こんにちは 介護ラボ・kanalogのカナです。今回は「知的障害」について。前回「【①知的障害】知的障害の4段階と障害の原因(4つの要因) vol.97」と2回に分けて書いていきます。
生活体験の大切さとは?
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障害の特性に応じた支援
(1)生活体験の大切さ
まず「自分らしさ」について。自分らしさとは、さまざまな物事にチャレンジしてこそわかってくるものです。それは、障害のあるなしにかかわらず全ての人に共通するものです。
例えば、「自分に似合う洋服のスタイルがわかるようになるまでに買ってはみたもののあまり着なかった」という経験や、「嫌いだと思っていたけど何年か経って試してみたら好きになった食べ物がある」など・・・それが普通であたりまえの生活です。
重度の知的障害のある人が、福祉事業所での調理に才能を発揮したり、特例子会社で事務作業をコツコツとこなしたりといったように「社会人」や「職業人」としての顔を持って、生き生きと生活をしたりする場合もあります。
支援者は「知的障害」のみに着目して「知的障害を補うことだけ」を考えた支援を計画してしまいがちです。
出来ないことを補うことも大切ですが、知的障害のある人が「自分で決めたい」「試したい」と思えるような、意欲や主体性を育てることにも着目することが大切になります。
(2)変化することを忘れない
人の状態は変化するものです。知的障害の状態のみに着目すると「その人らしさ」を見失ってしまう場合があります。
人は様々な面を持っています。思いやりや人生を楽しむ力や、芸術やスポーツの才能、粘り強さや飽きっぽさ、ユーモアのセンスなど、「知能」以外の側面も沢山あり、また何が得意で何が不得意かも人によって異なります。
そのため知的障害の特徴を知っただけでは、その人を理解したことにはなりません。
- 障害は、その人の一部ではありますが、全てではないのです
知的障害があるからといって、人間としての全ての側面に障害があるわけではありません。障害のある人の生活や状態は、変化するものだということを心にとめて支援することが大切です。
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ライフステージに応じたかかわり方
知的障害の発達状態を踏まえた支援を行うことと同時に、ライフステージ(実際の年齢に伴う人生における段階)に応じた生活体験が出来るよう支援することも重要となります。
それぞれの時期に重要になる
- 「親」と「社会資源」
との関係をまとめていきます。
1⃣乳幼児期
乳幼児期は、「子どもと親が一体化」⇒「子どもの自我、少しずつ距離」の時期に当たります。
子どもに関する様々な物事を親が決めている時期です。そのため親や周囲の人が適切な環境を用意する必要があります。そして、生活を重ねる中で子どもの自我が芽生えてきます。
大人の指示をきかなくなったりしますが、自我の発達は子どもの成長にとってとても大切な過程の1つなので、適切にかかわっていくことが大切です。
❶「乳幼児期」の知的障害のある人にとって大切なこと
- 家の中が安心・安全な環境になる
- 身近な大人との間に絆が出来る
- 見て理解することは得意だが、聞いて理解するのは苦手など、生活を通して心身機能の使い方を覚える
- 五感を通して外界の情報を取り入れ、好き・嫌い、心地よい・悪い等の情報発信をする
- 様々な生活体験を積み、生活スキルを獲得する
❷「乳幼児期」の家族や支援者にとって必要なこと
乳幼児期の障害のある子どもへのかかわりは試行錯誤の連続です。
そのため、
- 「本人の発達段階と年齢相応の体験の”ちょうどよいところ”はどこか」
- 「本人の発達段階と年齢相応の体験の”ちょうどよいところ”はどこか」
- 「本人の能力を物や人でどう補えるか(環境整備)」
を常に考えていくことが必要になります。
例えば、
- スプーンを使って自分で食事が出来るようになるのか、
- それとも今のまま全介助なのか、
- 一部なら出来るようになるのか、
- スプーンの柄の形を工夫すれば出来るのか、
といったことを日々考えていくということです。
期待し過ぎると思い通りにいかなかったときの落胆が大きくなりますし、諦めてしまうと子どもの成長が妨げられてしまいます。
「諦めず、期待し過ぎず」
子どもの状態をよく見て支援を行っていくことが大切です。
2⃣児童期
児童期は、「子どもの自我、少しずつ距離」⇒「身体的・精神的な分離」の時期に当たります。
子ども自身が豊かな生活体験を積む中で培った自我を大切にしながら、その人らしさを作っていく時期でもあります。
それを尊重することで、親子の身体的・精神的分離が進みます。
❶「児童期」の知的障害のある人にとって大切なこと
- 能力に応じて学習する
