生活支援技術Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ

【HIVに応じた介護】ポイントは3つ♪ vol.16

2020-06-29

こんにちは

介護ラボ・kanalogのカナです。 今回は・・・

HIVの理解とスタンダードプリコーションについて

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「不治の病」と恐れられていたHIV(ヒト免疫不全ウィルス)感染症ですが、1996年以降、HIVを抑え込む抗HIV薬が次々と開発され、HIVに感染してもHIV発症までの期間を延長させることができるようになりました。

多剤を組み合わせることにより、さらに体内のウィルスを抑え込むことができるようになるとともに、日和見感染症に対する治療方法も発達したため、結果的に、エイズを発症しても長期に生存することが可能になり、今ではHIV感染症は肝炎等と同じように、慢性感染症の1つとなっています。

HIVの理解

エイズはもはや「死の病」ではなく、HIVを正しく理解することで不安や恐れを解消し、HIV感染者が介護を必要とした際には、普段通りの暮らしが出来るよう多職種連携で対応する必要があります。

HIVによる免疫機能障害について医学的・心理的側面の理解

❶病気の広がりについて

1981年(昭和56年)に世界で最初のエイズ患者が報告されて以降、2015年(平成27年)には、全世界で約3670万人がHIVに感染しています。一方年間死亡者数は最も多かった2005年(平成17年)の約200万人から2015年(平成27年)は約110万人と、約45%減少しています。

2020年末現在、世界のHIV陽性者数は約3.770万人であり、新規HIV感染者数は年間約150万人、エイズによる死亡者数は年間約68万人となっています。現在、世界には約3.670万人のHIV感染者がおり、そのうち約半数は自分が感染していることを知らないとされています。

日本におけるHIV感染の特徴は?

  • 男性の同性間の性的接触で感染が拡大
  • 3割程度はエイズを発症してから発見
  • 都市部で多い

となっています。

❷HIV感染症とは

HIVは、免疫を担うリンパ球のうち、CD4リンパ球(血液中の白血球の1つであるリンパ球)に感染します。CD4リンパ球の中で、HIVが複製され、CD4が破壊されます。

そのため、血液中のCD4数は、免疫状態を示す重要な検査値です。また、血液中のHIV量も測定でき、これは、病気の進行速度を図るものとされています。治療により、検出限界以下に減らすことも出来ますが、HIVが体内からなくなることはありません。

HIVに感染しても、特に自覚症状はなく、感染に気付かなければ、無症状で進行していきます。そのため感染に気が付かずに治療を受けなければ、ウィルスの量は増加し、平均10年ほどでエイズを発症すると言われています。

❸エイズとは

エイズは、『後天性免疫不全症候群』が正式な名称です。

エイズ発症とは、エイズの診断として指定された23の日和見感染症を発症した場合をいいます。

日和見感染とは

日和見感染症とは・・・
日常生活で接触することがある細菌などで、健康な免疫の状態では反応しないのに、免疫機能力が低下した場合は、感染症として重篤な感染症となることをいいます。

❹HIV感染症の治療

1997年(平成9年)以降には、多剤を組み合わせたART(抗HIV薬療法)が導入され、体内のウィルス量をさらに抑え込めるようになりました。

早期にHIV感染が判明した場合は、1~3か月に1回程度の外来通院で、抗ウィルス薬の服役も1日1回1錠の場合が多くなりました。ARTにより、体内のウィルス量を抑え込むことができるということは、他の人への感染を予防できることでもあるといわれています。ただし、処方された薬の量や回数を守らなければ、治療の効果が得られないため、本人に代わって服薬管理をする周囲の手助けが必要になることもあります。

効果的な治療には、

🔹確実な服薬

🔹定期的な受診

が重要です。

❺HIVの感染リスク

HIVは感染力の弱いウィルスで、少量では感染しません。また熱や塩素に弱く、人の体の中に入らなければ生きていけないウィルスです。すでに入所施設での受け入れが進んでいる「B型肝炎」や「C型肝炎」に比べても感染率は低いとされています。

HIVの主な感染経路3つあります。

  • 性行為
  • 麻薬注射の回し打ち、医療における針刺し事故
  • 母子感染

また、血液以外の体液(精液、膣分泌液、母乳等)は、HIVを含みますが、HIVは、空気中や食べ物の中、水の中では生存できません。

そのため、性行為以外の以下の日常接触では感染しません。

HIVに感染しない日常的接触
・握手・軽いキス
・バス・電車のつり革
・医療機関・理美容の利用
・咳・くしゃみ・汗・涙
・食器類の共有
・蚊、ハエ、ペットなどを介して
・衣類、寝具などの共有
・銭湯・プール・洋式トイレの利用

❻標準予防策(スタンダード・プリコーション)の実践

スタンダードプリコーションとは?

