社会の理解

【成年後見制度とは?】法定後見制度と任意後見制度の違い vol.247

2021-02-15

こんにちは⭐ 介護ラボのカナです。「成年後見制度と日常生活事業支援事業」の中から、成年後見制度についてまとめていきます!

成年後見制度の背景

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成年後見制度

個人の権利を守る権利擁護制度の主なものとして、

  • 成年後見制度
  • 日常生活自立支援事業

の2つがあります。

この2つの制度は重要な役割を担っていますので、今回の「成年後見制度」と、次回の「【日常生活自立支援事業とは?】成年後見制度との違い vol.248」の2回に分けてまとめていきます。

1⃣成年後見制度の背景

1990年代後半から、戦後の日本の社会福祉の供給方法の基本的な仕組みであった措置制度が、利用契約制度へと社会福祉基礎構造改革として転換がはかられてきました。

例えば、高齢者福祉の領域においては、2000年(平成12)から始まった介護保険制度によって、利用者が介護サービス事業者を選択し、サービス内容に関して契約を結ぶ仕組みが導入されました。

しかし、サービスを選択し契約するためには、その契約がきちんと行われているかどうかをチェックするために、ある一定の判断能力が必要です。

社会福祉サービスの対象となる人たちの中には、20歳以上の成年となっていても、この契約上の判断能力が不十分な人達が沢山います。

そのため、社会福祉サービスに利用契約制度を導入するにあたり、判断能力の不十分な人達を支援し、権利を守る仕組みが同時に必要となりました。

そこでつくられたのが「成年後見制度」です

もともと明治時代から、財産管理を主な目的として判断能力の不十分な人達に対して後見人を付けるという「禁治産・準禁治産制度」という制度が民法にありました。

この制度は人権的及び福祉的に問題がある者でしたが、その点を改善し、これに代わるものとして、1999年(平成11)に民法が改正され、成年後見制度の1つである法定後見制度がつくられました。


また、法定後見制度と同じ1999年(平成11)に任意後見契約に関する法律が成立し、成年後見制度のもう1つである任意後見制度がつくられました。成年後見制度が始まったのは、介護保険制度が始まった年と同じ、2000年(平成12)になります。

2⃣成年後見制度の概要

成年後見制度は、前項の図のように、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つで構成されています

成年後見制度は、

  • 認知症
  • 知的障害
  • 精神障害

などにより判断能力が不十分な人を対象とし、対象者の判断能力の不足を補い、保護と権利擁護を図るための制度です。

支援者として選任されたものが、対象者の財産の管理に関する事務と、生活及び療養に関する事務等を行います。社会福祉サービスの契約のほか、生活上のさまざまな契約に幅広く対応できます。

また最近は、詐欺や悪質商法に遭う高齢者や増加しています。成年後見制度には、これらの犯罪による被害を防ぐ効果もあります。

なお、支援者が対象者に代わって全てを行うのではなく、あくまでも対象者の意志や自己決定を尊重しつつ、対象者の保護を図ることが重要です。

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3⃣法定後見制度の申立・類型・対象者

法定後見の開始の審判は、家庭裁判所に対する申し立てによって行われます。

申し立てが出来るのは、

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 検察官
  • 任意後見人
  • 市町村長

などです。

身寄りのない人のための申し立人としては、検察官と市町村長が想定されていますが、実際には検察官はほぼ皆無であり、市町村長の役割が重要視されています

法定後見制度には、

  • 「補助・補佐・後見」

という3つの類型があります。

対象者は、3つの類型に合わせて、精神上の障害による判断能力の程度によって「被補助人・被保佐人・成年被後見人」に区分されています。

この区分ですが、

被補助人<被保佐人<成年被後見人

というように被補助人が最も軽度であり、成年被後見人が最も重度となります。

法定後見制度の類型と対象者

【補助】
■対象者:[被補助人]判断能力が不十分な人
❶重要な財産行為について、自分で出来るかもしれないが、適切に出来るかどうか危惧がある(本人の利益のためには、誰かに代わってやってもらったほうがよい)人
❷いわゆる「まだら状態」の人のうち軽度の人

※まだら状態⇒日によって普通の日と認証の症状等が出る日がある人、ある事柄はよくわかるが他のことは全く分からない人、の両方を含む

【保佐】
■対象者:[被保佐人]判断能力が著しく不十分な人
❶日常の買い物程度は自分で出来るが、重要な財産行為は自分では適切に行うことが出来ず、常に他人の援助を受ける必要がある(誰かに代わってやってもらう必要がある)人
❷いわゆる「まだら状態」の人のうち重度の人

【後見】
■対象者:[成年被後見人]判断能力を常に欠く状態にある人
❶通常は日常の買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要がある人
❷ごく日常的な事柄(家族の名前、自分の居場所等)が分からなくなっている人
❸完全な植物状態(遷延性意識障害の状態)にある人

