こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「医療的ケア」の中から『高齢者及び障害児・者の経管栄養概論』について10回にわけて(消化器系の役割から経管栄養が必要な状態など…)書いていきます。今日は最終の10回目です!
経管栄養の実施に関する説明と同意
Contents
1.経管栄養を受ける利用者や家族の気持ちと対応・説明と同意
1⃣利用者の経管栄養に対する気持ち
2⃣家族の経過栄養に対する気持ち
3⃣利用者と家族の気持ちに沿った対応と留意点
4⃣経管栄養の実施に関する説明と同意
2.まとめ
1.経管栄養を受ける利用者や家族の気持ちと対応・説明と同意
1⃣利用者の経管栄養に対する気持ち
経管栄養を必要とする利用者は、「消化器官に何らかの病気や問題を抱えている」「嚥下の障害があるなどの理由によって口から食事を摂ることのできない」または、「必要とする栄養分を取ることのできない」人です。
利用者は、病気や障害に対して様々な不安や症状に伴う苦痛を抱えています。
また、食事は、生活する上での大きな楽しみです。その楽しみを奪われてしまい、生活意欲が低下している場合もあります。
経管栄養を受けている時は、四六時中繋がれているように感じたり、自分で食べる行為をしていないのに、げっぷが出たり、お腹が張ったりすることを受け入れられなかったり、不安に感じたりします。
特に鼻からチューブを挿入している利用者は、咽頭への違和感が常にあります。
身体からチューブが出ているという不快感・違和感、不安感、羞恥心を持っている場合も少なくありません。
チューブが抜けてしまうと栄養が摂れないのではないかという心配も常に抱えており、このようなことから、経管栄養に対して拒否的な気持ちを持っていることもあります。
介護福祉職は利用者の気持ちを受け止めながら、医療的行為だけにとらわれず、生きる喜びを損なわないようなケアが必要になります。
2⃣家族の経過栄養に対する気持ち
自分の家族が経管栄養を必要とする状態になってしまうことに対して、家族も利用者本人と同じように、様々な不安や負担を抱いています。
例えば・・・
- 医療処置という特別なことに対する不安
- 病状や障害の変化に対する不安
- 病状の見通しや家族の生活や仕事のこと
- 経済的なこと
など、様々な心配事や不安を抱えている可能性があります。
しかし、経管栄養によってそれまでに感じていた、栄養状態が悪化することに対する心配や、むせ込んで苦しい思いをすることが無くなるなど、病状が改善する可能性に対する希望を持っている場合や、家族として一緒に暮らせるようになった喜びを感じている場合も少なくありません。
3⃣利用者と家族の気持ちに沿った対応と留意点
利用者や家族には様々な価値観や人生観、家族の歴史があります。利用者と家族に接する時には、利用者の人生観や家族の意向を尊重しながら細心の注意を払って経管栄養を行う必要があります。
特に短時間で援助しなければならない場合などは、問題点やリスクを気にするあまり、利用者と家族の日々の生活の喜びや家族の良い面を見逃しがちです。
介護に対する不安感が強い家族には、利用者や家族が出来ていることに着目した会話を取り入れ、例えば、
- 「いつもご家族が綺麗にして下さるので気持ちがいいですね」
- 「栄養状態が良いと、よい排便状態が保てますね」
など、利用者や家族を認め、自己効力感が得られるような会話を心掛けます。
また、排便回数を毎回聞くことはやめ、カレンダーに記入してもらうなどの工夫をしましょう。
経管栄養は、特別なことをしているというイメージがありますが、
「これから食事にしましょう」
というような声掛けをするなど、普段と変わらない日常行為であるということをアピールすることによって、負担感を軽減します。
利用者や家族が、経管栄養の物品が不足することに対して不安を感じている場合は、物品を揃え準備することを伝え、不安を解消します。
また、万が一の用心として緊急連絡網の更新や確認を、利用者や家族と一緒に行うことで安心に繋がるので定期的に見直すことが必要です。
4⃣経管栄養の実施に関する説明と同意
経管栄養の実施にあたっては、退院時などに医師・看護職から実施方法や中止する場合の状態、緊急時の対応などについて説明をされています。
しかし、在宅では常に医師や看護職がそばに居るわけではなく、勝手も違うので利用者が退院直後である場合などは、大きな不安を持っています。
利用者や家族の経管栄養に対する思いや、利用者が家族や介護福祉職の負担感についてどのように感じているのか、生活のリズムの中で役割を誰がどのように分担しているのかを、会話の中から引き出し確認します。
また、衛生材料の保管や準備、季節の変化に対する対応方法など、医師や看護職からもう少し具体的な説明が必要だと感じた場合は、利用者や家族の了承のもと、医師や看護職に相談することで安心感が得られます。
利用者が経管栄養に同意しない場合もあります。「栄養を入れる」ことに捉われず、なぜそう思っているのか傾聴することも大切です。
相談を受けた介護福祉職は1人で抱え込まずに利用者や家族の了承を取った上で、利用者や家族が不安に感じていることや、同意できない気持ちを代弁する形で、医師や看護職に相談しましょう。
また、利用者の状態は日々変化しています。
例えば、
- 風邪を引く
- 酷く咳き込む
- 熱がある
- 倦怠感がある
など、実施前の段階から『いつもと違う』ことに気が付いた場合は、医師や看護職に相談し実施するかどうか判断を仰ぐとともに、本人の意向を尊重しながら、状況を説明し同意のうえで実施するようにしましょう。
経管栄養を実施する前には、利用者や家族に声掛けをします。
- 「これから実施してもいいですか?」
- 「お食事の時間ですよ」
- 「お食事にしますね」
などの声掛けを行いながら、利用者の同意を得ます。
例えば、前の経管栄養の時間が何らかの都合で変更になった場合など、いつもと「注入時間」「注入内容」が異なることがあります。利用者1人ひとりの日々の生活の出来事に配慮し、毎回の注入をその時々の生活のペースで行っている実感が持てるような援助が必要となります。
経管栄養の実施に際しては、
- これから始めるということ
- どのくらい時間が掛かるのか
- 見守っていること
などを説明します。
利用者や家族が安心して経管栄養を受けられるような配慮が必要です。
注入中は、適宜状態観察を行うとともに、不快に感じることはないかどうか声掛けを行い、利用者の反応や様子を観察します。
注入が終わったら、利用者に食事をしたという感覚を持ってもらうためにも、
「食事が終わりました」
と伝えましょう。
たとえ、意思表示ができない利用者だとしても、経管栄養はその人にとって食事であるということを念頭におき、無言で行うことのないように注意しましょう。
また、注入後しばらくは半座位を保つことが必要です。姿勢に対する苦痛、意識や呼吸状態の変化、腹部膨満感や腹痛・嘔気・嘔吐などが無いかを確認します。
声掛けに対し反応がない場合でも1つひとつ丁寧に説明すること、声を掛け、その表情やしぐさから利用者の思いを感じ取ることが重要です。
2.まとめ
今回は「高齢者及び障害児・者の経管栄養概論」の最終回として、利用者・家族の経管栄養に対する気持ちをまとめました。
利用者に経管栄養を行う立場ですが、「もし自分や家族が経管栄養だったら・・・」という視点に立った支援が大切です。苦痛や不安を実際に体験することは出来ませんが、痛みを共有し傾聴することは出来ます。
医師や看護職よりも身近な存在である介護福祉職として、利用者や家族の不安や痛みに寄り添い、いつもの違いに気付き、栄養を補給するだけの経管栄養ではなく、QOLを向上できるような支援を考えていくことが大切です。
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