こんにちは 介護ラボ・kanalogのカナです。今日は・・・
パーソンセンタードケアの3つのステップ「聞く」「集める」「見つける」について
Contents
1.パーソンセンタードケア
❶認知症の人の心理的ニーズ
❷認知症の人の個人の価値を低める行為(PD)と良くないサイン
❸認知症の人の個人の価値を高める行為(PE)と良い状態サイン
2.3つのステップ「聞く」「集める」「見つける」
1⃣認知症の人の思いを「聞く」
(パーソンセンタードモデル)
2⃣情報を「集める」
3⃣ニーズを「見つける」
1.パーソンセンタードケア
パーソンセンタードケアは、イギリス・ブラッドフォード大学の老年心理学教授キッドウッド(Kitwood,T.)によって提唱された世界的に最も知られた認知症ケアの理念です。
年齢や健康状態に関わらず、すべての人々に価値があることを認め尊重し、1人ひとりの個性に応じた取り組みを行い、認知症の人を重視し、人間関係の重要性を重視したケアのことです。
認知症の重要度にかかわらず、認知症の人たちを私たちと同じ「1人の人」としてとらえること、さらに「1人の人として受け入れられ、尊重されると本人が感じていること」が重要になります。
「認知症の人が1人の人として、周囲の人や社会とのかかわりを持ち、受け入れられていることを実感し、人として相手の気持ちを大事にし、尊重し合う相互関係を含む”パーソンフット”」がその目標となります。
❶認知症の人の心理的ニーズ
介護施設に入所中の認知症の人は、介護を受けることを目的としているため、認知症の人のそれぞれが持つニーズより、
- 食事
- 排泄
- 生活
など日常生活に関する介護が中心となります。
そのため、認知症の人の様々な認知機能障害や、生活障害に関連したとの人独自のニーズが満たされることが望まれます。
認知症の人のパーソンフッドを維持するために、キッドウッドは「認知症と共に生きる人々の心理的ニーズ」を花の絵であらわしました。
この5枚の花びらは
「自分らしさ・自分が自分であること(Identity)」
「結びつき(Attachment)」
「たずさわること(Occupation)」
「共にあること(Inclusion)」
「くつろぎ(Comfort)」
のニーズをあらわし、互いに重なり合い関連し合っています。
中心にあるニーズの「愛(Love)」は、あるがままに受け入れ、こころから思いやり、慈しむことを求めているといえます。これらのニーズは全ての人に共通するニーズですが、認知症の人たちは認知機能障害のために満たすことが出来にくくなっています。
認知症の人の個人の価値を低める行為が行られることもあります。
そのために、これらのニーズが満たさわれないことや個人の価値を低める行為によっていわゆるBPSD(認知症の行動・心理症状)と呼ばれる行動が現れやすくなります。
認知用の人たちの”パーソンフッド”を支えるためにはこれらの心理的ニーズをより一層満たし、よい状態を高めるようにパーソンフッドを維持するための積極的な働きかけとして、個人価値を高める行為を実践していくことが重要になります。
❷認知症の人の個人の価値を低める行為(PD)と良くないサイン
上記の花びらに合わせた「低める行為」
「自分らしさ・自分が自分であること(Identity)」
・子ども扱いされること
・好ましくない区分け(レッテル)
・侮辱すること
「結びつき(Attachment)」
・非難すること
・だましたり、欺いたりすること
「たずさわること(Occupation)」
・能力を使わせないこと
・強制すること
・中断させること
・物扱いすること
「共にあること(Inclusion)」
・差別すること
・無視すること
・のけ者にすること
・欺けること
「くつろぎ(Comfort)」
・怖がらせること
・後回しにすること
・急がせること
【良くない状態のサイン】
□絶望している時に誰からも相手にされない
□非常に強い怒りがある
□深く悲しんでいる時に誰からも相手にされない
□不安がある
□恐れがある
□退屈している
□身体的な苦痛、不快感がある
□身体が緊張している
□動揺がある
□無気力である
❸認知症の人の個人の価値を高める行為(PE)と良い状態サイン
上記の花びらに合わせた「高める行為」
「自分らしさ・自分が自分であること(Identity)」
・尊敬すること
・受け入れること
・喜び合うこと
「結びつき(Attachment)」
・尊重すること
・誠実であること
・共感を持ってわかろうとすること
「たずさわること(Occupation)」
・能力を発揮できるようにすること
・必要とされる支援をすること
・関りを継続できるようにすること
・共に行うこと
「共にあること(Inclusion)」
・個性を認めること
・共にあること
・一員として感じらえるようにすること
・一緒に楽しむこと
「くつろぎ(Comfort)」
・怖がらせること
・後回しにすること
・急がせること
【良い状態のサイン】