標準予防策(スタンダードプリコーション)とは・・・
「血液、体液、分泌物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という基本的な考え方のことです。

事前に感染症の有無がわからなくても、全ての利用者の体液等の取り扱いは、感染リスクがあると考えます。

感染防止対策の3原則

①感染源を取り除く
②感染経路を断つ
③からだの抵抗力を強くする

他の『スタンダードプリコーション』記事はこちらから・・・
【清潔保持と感染予防】スタンダード・プリコーション5つ(標準予防策)vol.113

HIVによる免疫機能障害のある人の生活上の困りごとを理解する

HIVに感染したからと言って昨日まで出来ていたことができなくなるということはありません。病状によって注意点も変わってきますので、主治医や医療スタッフと相談しながらその人に会った生活を送ることが大切です。

病気を抱えながらの生活でつらいこと
・仕事を休んで日中に受診するのは難しい
・折角の休みが受診でつぶれてしまう
・海外勤務したかったが海外での通院が不安だ
・薬を毎日欠かさず同じ時間に飲む必要がある
・免疫力が低い時にはだるくて集中できない
・恋愛や結婚に対し消極的になる
・元気に過ごしているが健康には人一倍気を遣う
・病気のことを知られる不安がいつもある
・病気を理由に諦めることに辛さがある

HIVのある人への支援・多職種連携の中で介護職が果たすべき役割

①ケアをする際の留意点

HIVは傷口や粘膜から体内へ入ります。したがって、傷口や粘膜を守ること、歯ブラシ、カミソリ等血液の付きやすい日用品は共有しないことが大切になります。

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②血液などが付着した者の消毒方法

消毒は次のどちらかの方法で実施します。

  • 1%次亜塩素酸ナトリウムでふき取る
  • 0.5%次亜塩素酸ナトリウムに30分ひたしておく

③生活場面ごとの介護のポイント

血液や体液、分泌物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などに触れたり、飛び散る可能性があるときは、

  • 手袋を着用し介護する
  • 手袋を外した時には直ちに石鹸と流水で手洗いする
  • 介護時に汚染が予想されるときは、マスク、プラスチックエプロンや必要に応じてゴーグルを着用する
曝露事故が発生した場合は・・・
(細菌やウィルス、放射線や有害物質等に接触してしまうこと)
・針刺し事故
・注射針など鋭利な物による受傷
・皮膚や傷口や粘膜への接触
・便、唾液、鼻汁、痰、汗、涙、尿
➡直ちに曝露部位を大量の流水と石鹸(眼球・粘膜への曝露の場合は大量の流水)で洗浄し、すみやかに責任者と連絡を取り予防内服に関する指示を仰ぐ必要がある。

④心理・社会的ケア

HIV感染者やエイズ患者は、病気に対する不安及び精神的・経済的な不安を抱えていることが多いので、傾聴する姿勢を持ち、常に他職種と情報共有し対応できるようにする必要がある。また、家族やパートナーとの関係がうまくいっていない場合もあります。高齢者で親族との縁が無くなっている場合もあるため、後見人制度についても検討する必要があります。

心理・社会的ケアのポイントは?

  • 病気を抱える人々の中には、心理的、社会的な辛さを抱えている人もいる。
  • 病気を知っている家族やパートナーらは、本人にとって支えになる。
  • HIV/AIDSの予後は改善し、仕事等の社会生活を送れるようになったが、療養の長期化により、新たなストレス等がかかることもある。
  • 病気により経済的に生活できなくならないように、長期的な生活設計や家族等のサポート構築を支援する。

⑤エイズ拠点病院との連携

施設でHIV感染者を受け入れる際は、主治医の確保とエイズ拠点病院との連携が重要です。診察が必要な場合の対応は、嘱託医や在宅の場合は地域の主治医が担当しますが、一般的に、HIV感染者の診療経験が少ないため、診療についてもエイズ拠点病院などのバックアップが必要となります。


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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
よろしくお願いします♡

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