こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「認知症の理解」の中から『認知症当事者の思い』について書いていきます。
認知症の人へのサポート:4つの視点
Contents
1.認知症の人の思い
1⃣診断前後の不安定な気持ち(アイデンティティの危機)
2⃣「自分らしさ」はなくならない
3⃣「自分らしさ」のサポート
4⃣認知症の人の気持ちに影響を与える5つの要因
2.まとめ (サポートの4つの視点)
1.認知症の人の思い
認知症の診断は、どの世代の人も受け入れがたいものです。認知症は「何もわからなくなる病気」だと思っている人も多く、自分がそのような存在になることが信じられないと思うでしょう。また、多くの人は、そう考えたら自分が認知症であることを否定したくなります。
1⃣診断前後の不安定な気持ち(アイデンティティの危機)
最近は、認知症の人でもテレビや講演で自らの体験を語れる人がおり、その存在により認知症でも「自分らしさ」は失われないと知られるようになってきています。
46歳で認知症と診断を受けたブライデンさん(Bryden,C.)の最初の著者のタイトルは、「私は誰になっていくの?ーアルツハイマー病者からみた世界」(原書タイトル:Who Will I Be When I Die?)でした。
彼女は講演の中で、「この題名は、認知症と診断された時に感じた恐怖をそのまま表しています。これからどんなことが待ち受けているのだろうか。末期の段階ではどんな風になっているのだろうか」と話しています。
佐野光孝さんは、「認知症ということで働けない、一家の主としては収入を得られない、そういうことが一番悔しかった」と話しています。認知症の診断により、将来の不安や、自分が大切にしてきたことを喪失していくことは『アイデンティティの危機』に繋がっていくといいます。
自身の喪失とそれに伴う不安は、自分らしさを見失ってしまうことにも繋がりかねません。
他の『アイデンティティ』記事はこちらから・・・
【❷障害者家族の支援】スティグマと障害受容についての4つの提言 vol.278
2⃣「自分らしさ」はなくならない
ブライデンさんが(Bryden,C.)、次に書いたの著者のタイトルは、「私は私になっていくー認知症とダンスを」 (原書タイトル:Dancing with Dementia:My story of Living Positively with Dementia)でした。
彼女は認知症の進行に伴い、以前出来ていたことが、これまでのように出来なくなっても、真の自分は失われないと気付いたといいます。
しかし、介護者中心に関わろうとすれば、認知症の人の能力や自尊心を失ってしまうと述べています。認知症の人をサポートするということは、本人の出来るところまで手伝ってしまうことではなく、介護者がやりたいことをやってあげることでもありません。
重要なことは、認知症の人の「自分らしさ」は無くならないのだと信じて、その人が自分らしさを本人自身で認識できるように助けていくことです。
そのためには、認知症により、「その人の苦手になること」や「体験していること」を知り、何を助け、何を見守るべきかを知ることが重要になります。
3⃣「自分らしさ」のサポート
症状では「中核症状」という共通の症状である記憶障害・認知障害などと、「BPSD(認知症の行動・心理症状)」である、感情のコントロールが上手くいかない、暴力的な言動行動、妄想などに分けられます。
記憶が不確かになったり、今まで出来たことが出来なくなると、人は誰でも不安になります。
今まで出来ていたことが出来なくなることが、認知症によりたびたび起こるかもしれない中核症状だとすれば、もっと不安になることでしょう。
そこに、認知症の人の意思を無視するような対応がなされたら怒りすら覚えるかもしれません。BPSDと呼ばれる症状の殆どは、中核症状が上手く補われれば、出ることのない症状です。
また、BPSDの出現は、本人のニーズが満たされていないことがあるのかもしれないと考えて対応していくことが重要です。
中核症状によりうまくいかないことが続けば、自信を喪失しそれに伴う不安から、暴力的な行動になる人もいれば、抑うつ的な気分になり元気のない状態になる人もいるのです。全ての人にBPSDの症状があるとは限りません。
- 中核症状により出来ないことがあっても
- 認知症の人の気持ちは色々です
でも、もし何らかのBPSDが表れたら、介護者たちは、認知症の人の気持ちや満たされていないニーズがあるのではないかと考えなければなりません。
そして、本人の気持ちを左右するのは中核症状ばかりではありません。
- 体調や薬の影響
- 環境
- 天気
- 介護のされ方
- 性格
- 生活歴
など、様々なことが影響を与えます。
認知症の人が、自分らしさ、自信、心理的ニーズが充実した状態、または認知症の進行した状態では、本人が快適であればBPSDの出現は少なくなることが考えられます。
BPSDとしてあらわれている症状を減らそうと考えるのではなく、原因である、
❶中核症状を補い、
❷認知症の人の気持ちを考え、
❸影響を与える要因を探索し、
❹「自分らしさ」の回復や心理的ニーズが充実された状態をサポートする
ことが必要なのです。
4⃣認知症の人の気持ちに影響を与える5つの要因
❶【体調や薬の影響】
・便秘
・不眠
・脱水
・薬の副作用などで混乱する、など
❷【環境の影響】
・壁とトイレの扉が同職でトイレが見つけにくい
・テレビとBGMが両方でうるさい
・眩しい、など
❸【天気の影響】
・昼間なのに雨で薄暗く夕方に感じる
・気圧の変化で頭が痛い、など
❹【介護の影響】
・出来ることまで手伝われて、どこまでしたのか、出来たのかどうかが分からなくなる、など
❺【生活歴の影響】
・慣れていない方法で実施されて戸惑う
・子どものように頭を撫でられ情けなく感じる、など
2.まとめ (サポートの4つの視点)
サポートの視点として重要になるのは、以下の4つの視点です。
- 中核症状の特徴(認知症による体験)を知り、それを補うサポートを考えられるようになる
- 中核症状による認知症の人の気持ちを知り、気持ちに沿ったサポートを考えられるようになる
- 認知症の人の気持ちに影響を与える要因を知り、悪い影響は極力取り除けるようになる
- 「自分らしさ」や自信の回復、あるいは心理的ニーズの充実・快適さを重視したサポートやケアを提供する
上記1~4を行うためにまず、認知症の人の体験していることを知ることが大切になります。
他の『認知症』記事はこちらから・・・
【認知症とは何か?】定義と診断基準、認知症状の全体像について vol.65
【①認知症の病理】脳の構造と症状との関係 vol.69
認知症の人の心理【不安・喪失感を抱く理由】vol.91
【パーソンセンタードケアとは?】5つの葉と3つのステップ vol.92
【①BPSDの定義】4つの分類と100以上の行動症状 vol.199
【②BPSD】5つの介入困難な背景要因と7つの介入可能な背景要因 vol.201
【③BPSD】11個の主要なBPSD・個別の背景因子について vol.202
【①認知症の中核症状とは?】記憶障害・見当識障害・遂行機能障害について vol.211
【③認知症の中核症状:失語・失行・失認】病識保持事例と病識低下事例の比較 vol.213
【認知症ケアの現状】基本的人権の理解と3つのケアの視点 vol.394
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