ、音訓(例えば、新聞のしん あたらしい 新聞のぶん きく しんぶん)で確認することができます。入力すると漢字カナ交じりの文章を書くことができます。また、書かれた文章をアナウンサーのようにスムーズに読み上げることが可能です。弱視の人も簡単なキー操作で表示文字を拡大することができます。
その他、視覚障害のある人が簡単な操作で、利用できるソフトが多数あります。例えば、ワープロソフト、メールソフト、インターネットソフト、住所録ソフト、新聞記事を読むことができるソフト等が販売されています。
また無償で音声パソコン用に活用できるソフト類も多数あります。こうした各種ソフト類は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)で、市町村地域生活支援事業のなかの日常生活用具給付事業の対象となるため、市町村への問い合わせを提案してみましょう。
なお、点字に関する情報提供は、中途視覚障害のある人の場合は、音声パソコン習得後に、点字を学ぶことの意義などを話す方が受け入れやすいものと思われます。
●日常生活用具給付事業
障害者が日常生活を自立した状態で円滑に過ごすために必要っ機器の購入を、公費で助成する制度。各市町村の決定で支給するもの
日常生活(身支度、家事)の支援
中途視覚障害のある人の場合は、見えていた期間や社会生活の経験があることから、身支度や家事などにはそれほど大きな課題はありません。
先天性の視覚障害のある人の場合は、日常生活の基本的な動作を習得するには時間がかかります。
例えば、かつて盲学校(現・特別支援学校)で全盲の生徒の箸の持ち方を調べたところ、正しい持ち方が出来ている生徒は殆どいませんでした。もちろん箸を使って挟んで物を食べられるのであれば、それでよいのではないかという議論の余地はあります。また箸の持ち方は、生活習慣なので正しい持ち方を確認してもらっても直すことは困難です。根気と継続的な訓練・指導が必要です。
日常生活の支援における留意点としては、介護福祉職は、ちょっとしたアドバイスをしながら視覚障害のある人に選択してもらうとよいでしょう。日常生活に必要な用具等の情報も把握しておきます。なお、専門的な技術を身につけたいという希望があれば、施設等に相談します。
❶買い物の支援
地域で生活する為には近隣との関係づくりが大切です。まずは挨拶から始めます。また、生活する為には、普段買い物をするエリアにどんなお店があるのかを知る必要があります。
買い物の支援の留意点として、介護福祉職は、視覚障害のある人を商店のスタッフに紹介し、スムーズに買い物ができるように支援します。今後、視覚障害のある人が1人で買い物に行ったときに声を掛けてもらったり、必要な商品を揃えてもらったりといった関りに繋がります。
またスーパーでは、視覚障害のある人が1人で行った場合、どこにどのような商品が陳列されているのかわかりません。サービスカウンターを確認しておき、購入したい商品があれば、事情を説明し、買い物の援助を依頼することで、効率的な買い物ができます。
❷調理の支援
調理は視覚障害がある人が自ら行います。調理の支援は必要に応じて、居宅介護(ホームヘルプサービス)を活用します。手のかかる調理はホームヘルパーに依頼し、調理したものは小分けにして冷凍保存するなどしておくことで、毎食の調理時間を短縮することも出来ます。
また視覚障害のある人の自宅に出向いた際など、何気ない会話から調理等に関する情報の提供や地域の視覚障害のある人の調理グループ等の紹介をすることも大切な支援の1つです。料理のレパートリーを増やすためにも情報交換は重要です。
視覚障害のある人の中には、火事の心配をしている人が多く、火を扱うことに躊躇いを感じている人もいます。最近ではオール電化住宅も普及し、電化製品も進化してきています。電磁料理器(IT調理器)は、やけどの心配はあるものの火事の危険が少ないことがメリットです。日常生活用具給付等事業の参考例としても挙げられており、市町村により異なりますが、比較的低価格で購入することができます。電磁調理器を活用することで、好物のてんぷらを揚げることができたと喜んでいる人もいます。
電気フライヤーは、便利なバスケット付きで、簡単に揚げ物が出来て油切りもできます。バスケットは蓋を閉じたまま下げられるリフト機能付きで、食材を入れる際の油はねもありません。手入れや油の処理も楽にできます。こうした機器等を介護福祉職が視覚障害のある人と一緒に使ってみることは、本人が実体験を通して自信を得ることにも繋がります。
いずれにしても、視覚障害のある人の生活支援のための環境整備には、視覚障害のある人の希望や状況を踏まえ、必要な情報を提供することが大切です。介護福祉職は、実際に機器を使ってみる体験を通じて、工夫すれば視覚障害のある人にも活用できる機器であることを学ぶことも出来、単に言葉で伝えるだけでなく、体験により実際に使えることを知る喜びにもなります。
周囲の人が注意すべきこともあります。例えば、視覚障害のある人が調理をするにあたって、調理に必要な道具や調味料は、どこに何があるのかが頭の中に整理されています。したがって、調理に必要な道具や調味料などを使ったら同じ場所に戻すことが大切です。
その他、転倒やけがの予防のためには、床や畳の上には物を置かない事、顔や頭の位置には物がはみ出さないように環境を整えることも必要です。
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❸食事の支援
視覚障害のある人が食事をする際に、テーブルの上の料理の位置関係が分かりにくいことがあります。そのような時に役立つ説明の方法に、クロックポジションがあります。
●クロックポジション
自分と物との位置関係を把握するために、視覚障害のある人が簡単に記憶できるように配慮したもので、時計の文字盤の位置を用いて説明するもの
テーブルに配置されている料理の位置関係を時計の文字盤に見立てて、どのように置かれているのか説明します。
手前側を「6時」、向かい側を「12時」として、視覚障害のある人に食器を軽く触れてもらいながら『5時の位置に豆腐とわかめの味噌汁、7時の位置にご飯、3時の位置に卵焼き、9時の位置に温かいお茶があります』などと説明します。
就労に関する支援
中途視覚障害のある人の場合は、それまでの仕事が困難になることが予想されます。ただ、それまでの仕事を簡単に辞めるのではなく、藁をもつかむ思いで悩み苦しんでいる視覚障害のあるひとの支援として、会社の人事担当者ともよく話し合いをしながら、その人のできることを会社にも理解してもらい、職業訓練の期間を確保してもらうことも必要です。
- あん摩マッサージ指圧師、
- はり師
- きゅう師
の職業に結び付けた技能訓練を受ける希望があれば、生活訓練を受けた後に3年間の職業訓練コースで資格を取得することになります。
また、資格取得後に健康支援室のような部門での継続雇用を交渉する事なども考えられます。
こうしたことは、専門の機関や福祉施設の担当者等のネットワーク力を活用して話し合いを継続していくことが大切です。また、視覚障害のある人の雇用問題に関するグループ等の協力を得ることも大切です。
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