こんにちは 介護ラボ・カナログのカナです。今回は「認知症の理解」から、『治療可能な5つの認知症』について書いていきます。
それぞれの病態と疾患について
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治療可能な5つの認知症
認知症には「症状が継続する(進行性)」という条件が付いているので、治療で軽快するのは認知症ではないともいえます。治療可能な認知症とは、認知機能低下が現れて短期間なら治療で回復する疾患のことです。
しかしこれらの疾患でも、長期間経過してしまうと治療しても元には戻らないものが多くなります。
下記の5つは、認知症症状をあらわす疾患として捉え、アルツハイマー型認知症のような病変が徐々に進行する原因疾患とは区別して考えることが必要です。
1⃣正常圧水頭症
脳は大脳の中にある脳側室という空間(そこに水が溜まっている)の中で、絶えず脳脊髄液を産生しています。この脳脊髄液は橋まで流れて脳の外に出ると、脳の周囲を上方に流れ大脳の上方正中部にあるクモ膜顆粒で吸収されます。この流れがブロックされると脳脊髄液が脳室や脳の周囲に溜まり、「正常圧水頭症」となります。
※脳脊髄液:1日約500ml量産され、同量吸収されています。
脳脊髄液が溜まると、大脳の働きが悪くなり、
❶ぼーっとするタイプの認知機能の低下
❷すり足で小刻みに歩く歩行障害
❸遅れた出現することが多い尿失禁
などの症状が出ます。
上記の3つが、正常圧水頭症の症状になります。
特徴的な画像所見を示すので、CTやMRIは診断に有用です。
腰痛部に針を刺して脳脊髄液を試験的に30ml抜いて症状が軽減すれば、余分な脳脊髄液を腹腔に逃す「シャント手術」が行われ、歩行障害などが軽減されます。
但し、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に正常圧水頭症が合併していることも多く、手術をしても認知機能障害は進行します。よって必ずしも治るとは言えません。
また90歳以上の高齢だと手術の適応にならないと判断される場合もあります。
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2⃣慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、頭部を打撲したあと数週間以上経過してから、
- 「ぼーっとする」
- 「ふらつく」
などの症状が現れます。
そして、半身麻痺を伴う傾向があります。認知症の症状を示す事例よりも低活動性せん妄の症状を示す事例が多く、経過も数週間と通常の認知症よりも短期間で症状が進行します。なるべく早くCTやMRIで発見し血液を抜く手術を行うことで症状が軽減します。
3⃣脳腫瘍(髄膜腫)
まれに髄膜腫という脳腫瘍が前頭葉などにできると、長時間かけて認知症の症状が現れます。
髄膜腫は良性のことが多く、手術で軽快します。がんの脳転移の場合も、認知症の症状が出る場合がありますが、進行が早く意識障害を伴いやすい等、通常の認知症とは症状が異なります。
4⃣甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症が継続すると、認知機能が低下します。
甲状腺ホルモン剤の投与で回復するので、活動性や自発性が低下している事例では見逃さないように注意する必要があります。
血液検査で発見できますが、血液検査で甲状腺機能が低下していても、通常は認知機能の低下を示しません。
5⃣ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12の欠乏では、悪性貧血や手足のしびれ、運動失調(上手な運動が出来ない)などと共に認知機能低下が現れます。胃の全摘手術を受けると長期間(5年以上)経ってからビタミンB12欠乏の症状が現れやすいですが、治療で症状が軽快します。
ビタミンB12欠乏症になりやすい人は、
- 高齢者
- 菜食主義者(ベジタリアン)
- 悪性貧血がある方
- 胃腸の手術歴がある方
などです。
このビタミンB12欠乏症は、ビタミンを摂取することで改善されます。
まとめ
臨床現場では「治る認知症」で遭遇する頻度が高いのは、
- うつ病に伴う記憶障害
- 長時間作用型の睡眠薬の処方による認知機能低下
- その他、抗不安薬など認知機能に悪影響する薬剤の服用
です。
それぞれの対応として、
- うつ病に伴う記憶障害 ➡ 抗うつ薬や生活指導で改善する
- 長時間作用型の睡眠薬の処方による認知機能低下 ➡ 短時間作用型の睡眠薬への変更で正常化する
- その他、抗不安薬など認知機能に悪影響する薬剤 ➡ 中止する
これらの対応を取ることで、改善(軽快)することがあります。
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