- 地域での人間関係を広げる
- 性を含めた自分の身体の変化や状態を把握し、訴えるスキルを習得する
- 放課後や余暇の過ごし方を学ぶ
- 自身の心身機能の状態を理解する(障害認識の初歩)
- サービスを利用したり選択したりする練習をする(ガイドヘルプの利用、宿泊体験など)
❷「児童期」の家族や支援者にとって必要なこと
「子どもは親の分身」という言葉がありますが、分身ではないということを親が学んでいく重要な時期が児童期です。
子どもの自我は将来の自立(支援を受けながらの自立を含む)のためにとても重要です。自我の芽を摘み取らないようにかかわっていくことが大切になります。
また児童期には、他の人と比較されることによって自信を無くしてしまったり、周囲から要求されることに応えられなかったという体験をすることでダメな自分と思ってしまう場合があります(自己否定)。
- 「あなたはあなたであっていい」
- 「あなたには価値がある」
といったメッセージを認知力に応じた方法を用いて、親や支援者が伝え続けていき自己肯定感を持てるよう育てていくことがとても重要です。
支援を利用することも含め、地域の中で様々な人とのかかわりを通して、「子どもの顔」以外の「別の顔」(例えば、買い物の時にお客様の顔をする、友達の前で先輩・後輩の顔をする、近所の子供の前では優しいお姉さん・お兄さんの顔をするなど)をつくっていくことが、青年期・壮年期の豊かな生活に繋がります。
3⃣青年期・壮年期
青年期・壮年期は、「身体的・精神的な分離」⇒「別の人生・人格」の時期にあたります。
児童期に身につけ始めた「子どもの顔」以外の顔をさらに豊かにしていく時期です。
それが「大人の顔になる」ということです。
支援の輪を持ちつつ、地域の中で消費者の顔や、職業人としての顔、恋人や配偶者としての顔、更には子どもを育てる親の顔を持つことなど、様々な選択肢があります。
❶「青年期・壮年期」の知的障害のある人にとって大切なこと
- 大人としてのアイデンティティを構築する
- 親離れするための生活スキルを習得し、サービスを利用する(ガイドヘルプ、ホームヘルプ、グループホーム体験など)
- 就労や余暇、政治等を通した社会参加スキルを習得する
- 生涯学習の機会を得る
- 障害の自己認識をより深める
❷「青年期・壮年期」の家族や支援者にとって必要なこと
知的障害がある人たちにとっても、自分らしい暮らしが出来ることがとても大切です。知的障害のある人と家族の好みは異なりますし、大人になったら家族の決定よりも知的障害のある人が決定したことが優先されなければなりません。
しかし、親や支援者が知的障害のある人に対して常に幼児と接するような感じで対応していると、「ずっとこのまま」の関係となり、知的障害のある人は無力感を味わい、自分の気持ちや考えや表現していることには意味がないのだと感じてしまうことがあります。
その結果、投げやりになったり、うつになったりしてしまう場合もあります。
知的障害のある人の意志をどのようにして汲み取り、日常生活や社会生活に反映させていくかが重要な支援となります。
4⃣高齢期
高齢期は、青年期・壮年期よりも更に沢山の支援を受けながら生活することが多くなります。たとえ支援の量が増えても「1人の人」として、人生の課題に取り組むこと、尊厳を大切にしながら支援することが大切です。
❶「高齢期」の知的障害のある人にとって大切なこと
- 日常生活や社会生活において、出来ていたことが出来なくなっていくことや、心身機能が衰えていくことに対応する
- 新たにあらわれた病気に対応する
- 心身機能や生活状況に応じたサービスを利用し適応する
- 身近な人を含めた死に対応する
❷「高齢期」の家族や支援者にとって必要なこと
知的障害がある人の高齢期に周囲の人が留意しなければならない点がいくつかあります。
障害のある人に老いの自覚がない場合には特に気を付けて、尊厳を損なわないようにかかわっていく必要があります。
留意点の1つ目は、障害のない人よりも老化が早い場合があります。老化が始まっていても知的障害のある人自身に自覚がない場合もあります。今まで出来てきたことが出来なくなってきた事に気付いたら、認知症や精神疾患(うつ病等)の可能性を考え、早期に受診してもらえるよう話し合いましょう。
そして留意点の2つ目は、病気への注意です。知的障害のある人の死因の多くが障害のない人のものとは異なっているということが指摘されています。知的障害が軽度でも、複雑な因果関係の理解は難しいため心身の不調(結果)が、見た目ではわからない体の内部の変調によるもの(原因)とは自覚することが出来ず心身の状態を適切に訴えられずに受診が遅れてしまう場合もあります。定期的に受診できるよう環境を整えていくことが重要です。
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