こんにちは。介護ラボ・kanalogのカナです。 今回は・・・
片麻痺の観察・支援と、4つの場面について
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片麻痺とは
(1)片麻痺の医学的理解
片麻痺とは?
脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患によって、脳の神経が障害され、左右どちらかの半身に起こる運動麻痺のことです。中枢性麻痺ともいいます。
運動神経は延髄で交差するため、脳の障害部位とは左右反対側の半身麻痺となります。高次脳機能障害や失語症、感覚障害を伴うこともあります。片麻痺の程度はBrunnstrom Stageであらわすことができます。また直接、麻痺の程度を示す評価ではありませんが、ADL(日常生活動作)の評価としてFIM(機能的自立度評価法)という指標もあります。麻痺や残存機能の程度によって、必要なし支援は異なります。
🔸Brunnstrom Stage
片麻痺の運動機能回復の程度を示す。上肢・下肢・手指について評価し、それぞれstageⅠ~Ⅵに分けられる。
🔸FIM
日常生活動作の評価でセルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、社会的認知について全18項目を書く1~7点で評価する。最高126点、最低18点である。
(2)心理的理解
脊髄損傷と同様に、ある日突然発症し、健常者の生活から一転して片麻痺になります。
片麻痺になると数週間から半年程度のリハビリテーションを行い、自宅などの生活の場に帰ります。状態によっては、さらにリハビリテーテーションを継続したり、施設への入所を考えることもあります。
いずれにしても、発症前のように思うままに外出や仕事を行うことが困難になることが多いです。また再発の不安もあり、引きこもりがちになることもあります。
今まで築き上げてきた生活や価値観が崩れ、役割意識を失い、精神的に不安定になることもあります。このような心理状態にあっても、出来ることを見つけ、生きる喜びや楽しさを引き出す力が、介護職には求められています。
片麻痺の観察・支援と、4つの場面(食事・入浴・排泄・外出)
1⃣食事
私たちは片手で茶碗を持ち、もう片方の手で箸を使い食事をします。しかし片麻痺になると片手が使えず、今までの動作ができなくなります。また、麻痺が利き手側であった場合、利き手でない側で箸やフォークを持つことになり、さらに困難さが生じます。そのため利き手交換のような新たな方法の獲得が必要になる場合もあります。
片麻痺の場合、嚥下機能にも麻痺が生じることがあるため、誤嚥にも注意が必要です。また、一般的には高齢者が多いため、食事の際に義歯を使用することもあります。
🔸誤嚥とは?
食べ物や飲み物があやまって気管の方に入ってしまうこと
義歯の清潔を保つために―の手入れや食後の口腔ケアも、片麻痺では困難になります。また、片麻痺の利用者の中には、高次脳機能障害によって麻痺側のものが見えにくく、意図せず食事を残してしまう半側空間無視になる場合もあります。
🔹高次脳機能障害とは?
病気や事故などで脳に損傷を受け、その後遺症として生じた認知障害のために、日常生活や社会生活に支障がある状態。
片麻痺の場合には、片手が使えないだけでなく、嚥下機能や高次脳機能も障害されていることが考えられるため、事前のアセスメントが重要になります。
嚥下機能が障害されている場合にはまず、嚥下喉の過程(先行期⇒準備期⇒口腔期⇒咽頭期⇒食道期)に困難があるのかを確認します。そして言語聴覚士や管理栄養士、看護師などと連携し食形態をペースト食に変更したり、水分にとろみをつけることになります。嚥下機能障害を放置すると、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。
🔸誤嚥性肺炎とは?
