こんにちは 介護ラボのカナです💛 『知的障害』について、今回と、次回「【②知的障害】4つのライフステージに応じた支援方法 vol.98」の2回に分けて書いていきます。
知的障害の定義とIQ別発達段階
✅介護ラボのトップページ(色々なカテゴリーをまとめています)🌟
知的障害とは
まずはじめに、介護福祉職が知的障害のある人の介護を行う際に重要なことは、
- ❶知的障害の状態によって物事の理解力や意思表示の仕方が異なるため、利用者それぞれに応じたコミュニケーション方法を工夫して意志の把握に努めること
- ❷出来ないところを補い、持てる能力を伸ばすようにかかわることが大切であるため、知的障害のある人の物事の認知力・生活体験・ライフステージとの関係を考えて必要な支援を判断すること
です。
上記の2点を次項から詳しくまとめていきます。
(1)日本における知的障害の定義
先に結論から。
日本の法律では知的障害とは何か?ということについて、『明確な定義はありません』。
厚生労働省は、知的障害のある人の数を把握するために「知的障害とは、知的機能の障害が発達期(概ね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」として調査を行っています。
知的障害の判定は,
- 「知能指数(IQ)」
- 「適応行動の状態」
上記の2つに基づいて行われます。
(2)障害程度
知的障害の障害程度については都道府県ごとに決められています。
都道府県知事が交付する『療育手帳』では、
- 軽度
- 中度
- 重度
- 最重度
に分類されている場合が多いようです。
※東京都の場合を次項から書いていきます(6~17歳を対象)
(3)知的障害の障害程度4段階
- ◉知的障害の障害程度(6歳~17歳までの児童)
- ※東京都の場合
【最重度】
・知的測定値は、知能指数が概ね19以下
・運動は、運動機能が極めて未発達なため起座も不可能
・社会性は、対人関係の理解が不可能
・意思疎通は、言語による意思疎通が全く不可能
・身体的健康は、特別の治療・看護が必要
・基本的生活は、常時介護及び保護が必要(全介助)
【重度】
・知的測定値は、知能指数が概ね20~34
・運動は、運動機能が極めて未発達なため歩行も不十分
・社会性は、集団行動がほとんど不可能
・意思疎通は、わずかで不完全で単語だけのため、意思疎通が不可能
・身体的健康は、特別の保護が必要
・基本的生活は、部分的介助と常時の監督または保護が必要(半介助)
【中度】
・知的測定値は、知能指数が概ね35~49
・運動は、運動機能発達が年齢より全般的に未発達
・社会性は、対人関係の理解及び集団的行動がある程度可能
・意思疎通は、対人関係の理解及び集団的行動がある程度可能
・身体的健康は、特別の注意が必要
・基本的生活は、部分的介助と見守りが必要(一部介助)
【軽度】
・知的測定値は、知能指数が概ね50~75
・学習能力は、簡単な読み・書き・計算がほぼ可能
・作業能力は、単純な作業が可能
・社会性は、対人関係の理解及び集団的行動が概ね可能
・意思疎通は、日常世界和(意思疎通)が可能。また簡単な文字を通した一疎通が可能
・身体的健康は、健康であり特に注意を必要としない
・日常行動は、日常行動に支障はなく、ほとんど配慮を必要としない
・基本的生活は、身辺生活の処理が可能(ほぼ自立)
上記の4分類は、あくまでも「東京都」の場合になります。都道府県によって分類は違うので、居住地域の分類を調べることが必要です。
障害の原因(4つの要因)
知的障害の要因は多岐に渡っており、原因不明なものが多いと言われています。
知的障害を生じさせる要因として、AAIDD(米国知的・発達障害協会)は、
- 生物学的要因
- 社会的要因
- 行動的要因
- 教育的要因
の4つをあげています。
❶生物学的要因
染色体異常、遺伝子疾患、代謝疾患、分娩時の外傷、新生児期の疾患、栄養不足、髄膜脳炎など、明らかな病理作用によって脳の発達に支障が生じるもの。
❷社会的要因
貧困、母親の栄養不足、出産前ケアの未実施、適切な養育刺激の欠如など、社会や家族の状況によるもの。
❸行動的要因
親の薬物使用、親の喫煙や飲酒、養育拒否や虐待などの行動に関連しているもの。
