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介護ラボ・カナログのkanaです。今回は・・・
【内部障害】呼吸器機能障害の観察と支援について
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呼吸器機能障害の観察
医療職と連携するうえでも、生活場面の中で注意しておきたい観察点を共有しておくことが大切です。
利用者の症状や状態、高齢者の場合には加齢に伴う変化もあるので一概に言えませんが、次のような点に気が付いたら医療職に報告することが必要になります。
①精神的苦悩への対応
呼吸困難がひどい場合には、他者が見ても苦しそうと分かりますが、日常生活の中で生じる息苦しさを他者が理解することは難しい場合があります。また動くと苦しさが強くなる、他者と同じ行動ができないということが、閉じこもりや、うつ傾向になる原因になることもあります。
精神的苦痛を表現できない利用者の場合、眠れない、食欲がないといった訴えとして表現される場合もあることを意識しておくことが必要です。
②呼吸困難の状況を確認する
呼吸困難の原因には、換気の減少や気道の通過障害、不必要な二酸化炭素の排出ができない、などがあります。
呼吸困難がある場合には、呼吸数や脈拍数、パルスオキシメーターの値を確認します。呼吸数を確認しながら、呼吸の深さも確認します。浅い呼吸は呼吸困難の症状です。利用者に声を掛けて意識の状態も確認します。意識の状態がいつもと異なる場合、口唇や爪にチアノーゼ(青紫色になった状態:血液の酸素欠乏や二酸化炭素過剰によりみられる)がみられた場合には、すぐに医療職に連絡します。
③使用機器の点検確認
在宅酸素療法を行っている場合には、使用している機器の状況を確認することも重要です。酸素が十分に供給されない場合には、呼吸困難が生じます。酸素濃縮装置を使用している場合には、電源が入っているか、チューブのルートに支障がないか、酸素が出ているかを確認します。
酸素は無味無臭で目には見えないので、カニューレをコップの水に入れると、酸素が出ている場合には気泡が確認できます。酸素ボンベを使用している場合には、酸素残量を確認します。
利用者は息切れなどの症状が改善されない場合や酸素に対して誤った知識があると、自分で酸素流量を変えている場合もあります。酸素流量は指定された状態であるかの確認もします。
④体温の変化
体温の上昇は、感染(風邪の初期症状)の徴候です。日頃の体温を定期的に確認しておくことが必要ですが、37.5℃以上あった場合には医療職へ報告します。
⑤痰の色や状態
呼吸器機能障害のある利用者の場合、痰が出ます。痰の色、かたさ、量の変化を日頃から確認する必要があります。急な変化は感染症などの体調変化のあらわれなので医療職に報告します。
⑥体重変化と浮腫
呼吸器機能障害が心臓に負担をかける場合があります。心臓に負担がかかると浮腫(むくみ)が出て体重が増加します。定期的な体重測定は、体重変化を知るうえで重要な情報となります。
急に尿が少なくなったり、体重が増えたりした場合には医療職へ連絡します。
⑦意識の変化など
眠気が強い、頭が痛い、気分が落ち着かないなどの場合には、酸素不足や二酸化炭素の増加が疑われます。利用者の訴えをよく聞き、このような症状が見られたら医療職に連絡します。
そのほか、いつもと異なる訴え、食欲がない、胸が痛い等の訴えがある場合には早めに医療職へ連絡します。
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8つの異常な呼吸
- ❔8つの異常呼吸
- 1⃣頻呼吸〈呼吸数と深さの異常〉
呼吸能深さは変わらないが、呼吸数が正常より増加。1分間に25回以上。
2⃣除呼吸〈呼吸数と深さの異常〉
呼吸の深さは変わらないが、呼吸数が正常より減少。1分間に12回以下。
3⃣チェーンストークス呼吸〈リズムの異常〉
無呼吸と深く速い呼吸が交互に出現する。
4⃣クスマウル呼吸〈リズムの異常〉
異常に深く遅い呼吸が持続する。
5⃣下顎呼吸〈努力呼吸〉
下顎を下方に動かし口を開いて吸気する。
6⃣鼻翼呼吸〈努力呼吸〉
鼻翼が呼吸に応じてピクピクする。
7⃣陥没呼吸〈努力呼吸〉
胸腔内が陰圧になり、吸気時に胸壁が陥没する。
8⃣肩呼吸〈努力呼吸〉
肩を上下させて呼吸する。
呼吸器機能障害の支援
呼吸器機能障害がある利用者の場合、生活動作や活動に伴って息苦しさが増加します。