誤嚥によって食べ物が肺に入りそれによって肺炎を引き起こすこと
高次脳機能障害がある場合には、どのような障害があるのかを確認し、半側空間無視であれば、食事をトレイに載せて食事全体を認識できるように工夫します。また、集中して食事ができるように静かな環境を整えることや集中が途切れた際に適切な声掛けを行うことが必要です。
片麻痺では高齢の人が多いため、義歯や残歯、口腔内を清潔に保つことにも多くの場合、支援が必要となります。また、出来るだけ残存機能を生かし自分で食べることができるように、柄の太いスプーンやフォーク、すくいやすいように工夫された皿などの自助具も活用します。
他の『誤嚥性肺炎』記事はこちらから・・・
【脳性麻痺の観察と支援】と4つの場面(食事・入浴・排泄・外出)vol.24
【廃用症候群】老化とは?高齢者の身体的特性について vol.168
2⃣入浴
麻痺がない側の上肢では洗いきれない部分(背中や麻痺がない側の上肢など)があるため、介助が必要となります。また、浴槽への出入りの際にはバランスを崩しやすく、転倒や溺水の可能性があります。身体を洗う際に座るシャワーチェアーは背もたれ付き、手すり付きなど種類があるので、利用者の状況に応じて最適なものを使います。陰部はできるだけ利用者自身で洗ってもらい、タオルをかけるなど羞恥心への配慮も必要です。
麻痺のレベルによって、支援内容が異なります。手すりなどにつかまって歩くことができる程度の麻痺であれば、手すりやバスボード、シャワーチェアーなどの環境を整えたうえで、見守りや一部介助似て入浴ができるでしょう。歩行が困難であったり、座位が保てない、大柄な体格であるなどの場合には、訪問入浴サービスを利用することも考えられます。また、デイサービス(通所介護)でも入浴支援がうけられますので、自宅での入浴が困難な場合には、それらのサービスの利用も検討します。
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3⃣排泄
麻痺がない側の上肢で手すりを握り、麻痺がない側の下肢に体重をかけることで立位や方向転換が可能であれば、トイレでの排泄が可能となります。片麻痺の程度によっては、立位を保持した状態で下衣の着脱が可能になります。立位での下衣の着脱が困難であれば、見守りや介助が必要となります。
片麻痺の利用者は高齢者が多く、複合的に疾患をかけている場合もあります。廃用症候群や筋力低下による失禁や高齢男性に多い前立腺肥大などによる排尿障害もあるため、高齢者特有の疾患についてもアセスメントが必要になります。また、利用者自身の障害に対する理解が十分でないために、立位や方向転換の際に転倒事故が発生することもあります。安全な排泄のために、利用者の理解力のアセスメントも必要となります。
トイレまで移動することができる場合には、出来るだけ自立した排泄が行えるよう手すりや扉などトイレ周辺の環境を整えます。立ち上がり時の下衣の上げ下ろしの時に手すりがあることで立位の安定性を高めることができます。また、扉を引き戸にすることで出入りが容易になります。
おむつを使用している場合には、便意や尿意を確認し、排泄後はできるだけ速やかに交換し陰部・臀部の清潔を保つように心がけます。
4⃣外出等
片麻痺の場合、杖や車いすを使用して移動するため、1人では長距離の移動が困難になります。杖歩行では、通常歩行と比べてゆっくりの動作になります。また、歩行に集中する事から、他者と接触し転倒に繋がることもあり、注意が必要です。外出の予定を立てる際には、余裕をもて計画するとよいでしょう。また、脊髄損傷の場合と同様に、食事や排せつの場所などを事前に確認しておくことで外出先での困難を回避することができます。
介助者への気遣いから、「トイレに行きたい」「水を飲みたい」などと言い出せない場合もありますので、失禁や脱水に注意し、なんでも伝えられるような関係を築くことが大切です。
脳血管障害による片麻痺は、肢体不自由だけではなく、高次脳機能障害や、血管性認知症、失語症などを併発していることがあります。外出は、自宅内での生活と比べて刺激が多くストレスから疲労しやすくなります。こまめに休憩を取り、ストレスや疲労を取り除き、安全に配慮した外出プランを立てる必要があります。
外出時は平常時よりもこまめに声掛けを行い、体調の変化に早めに気づき、対応することが求められます。外出後には、疲労から体調を崩しやすく、発熱する場合もありますので、外出後の観察も重要です。
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