❹教育的要因
支援の欠如、不適切な育児、教育が不十分であるなど、知的発達や適応スキルを促す状況が阻害されることによるもの。
「介護ラボ」の人気の記事【1~7位】
【ピアジェ、エリクソン、ハヴィガースト】発達段階と発達課題 vol.77
【比較】エンパワメントとストレングスとは?介護福祉職による支援方法 vol.45
【老年期】ハヴィガースト、エリクソン、ペック、レヴィンソン、バルテスの発達理論 vol.283
【介護福祉の基本理念・ポイント3つ】最も大切な理念とは? vol.8
【障害受容の5つの段階】障害者を取り巻く4つの障壁(バリア)vol.49
【発達理論】ピアジェ、エリクソン、バルテスの発達論を理解する vol.76
【アセスメントの3つの視点】情報の解釈、関連付け、統合化とは? vol.195
障害の特性に応じた支援
(1)発達段階と意思表示
知的障害のある人の物事の認知力を把握し、コミュニケーション方法を工夫する際には、児童の発達段階の状態像を参考にすると分かり易くなります。
スウェーデンで用いられている知能区分を参考に、知的障害のある人たちが自分の周りの世界をどのように認識し、自分の状態を表現しているのかを見てみます。
他の『支援』記事はこちらから・・・
【脊髄損傷の観察と支援】と4つの場面(食事・入浴・排泄・外出) vol.21
【脳性麻痺の観察と支援】と4つの場面(食事・入浴・排泄・外出)vol.24
【片麻痺の観察と支援】と4つの場面(食事・入浴・排泄・外出) vol.28
【視覚障害(先天性・中途)】実際の支援方法4つについて vol.30
【心臓機能障害の観察と支援】ペースメーカーの留意点5つ vol.36
【呼吸器機能障害の観察と支援】8つの異常な呼吸 vol.38
【障害受容の5つの段階】障害者を取り巻く4つの障壁(バリア)vol.49
【内部障害】狭心症・心筋梗塞・心不全の特性と支援 vol.96
【②知的障害】日常生活の大切さ・ライフステージに応じた支援 vol.98
【高齢者に多い骨粗鬆症とは?】原因や治療方法、日常生活への影響や支援について vol.216
1⃣ IQ10以下
- ◉認知・コミュニケーション力
(生後0か月~1歳半) - ・時間の理解は「現在」だけある
・「今いるところ」で、見る・聞く・触れるなどの感覚体験ができるもの(手が届く範囲にあるもの)だけを認識している。そのため目の前にあれば、それが好きか嫌いかを判断できるが、目の前に無いものを思い浮かべることが出来ない
・繰り返し経験していることであれば次に何が起こるかを予測することが出来る(例:テーブルに食器が並ぶとご飯の時間)
・写真の理解は難しく、色と模様の付いた綺麗な紙として認識されている
・話し言葉の理解は難しいが、身振りや何かの合図(特定の音声など)を使って、意思や感情を表示したり、自分の欲求を伝えたりすることが出来る
・体験すれば、それが心地よいか否かを表現できる
・発達年齢が0~6か月の場合、周囲の人に対して働きかけるということがわからないため、意図的なコミュニケーションはしない
・発達年齢が6か月を超えてくると、周囲の人に対して働きかけが出来るということが分かるので、意図的なコミュニケーションをし始める
例)相手に対して、~をしてもらう、~を止めてもらう
物やサイン後を使って自発的に周囲に対して働きかける
※サイン語→コミュニケーションの1つ。言葉の代わりに手指の動作によって医師や用事を伝えるもの
◉精神発達年齢(生後0か月~1歳半:IQ10以下に相当)
精神発達年齢・生後0か月~1歳半でIQ10以下に相当する幼児は、療育手帳では「最重度」に該当します。
知的障害がどんなに重くても、何らかの形で意思は表示されています。周囲の人が知的障害のある人の様子をよく観察して、その表現から意思を汲み取って支援を行っていくことが大切になります。
2⃣ IQ10~25くらい
- ◉認知・コミュニケーション力
(生後1歳半~4歳くらい) - ・以前体験した出来事を思い出すことが出来るようになり「今ここに無いもの」の存在が理解できる
・理解できるものは、自分で使ったり触ったりした経験のあるものに限られる
