こんにちは。介護ラボのkanaです。「人間の理解」の中から『介護実践におけるチームマネジメント』について7回に分けてまとめていきます。今日は2回目になります。
介護サービスの倫理と専門性
Contents
1.サービスの特性と介護における具体的な8つの取り組み例
◉「無形性」「不可分性」「品質の変動性」「消滅性」
2.介護サービスと他のサービスとの相違点
1⃣相互関係の重視とサービスを支える倫理と専門性
(1)相互関係の重視
(2)倫理と専門性
1.サービスの特性と介護における具体的な8つの取り組み例
◉「無形性」「不可分性」「品質の変動性」「消滅性」
- (無形性)「形」がない:サービスの内容の分かりやすい事前説明資料を作成し活用する。
- (無形性)「形」がない:介護計画を作成し、事前に十分な説明を行ったうえで介護を行う。
- (不可分性)分けることが出来ない:介護の提供記録を詳細に残し、提供内容を確認する。
- (不可分性)分けることが出来ない:提供したサービスの適切さや効果を確認するための評価であるモニタリングを行う。
- (品質の変動性)品質が変わる:介護マニュアルやガイドラインを作成し、介護福祉職チームで徹底する。
- (品質の変動性)品質が変わる:介護福祉職の個々が専門職としての知識と技術を高める。
- (消滅性)ためておくことが出来ない:実施した介護の内容を振り返る(記録の確認やカンファレンス、申し送り等での情報共有・活用)。
- (消滅性)ためておくことが出来ない:外部評価、利用者満足度評価などを通じてサービス・提供体制の点検を行う。
上記の8つの取り組みから、アセスメント・介護の立案。介護の実施・評価などの介護過程の展開を行います。
2.介護サービスと他のサービスとの相違点
「サービス」を扱う分野の中でも、「人が人に対して行うサービス」をヒューマンサービスといい、具体的には・・・
◉福祉
◉保険
◉教育
◉医療
◉相談
などがこれにあたります。介護サービスも、この「ヒューマンサービス」に含まれます。
ヒューマンサービスには、下記のような特徴があります。
- サービスを受ける側、提供する側の相互関係が重視され、高い倫理や専門性が求められる。
- 障害や疾病、特定のニーズや専門分野だけを見るのではなく、人としての全体を捉える視点を持つ。そのため、自らの専門分野としての業務に加えて、連携や協働という役割を担う。
これらは、まさに介護の本質というべき部分でもあります。上記の特徴2つと中心にしながら、次項で介護サービスの特性とマネジメントの在り方を考えていきます。
1⃣相互関係の重視とサービスを支える倫理と専門性
(1)相互関係の重視
ヒューマンサービスである介護サービスには、サービスを受ける側と提供する側の信頼関係が不可欠です。この信頼関係は、援助関係、協力・協働関係などの相互関係を通して育まれます。
具体的には、自立を目指す介護において、「
具体的には、自立を目指す介護において、「自分で出来るようになりたい」という本人の思いや、「以前のように料理が出来るようになって、家族に食事を作ってあげたい」などの本人のニーズ、いわゆる「意欲」や「生きる力」は他の何よりも優先される介護の大切な原動力です。
利用者によっては、この「原動力」そのものが弱まってしまうことがあります。
また、本人でさえ、自分の持つ「意欲」や「生きる力」の存在に気付くことが出来ない状態になることもあります。そのような場合、私たち介護福祉職は、援助関係を通じて、意欲や生きる力を高める働きかけも行います。
その働きかけには長い時間を必要とする場合もありますが、利用者の力の高まりや、自立へと変化していく様子は、介護福祉職にとっても大きな喜びとなり、これは利用者・介護福祉職の共有の力となります。
このように利用者と介護福祉職の間には相互関係が存在しているのです。
視点を変えて、サービスの内容と量を決定するのは誰かという観点から、利用者と介護福祉職の相互関係を考えてみます。
一般のサービス業では、通常、購入するサービスの内容や量は消費者が決定します。例えば、どのくらいの頻度で衣類のクリーニングをするか、どの服をクリーニングに出すかといったこと、また、どんな種類の情報提供サービスをどの頻度で受けるかなど、購入するサービスの内容や量を決定するのは消費者です。
介護サービスにおいても、サービスの内容や量を決定するのが本人や家族であることは同様ですが、ヒューマンサービスである介護サービスでは、本人や家族と専門職との協力・協働が重要となります。
(2)倫理と専門性
実際の介護場面では、介護支援専門員・ケアマネジャーや、相談支援専門員、介護福祉士等がケアカンファレンスを活用しながら、サービスの内容や量を最終調整します。また、サービスの提供は制度のルールである支給内容や上限等に従って行われます。
いくら利用者が多くの介護サービスを利用したいと望んでいても、本人のQOL(生活・生命・人生の質)向上と自立の視点からサービスを利用することが適切と思われない場合もあります。
例えば、排泄行為が自分で出来るにもかかわらず、全面的な介護を希望する人がいた場合、単に利用者や家族の希望通りに対応するのではなく、介護福祉職が見立てる『自立に向けた介護』とは何かを示し、本人や家族との面談や話し合いによるサービス調整を行います。
サービス内容や量の調整は、利用者や家族の暮らしに大きな影響を与える重要な事柄でもあり、経済的負担を伴う利用者、家族との信頼関係を基盤に進められるべきものです。
時間が掛かる場合もありますが、信頼関係を積み上げながら、利用者、家族と共に自立への道を歩む姿勢が求められます。
介護福祉職は、援助関係である相互関係の中で、利用者の生きる力をトータルで高める専門職です。介護福祉職は、食事や排泄、入浴の介護をただ単にサービスの1つとして提供しているのではなく利用者の暮らしや心身の状態に、「継続的」「直接的」「間接的」に大きな影響を与えています。
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高い倫理と専門性無くして責任あるサービスは提供できません。
そのため、介護福祉職とそのチームは、利用者本位の倫理観と専門性、そしてそれらを高める取り組みを欠かすことが出来ないのです。
また、「サービスを購入したくない、使いたくない」という人への対応も一般のサービスとヒューマンサービスである介護サービスでは異なります。
一般のサービスであれば、消費者が「購入しない」という選択をすることで提供者と消費者の関係は終わりますが、介護サービスは専門職チームで利用が必要だと判断した場合には、利用を拒否する人にも、しっかりとその必要性を説明し粘り強く関係づくりをすすめていかなくてはなりません。
例えば、認知症があり孤立した生活をしている高齢者には、外部からのかかわりを拒む人が少なくありません。しかし、真に必要と判断すれば、関りを続けるのが福祉の視点を持つ介護の在り方です。
サービス利用者に認知症がある人以外にも、判断能力が不十分な人や、サービスを提供する側と受ける側に不平等な関係が生じやすいなど、ヒューマンサービスとして介護サービスが持つ特性と呼べるでしょう。
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