こんにちは 介護ラボ・kanalogのカナです。前回の【①認知症の病理】脳の構造と症状との関係 vol.69 に引き続き、今回は『認知症の病理について』まとめていきます。
せん妄と認知症、老化と認知症の関係
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意識障害でないことの理解
認知症は基本的に覚醒レベルが保たれます。
- レビー小体型認知症 ⇒ 意識を保つ系統にダメージが及ぶため覚醒レベルが変動し、覚醒レベルが低下した時に認知機能の悪化や幻視、せん妄などがあらわれます。
- 血管性認知症 ⇒ 特に夜間に覚醒レベルが低下し、夜間せん妄を伴いやすい傾向があります。
- アルツハイマー型認知症 ⇒ せん妄を合併すると認知機能が悪化し、BPSD(認知症の行動・心理症状)が増悪しますが、せん妄は一時的なものなのが特徴です。例えば夜間にせん妄があらわれていてもぐっすり眠るとせん妄が消失し、翌日には認知レベルが元に戻り、せん妄によるBPSDも消失したりします。
※せん妄とは?
覚醒レベルが軽度に低下し、同時に注意障害などの認知機能に支障を伴っている状態の事
❶せん妄と認知症の識別
せん妄 | 認知症 | |
---|---|---|
病態 | 意識障害 | 認知障害 |
関係 | 認知症に、しばしばせん妄が合併 | 認知症に、しばしばせん妄が合併 |
誘因 | あり | なし |
変動 | あり | なし |
経過 | 一過性 | 持続性 |
治療 | ①誘因除去・原因薬剤中止 ②治療薬剤投与 | 抗認知症薬 |
- ✅せん妄の3つの特徴
- ❶ぼーっとしていたり、目つきが変わって覚醒レベルが低下している。
❷注意障害があり、呼びかけたときの反応がいつもと異なり適切でなかったり、簡単な命令に応じたりすることが出来ない。
❸睡眠覚醒のリズムが乱れ、昼夜逆転することもある。
※これらの症状があった場合は、せん妄を疑います。
多くの場合、せん妄には誘因があります。高齢者の認知症で脳がもろくなった状態では、
- 「脱水」
- 「便秘」
- 「発熱」
- 「疼痛」
- 「身体拘束」
などで容易にせん妄が生じます。
せん妄は適切な治療薬で改善するので、せん妄に気づくことが大切です。
興奮して過活動の状態となる過活動性せん妄は見つかりやすいのですが、ぼーっとしているだけでおとなしい低活動性せん妄は見過ごされやすいので注意が必要です。
うつの理解
うつとは、気分が落ち込み、自分は生きている価値がないといった悲哀を感じている状態です。
健常者も失敗すれば気持ちが落ち込みますが、時間の経過とともに持ち直します。
しかし、うつが継続し、そこから抜け出せない状態が2週間以上続くのがうつ病です。このうつ病の状態で記憶機能が低下し、軽度の認知症様の症状となると偽性認知症といわれます。
認知症疾患のうつ病
・血管性認知症 ⇒ 前頭葉白質に病変があるとうつ症状が現れる
・レビー小体型認知症 ⇒ 初期からうつが症状の1つとなる
・アルツハイマー型認知症 ⇒ 初期には自分の記憶が失われていくという喪失体験からうつ症状が出ることがあるが、進行と共にうつが消え多幸的になる傾向がある
※うつ状態が続くと海馬の神経細胞が減り、記憶障害が引き起こされることことが示されている。
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老化と認知症の関係
知能は、瞬時の判断力などの流動性知能と、経験を集積した知識である結晶性知能に分かれます。
流動性知能
●30歳代をピークに加齢に伴い徐々に低下していく。
(末梢神経の電気的興奮が伝わる速度(神経伝導速度)を調べても、加齢とともにそのスピードが徐々に低下する)
※これらの低下は誰にでも見られる加齢変化なので、生理的な(健常な)老化現象といえます。
●認知症になると同年齢の人達と比べて著しく低下する。
結晶性知能
●高齢になるまで高まり続ける
●認知症になると同年齢の人達と比べて著しく低下する。
知能低下によって日常生活に支障が出た場合が「認知症」です。
「日常生活の自立」という基準を使うことで、正常な状態(健常)と、異常な状態(認知症)のあいだに線を引くことが出来ます。
- 「アルツハイマー型認知症」
- 「レビー小体型認知症」
- 「前頭側頭型認知症」
といった主要な認知症の脳に生じる変化は、特定のたんぱくが異常に多量蓄積することです。
ところが、このたんぱくが脳に溜まり始めてもすぐには症状が出ません。いわば認知症の潜伏期(脳に病変はでき始めているが症状が出ない20年以上の間)と健常な高齢者を区別することは容易ではありません。
いかし、診断技術の進歩により、アルツハイマー型認知症の脳で多量蓄積するたんぱくをアミロイドPETという特殊な脳画像検査で見える化する方法は開発されているので、発症の10年前に異常蓄積を見つける技術が生み出されています(保険適用の検査ではありません)。
今後アルツハイマー型認知症の根本的治療薬が開発されれば、この検査で発症の10年前に異常蓄積を見つけて、治療を開始することができるようになるので、今後の研究が進むことが望まれています。
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