□自分に自信を持っている
□自己主張を強く出来ている
□身体がリラックスしている
□他の人たちのニーズに対して敏感
□ユーモアを返す、ユーモアを使う
□創造的な自己表現をする
□喜び、楽しさを表す
□役に立とう、手伝おうとする(人に何かをしてあげようとする)
□他の人との交流を自分から進んで始める
□愛情や好意を示す
□自尊心を示す
□様々な感情を表現する
2.3つのステップ「聞く」「集める」「見つける」
3つのステップはパーソンセンタードケアを実践するために、認知症の人の視点を効果的にケアの中で展開するためのプロセスを示しています。
パーソンセンタードケアを実践するための3つのステップ
STEP1 思いを「聞く」
・認知症の人の声(思い)に耳を傾け、話をよく聞きます。
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STEP2 情報を「集める」
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・認知症の人の5つの要素(パーソンセンタードモデル)を知り、出来るだけその意図の全体像を把握します。
STEP3 ニーズを「見つける」
・認知症の人の満たされていない心理的ニーズは何かを考えます。そして、心理的ニーズを満たすために、パーソンセンタードモデルに対応したケアプランを考えていきます。
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STEP1へ (ぐるぐる回る)
1⃣認知症の人の思いを「聞く」(パーソンセンタードモデル)
「認知症の人は何もわからない」と思い込んで、その人の最も大事な「思い」を聞いていない場合が殆どです。
上記の図、STEP1は、「認知症の人の思いを聞くこと」です。具体的にその人がどのように感じているのか、聞いてみることが重要です。重度のコミュニケーション障害のある人も、まず話して反応を待ちましょう。
認知症の人はそうでない人に比べて5倍程度の時間が掛かり、うまく言葉で表現できない場合があります。
認知症の人が話しやすい静かな場所で、その人の思いを引き出してみましょう。
また自分が認知症の人だったらと考えて待つことも重要です。
そして、話せない人の場合は、その人の顔の表情や動作、視線やアイコンタクトなどからその人の思いを受け止めてい見ましょう。
パーソンセンタードモデル
【脳の障害】
●認知機能障害(記憶障害、理解・判断能力障害・実行機能障害・失語・失認・視空間障害など)
【身体の健康状態】
●聴力・視力・痛み・苦痛・かゆみ・排泄障害・便秘・脱水・栄養障害・感染症など
【性格傾向】
●家族構成、元気に暮らしていた時の職業、暮らしていた地域、好きなこと、得意なこと、嫌いなこと、苦手なこと、過去の嬉しかった経験、誇りに思っている経験など
【生活歴】
●家族構成、輝いていたころの職業、地域、好きなこと、嫌いなこと、苦手なこと、過去の経験、誇りに思っていることなど
【社会心理】
●人間関係:ケアしている人との人間関係、一緒に生活している人、家族、親戚
●物理的環境:生活の場所で不快な部分
2⃣情報を「集める」
パーソンセンタードケアを提唱したキッドウッドは、”認知症の人の行動や症状は、5つの要素”
❶脳の障害
❷身体の健康状態
❸生活歴
❹性格傾向
❺社会心理
からなると考えました(前項のパーソンセンタードモデル)。
認知症の人を理解するため、STEP2では、このパーソンセンターモデルに基づいて、認知症の人との会話や資料、家族、周囲の人からの情報を集めていきます。
STEP1における認知症の人の思いを聞く会話の中で、異変が観察されたり、不快感や苦痛などの様子もあれば情報として加えていきます。
3⃣ニーズを「見つける」
STEP3では、認知症の人は良い状態にあるか、よくない状態にあるか観察し、ニーズを見つけていきます。
その時に必要なのは、
「その人だったらどのような思いなのか」
「それによってどのような行動をするのか」
を想像することです。
そして仮説を立ててその人の満たされないニーズを確認してケアを考えていきます。
良くない状態のサインは、パーソンフッドを損なう認知症の人の価値を低める行為はなかったのかについても考える必要があります。
例えば、「怒りを示している人」には、
●その人を無視した
●のけ者にした
などの行為がみられていたのかもしれません。
満たされないニーズは何かを考えていくことが大切です。
良い状態のサインには、パーソンフッドを高める認知症の人の価値を高める行為があります。
認知症の人の様々な行動の裏にあるその人独自の原因をこの、「聞く」「集める」「見つける」の3STEPから分析することで、その人が主体的に行動できるようになり、よい状態に繋がり、パーソンセンタードケアを目指していくことになります。
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