4⃣法定後見制度の支援者・支援内容・権限

法定後見制度

法定後見制度の支援者(保護者)として、家庭裁判所が、補助人・保佐人・成年後見人を選任します。基本的に本人の近親者が選任されることが多いのですが、司法書士や弁護士などの法律の専門職、社会福祉士などの福祉の専門職などが選任されることもあります。
複数人や法人の選任も可能となっています

成年後見人等は、与えられた権限の範囲内において、

  • 財産管理事務
  • 身上監護事務

を行います。

身上監護事務には、成年後見人が直接介護や看護などを行うという事実行為(法律的効果を生じない行為)は含まれません。但し身の上配慮義務はあります。例えば、成年被後見人等が自宅で身の回りのことをするのが困難になった場合、成年被後見人等の財産を有効に使って、配色サービスや訪問介護などを利用できるようにしなければなりません。

また自宅での生活に支障が生じるようになった場合には、成年被後見人等の意思を確認しつつ施設への入所を検討するなど、積極的に対応する必要があります。

◉成年後見人等の事務と義務

【財産管理事務】
財産に関する事務(例)
❶日常の身近な事柄
 ・印鑑・預貯金の保管
 ・年金その他の収入の受領・管理
 ・介護サービス契約の終結
❷不動産などの重要な財産の処分

【身上監護事務】
生活及び療養看護に関する事務(例)
❶介護・生活維持に関する事務
❷賃貸借等の住居の確保に関する事務
❸施設の入退所、処遇の監視、異議申し立て等に関する事務
❹医療に関する事務
❺教育・リハビリテーションに関する事務

       +


【身上配慮義務】
❶心身の状態及び生活の状況に配慮すべき義務
❷本人の意思を尊重すべき義務

成年後見人等には、それぞれが有する権限の範囲で、

  • 法律行為を本人に代わって行う代理権
  • 本人の法律行為に同意を与える同意権
  • 本人の法律行為を取り消す取消権

が与えられています。

取消権については、日用品の購入など日常生活に関する行為は対象外となります。さらに成年後見人には「財産権利権」も与えられています(下記の表にまとめます)。

補助人・保佐人・成年後見人の権限とは?
成年後見人
・財産管理権
・取消権
・代理権

補助人・保佐人
・同意権
・取消権
・代理権

上記の補助人と保佐人に与えられている同意権が、成年後見人には与えられていないのは、成年被後見人は判断能力を常に欠く状態にあり、たとえ同意を与えたとしても、その通りに行為する可能性が著しく低いため必要がないからです。

6⃣任意後見制度

「任意後見制度」は、本人の十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、前もって任意後見人に対して一定の範囲で代理権を付与する旨の任意後見契約を終結しておくというものです。

なお、任意後見人の権限は代理権のみで、取消権がないことに注意する必要があります。※任意後見制度の契約は、公証人役場で公正証書により締結します(任意後見契約)。

実際に精神上の障害により判断能力が不十分な状態になった場合には、家庭裁判所によって選任された任意後見監督人の監督の下で、任意後見人による保護及び支援を受けることが出来ます。

任後見人の行う事務は、成年後見人等の行う事務とほぼ同様で、

  • 財産管理事務
  • 身上監護事務

をこないます。その具体的な内容は、任意後見契約によって定められます。事務は契約締結などの法律行為を基本とし、介護や看護などの事実行為は含みません。但し身上配慮義務はあります。

任意後見人の資格には特に法律上の制限はなく、本人の自由な選択によります。親族・知人・法律の専門職、福祉の専門職等が任意後見人になる場合が多いです。また、個人に限らず法人等もなることが出来ます

7⃣成年後見制度の動向

成年後見制度の申し立て件数は、制度導入以降着実に増加してきました。但しここ5年間は2013年(平成25)が3万4548件に対して、令和3年(2021年)1月~12月の1年間の件数が3万9809件と、緩やかな右肩上がりになっています。

令和3年12月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で23万9933人(前年は23万2287人)であり、対前年比約3.3%の増加となっています。※厚生労働省:「成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―」より

認知症の人を対象とする介護保険制度と、精神障害や知的障害のある人などを対象とする障害者総合支援制度には、成年後見制度の利用を支援するための成年後見制度利用支援事業があります。

成年後見制度利用支援事業とは?

成年後見制度の利用に要する費用のうち、申し立てと成年後見人等の報酬に掛かるものを補助する事業。介護保険制度では地域支援事業に、障害者総合支援制度では地域生活支援事業に位置付けられています。

まとめ(費用など)

今回は成年後見制度についてまとめました。

最後に、成年後見制度にかかる費用ですが、まず申し立てるのに1万円程度かかります(鑑定が必要な場合は更に5万円から10万円程度かかります)。申し立ての書類の作成を専門職に依頼すれば更に10数万程度かかります。

そして、専門職が成年後見人等になる場合、毎月の費用として2万程度かかります。財産額によっては5万円から6万円程度になります。さらに付加的な報酬が発生する場合も有ります。

成年後見監督人が選任された場合、毎月の費用として1万~3万円程度かかり、その費用は財産額によって変動します。

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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
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