こんにちは💚 介護ラボのkanaです。今日は「福祉住環境」の中から『権利擁護』について、今日と明日の2回(今日は「公的な制度」を、次回は「地域の人々によるインフォーマルな関り」)に分けて書いていきます。
法定後見制度と任意後見制度の違い
Contents
1.判断能力が不十分な人の権利擁護(公的な制度)
1⃣成年後見制度
◉成年後見制度の3つの類型と保護者に与えられる権限
(1)法的後見制度
(2)任意後見制度
2.まとめ
1.判断能力が不十分な人の権利擁護 (公的な制度)
2005年(平成17年)5月、埼玉県富士見市で高齢の認知症の姉妹が過去数年間にわたって複数の悪質な住宅リフォーム業者に付け込まれ、総額で4千数百万円の契約を結ばされた事件が発覚しました。
この事件では、リフォーム業者規制の在り方も問われましたが、改めて福祉関係者に、認知症など判断能力が不十分な人の権利擁護の必要性を認識させました。
従来、日常的に介護を必要とする人や判断能力が低下した人は、家族と同居して援助を受けながら暮らすか、そうでなければ入所施設で暮らすことが多かった。
そのような環境であれば、家族と施設職員が、いわば「防波堤」になることで、高齢者が悪質な業者と直接接触する可能性は低く、今回のような被害者にはならなかったといえます。
このことは、認知症などの判断能力が不十分な人が直接対応することによって被害者となってしまう「振り込め詐欺」や「強引な訪問販売被害」等に関しても当てはまります。
しかし、子供や孫等との同居率が減少し、住宅重視の福祉施策が推進される中で、判断能力が低下した高齢者や障害者等が、単身で、あるいは夫婦や兄弟姉妹等で暮らす例が増えてきています。
在宅重視という福祉施策の方向自体に誤りはありませんが、安心・安全な在宅生活を実現するためには、「食事」「入浴」「排泄」などの生活行為の支援だけではなく、判断能力が不十分な人を、財産侵害などから守る支援策を整備する必要があります。
その場合、今回まとめる「公的な制度による支援」と、次回の「地域の人々によるインフォーマルな関り」という2つの支援が必要とされます。
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1⃣成年後見制度
「民法」は、未成年18歳未満(2022年(令和4年)4月以前は20歳未満)は判断能力が不十分だということで、一律に親に保護者としての権限を与え、未成年者が親の同意なしに結んだ契約などの法律行為は取り消すことができると規定しています。
これに対し、成年になると誰でも単独で有効な法律行為を行うことが出来ますが、例えば、重度の知的障害者や認知症の高齢者などは、本人の判断をそのまま尊重すると、場合によっては本人にとってマイナスになってしまう事があります。
冒頭の認知症の姉妹のリフォーム詐欺被害はその典型例で、同様の事例が数多く起きています。
そこで、判断能力が低下している成年者に対して保護者を付け、その保護者が本人に代わって法律行為を行ったり、本人が行った不利益な契約を取り消す権限を保護者に与えることで、判断能力が低下している人の権利を擁護する仕組みが「成年後見制度」になります。
成年後見制度には、「民法」によって定められた、
- 法定後見制度
と、「任意後見契約に関する法」によって定められた、
- 任意後見制度
があります。
- ◉成年後見制度の3段階(類型)と保護者に与えられる権限
- 【補助】
・本人=被補助人
・保護者=補助人
・意思能力:精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な人
・取り消し権:民法13条第1項に規定する行為のうち、申し立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の行為
・代理権:申立ての範囲内で家庭裁判所が定めた特定の行為
・開始時の本人同意:必要
【補佐】
・本人=被保佐人
・保護者=保佐人
・意思能力:精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な人
・取り消し権:民法13条第1項に規定する行為
・代理権:申立ての範囲内で家庭裁判所が定めた特定の行為
・開始時の本人同意:不要
【後見】
・本人=成年被後見人
・保護者=成年後見人
・意思能力:精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
・取り消し権:日常生活に関する行為以外の全ての法律行為
・代理権:財産に関する全ての法律行為(日常生活に関する行為は除く)
・開始時の本人同意:不要
1番下の「後見」段階が、判断(意思)能力の低下が一番著しい状態ですが、この場合でも、「日常に関する行為」は代理権の対象にはならず、あくまでも本人の意思が尊重されます。
また、1番上の「補助」段階は、本人に一定の判断(意思)能力があることから、制度利用に当たっては、本人の同意が必要とされます。
(1)法的後見制度
「法定後見制度」は、ある時点で、既に判断能力が一定以上低下している人の権利を守るために、四親等以内の親族や配偶者、市町村長などの申し立てに基づいて家庭裁判所が審判を行い、誰を保護者にするかや、その保護者に付与する権限の内容などを決定する制度です。
保護者には、本人のために代理権や取消権を行使する権限が与えられますが、実際にどの範囲までの権限を与えられるかは、保護を受ける本人の判断能力の程度に応じて3段階(類型)「補助」「補佐」「後見」に分けられています。※前項の表に記載
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(2)任意後見制度
「任意後見制度」は、判断能力のある人が、将来、判断能力が低下した時に、受けたい支援内容を自分で考え、それを実行してもらう契約を、自分で選んだ人との間で「公正証書」によって結んでおき、その後、実際に本人の判断能力が低下した段階で、あらかじめ頼まれていた人が後見人として正式に事務を開始する制度のことです。
2.まとめ
いずれの制度も、法律によって利用条件や手続きなどが細かく決まっており、詳細を理解することは容易ではありません。
しかし、少なくとも、福祉住環境コーディネーターをはじめ、高齢者や障害者などの支援に関わる全ての専門職は、基本的知識を身に付けておき、制度の利用が必要だと思われる場合に、本人や家族に基本的な事を説明したり、必要に応じて速やかに、
- 自治体の窓口
- 法テラス、若しくは・・・
- 弁護士
- 司法書士
- 社会福祉士
などの専門職に繋ぐ役割が期待されています。
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