そのため、生活行動でもある、
- 食事
- 入浴
- 排泄
- 買い物
なども大きな負担がかかる行動になります。
利用者に合わせた支援方法を考えることが大切です。
❶呼吸困難軽減への対応
呼吸困難のある利用者には、呼吸困難を軽減する体位の工夫と、環境の整備を行います。
体位は、座位や起座位でいることが呼吸を楽にします。ベットの機能を活用し上部を上げ、枕などを用いて体位を保持します。室温は低めに設定し、顔に風を送ることで、呼吸困難を軽減できる場合があります。
ほこりや気温、湿度の変化が咳を誘発することがあります。日頃から室内環境を清潔にしておくことも大切です。
❷風邪、インフルエンザの予防
呼吸器機能障害の疾患は、、冬に増悪しやすい特徴があります。
- ✅風邪、インフルエンザの予防ポイント
- ●規則正しい生活、適度な運動、バランスの良い食生活、十分な休息を心掛けた生活を行う。過労を避ける
●うがい、手洗いを習慣とする
●口腔内の清潔のために、食後は歯磨きをする
●人の多い場所への外出を避ける。咳や鼻水など風邪症状のある場合や外出時にはマスクをする
●部屋の加湿、換気、温度差の少ない環境整備を心掛ける
●痰はこまめに出す
●インフルエンザの予防接種を受ける
●症状が悪化する前に、早めに受診する
❸食事への対応
食事をすると胃が膨れて、横隔膜を圧迫し呼吸がしにくくなります。また食後は消化管に血液が多く流れるので、呼吸器系への血液が少なくなり、ガス交換機能が低下します。このことから、食事の1回の量を少なくし、回数を分けて摂取したりします。
胃が膨れるようなものや、ガスを発生させやすいものは避けるようにします。
痰には、タンパク質と水分が含まれているため、食事でたんぱく質や水分を補うことが必要になります。また痰を出しやすくするために水分摂取は重要になりますので、こまめに飲むようにすることが大切です。
排痰のために咳をしますが、咳は体力を使います。カロリーの高い食事も意識しましょう。食事や水分摂取後には、痰が多くなる傾向にあります。
酸素を吸いながらの調理は可能ですが、ガスコンロなど火を使う調理をしてはいけません。酸素吸入時には火気厳禁です。吸入を一時中止する必要があります。
-食事のポイント-
●水分、タンパク質、カロリーの高い食事をとる
●胃を膨らませる食材は避ける
●1回量を少なくし、回数を多くする
❹排泄への対応
排泄時にいきむことは、息を止めてしまうことになるので注意が必要です。呼吸を整えながら、息を吐きながらの排便を促しましょう。便秘はいきみに繋がります。使用する薬剤(気管支拡張薬)のなかには、便秘になりやすくなるものもあります。排便の状態を記録しておき、排便に苦痛を伴う場合は医療職に報告します。
-排泄のポイント-
●便秘を予防する
●排便時のいきみを少なくする
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❺入浴への対応
入浴は、身体の清潔を保ち、リラックスできますが、カロリー消費量、酸素消費量が多く、息切れが強くなる場合があります。
湯船に入るときには、胸部を圧迫しないようにし、湯温は高くせず、湯船につかる時間を短くするなどの工夫が必要です。短い時間でも満足感を得られるような支援も大切です。
酸素を吸いながらの入浴は可能です。カニューレが濡れた場合には水分をふき取ります。
-入浴のポイント-
●湯温は低く、湯船につかる時間は短時間にする
●肩まで入らない
❻衣服・寝具の工夫
きつい衣服であったり、着脱の際に上肢を上げることが多いと、胸部を圧迫したり、活動量を多くしたりして息苦しさに繋がります。思い寝具も胸部を圧迫します。軽めのものを選ぶことも大切です。
衣服は、好みに合ったゆったりめの衣服で、着脱の際に不必要に活動量が増えない工夫をします。
❼酸素濃縮設置、使用上の注意点
- ✅酸素濃縮装置の確認ポイント
- ・使用にあったって日常の点検項目を確認しておく
・火気、水気をさけて設置する
・ストーブ、ガスコンロなどは、酸素濃縮装置から2m以上離す
・直射日光の当たらない場所に設置する
・家財から前後左右15cm以上空けて設置する
・加湿器は、酸素濃縮装置から離して使用する
・停電時には酸素ボンベに切り替えができるようにしておく
・酸素吸入中は、本人及び周囲の人は禁煙を守る
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