・量の多い少ない、大きい小さい、「1」の概念が分かるようになる
・昨日・今日・明日の概念や、曜日の名称の理解が始まる
・絵や写真が理解できるようになり、絵・写真・言葉・サイン語・身振り言語をコミュニケーションの中で使えることがわかるようになる
例)「行く」「仕事」「飲み物」などの理解ができる
・1日の流れを、絵や写真などの日課表で理解できるようになる
・よく晴れている場所では、方向の目印になるものが無くても道に迷わない
・位置や距離を表す言葉の理解が始まる
・色々な因果関係を理解できるようになり、経験に基づいて問題解決を試みるようになる
・2語文あるいは数語文の話し言葉が発達する
・既に起きたことを話す、明日の活動を聞く、色々なことがなぜ起こるのかをたずねる、など
🔹精神発達年齢(1歳半~4歳:IQ10~25くらいに相当)
精神発達年齢・生後1歳半~4歳でIQ10~25に相当する幼児は、療育手帳では「最重度から重度」に該当する状態になります。
この段階の幼児には、生活体験を豊かにして経験を増やしていくことがとても大切です。その際言葉でのやり取りに頼りすぎず、理解を補うようなものや動作を取り入れながら支援を行うのがよいとされています。
3⃣ IQ25~45くらい
- ◉認知・コミュニケーション力
(4~7歳くらい) - ・物の性質がよりわかるようになる。ただし理解できるものは実際に体験したもののみ
・お金の理解が始まり、それぞれの紙幣、硬貨で買えるものの範囲がわかる
・腕時計が何に使われるのかがわかる
・平日と休日の区別がつくようになる
・経験のある事なら2つの出来事を、原因と結果として結び付けられる。経験のない因果関係は実際に試さなければわからない
🔹精神発達年齢(4~7歳くらい:IQ25~45くらいに相当)
精神発達年齢・生後4~7歳でIQ10以下に相当する児童は、療育手帳では「中度」に該当します。
この段階は、前項の2⃣(IQ10~25くらい)の段階で出来るようになり始めたことが、より豊かに出来るようになっていきます。
物事の手順を言葉での説明だけでなく、絵や写真などを用いて目で見て分かり易くすることによって1人で行えるものが増えていきます。
4⃣ IQ45~75くらい
- ◉認知・コミュニケーション力
(7~11歳) - ・経験したことが無くても想像することによって、同じ性質を持つものを分類でき、属性の理解が進む(但し具体的なものに限られる)
・数の構成についての理解が進み、四則演算ができるようになる(掛け算・割り算は、足し算・引き算より難しい)
・お金は使えるが、計画的な使用は難しい
・象徴(シンボル)をさらに象徴したものの理解は難しい
例)お金は買えるものの象徴、預金はお金の象徴、預金を象徴するものが通帳であること、など
・ことわざや慣用句の意味の理解は難しい
・時計の見方が分かる。但し、何かをするのに必要な時間は判断しにくいので、計画的に時間を使うことは難しい
・空間と体系的に認識するようになり、経験したことのない空間(外国等)や、地図の存在が理解できる
・因果関係の一般的な理解ができ、「~なら~だろう」という推論が可能になる。原因の説明が出来るようになるが、具体的で単純なものに限られる
・書き言葉の理解が始まり、読み書きが可能になる
🔹精神発達年齢(7~11歳くらい:IQ45~70くらいに相当)
精神発達年齢・生後7~11歳でIQ45~70に相当する児童は、療育手帳では「中度から軽度」に該当します。
言語交流がかなり可能になりますが、言語の方が得意な人、文字でのやり取りの方が得意な人など、個人差があります。
全体的に、抽象度の高い表現は苦手です。
例えば、「もう少し早く」や「きちんと整えて」といった表現は、どのような状態が「もう少し」なのか、「きちんと」なのかがわかりにくいので、「時計の長い針が8になるまでに」とか、「〇〇は赤の箱の中に入れて」など、具体的に表現することが大切です。
今回はここまで。次回は後半の「【②知的障害】4つのライフステージに応じた支援方法 vol.98」について書いています。良かったら見に来てください!!
に参加しています。よかったら応援お願いします💛
Twitterのフォローお願いします🥺