こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「医療的ケア」の中から『喀痰吸引により生じる危険』について書いていきます。
危険防止のための医師・看護職との連携体制
Contents
1.喀痰吸引により生じる危険、事後の安全確認
1⃣喀痰吸引により生じる危険
2⃣ヒヤリハット・アクシデントの実際と報告
3⃣ヒヤリハット・アクシデント報告書の書き方
4⃣危険防止のための医師・看護職との連携体制
1.喀痰吸引により生じる危険、事後の安全確認
1⃣喀痰吸引により生じる危険
喀痰吸引とは、吸引器に繋いだ吸引チューブを口や鼻、気管カニューレから挿入して痰を吸い出す事です。
この一連の行為で十分留意しなければ、利用者のからだに危険が生じることがあります。
また、十分留意していても、予期せぬトラブルが生じることがあります。
利用者に起こりうる危険な状態としては、
- 呼吸状態が悪くなる
- 顔色が悪くなる
- 嘔吐する
- 出血する
などがあります。また、
- 呼吸器が正しく作動しない
- 痰の色がいつもと異なる
- 痰がかたくて吸引が困難になる
などといったトラブルも考えられます。
また、人工呼吸器を装着して口鼻マスクを使用している利用者の口腔内・鼻腔内の吸引や、気管切開をしている利用者の気管カニューレ内部までの吸引の場合には、このほかに、
- 人工呼吸器の機器や回路など付属品のトラブル
- 口鼻マスクの装着の不具合
- 装着面の皮膚のトラブル
- 気管カニューレ挿入部分のトラブル
などが考えられます。
吸引器や人工呼吸器の回路などの付属品のトラブルについては、医師や看護職に連絡しましょう。
呼吸状態や顔色が悪くなったり、嘔吐がみられたり、痰の色が赤く出血が疑われる場合には、吸引を直ちに中止して医師や看護職に連絡します。
呼吸状態や顔色が悪くなった状態とは、吸引などにより体内の酸素が不足している「低酸素状態」になっている可能性や、食後の吸引による刺激で嘔吐した嘔吐物や痰が気管に入り込み、気管を塞いでいる「気道閉塞」の可能性があります。
とくに、呼吸状態や顔色が悪い、嘔吐がみられる、出血が多い時には、医師・看護職による迅速な対応が必要です。
また、介護福祉職による喀痰吸引の場合は、利用者の要望や独自判断によって、医師の指示を超えた範囲や方法で行ってはなりません。
医師の指示に従って実施することが介護福祉職自身を守ることにも繋がります。
2⃣ヒヤリハット・アクシデントの実際と報告
ヒヤリハット報告とは、”ヒヤリ”としたり、”ハッ”とした段階のものについて記入し、一方のアクシデント報告は、ヒヤリハットに気付かなかったり、適切な処置が行われなかったりして問題が生じた場合に報告するものです。
いつもと違う変化・異常が、利用者または使用する機器に生じた際に、「ヒヤリハット・アクシデント」に相当する出来事に気付かずに見過ごしてしまうことのないよう、利用者の状態や機器等の状況が「いつもと違う」と気付いた時点で、迅速に医師や看護職に連絡・報告をして、医師・看護職と共に確認することが必要です。
「ヒヤリハット・アクシデント」に相当する出来事であるのか、それが「ヒヤリハット」であるのか、「アクシデント」であるのかは、医師・看護職とともに判断することが適切です。
喀痰吸引は、どの段階の手順が欠けてしまっても、利用者の身体に危険をもたらす結果に繋がりかねません。吸引の手順が守れなかったことも、ヒヤリハットに相当する出来事になることを知っておきましょう。
利用者の異常や症状が起きた後、状態が回復したり安定したりした場合は、「ヒヤリハット報告」をします。状態が回復せずに悪化した場合は、「アクシデント報告」をします。
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3⃣ヒヤリハット・アクシデント報告書の書き方
ヒヤリハット・アクシデント報告は、それぞれの施設又は事業所などで、その報告様式を決めておく必要があります。
ヒヤリハット・アクシデント報告書には、
- 施設名または事業所名
- 報告者氏名
- 管理責任者氏名
- 連携看護職員氏名
- 発生日時
- 発生場所
- 発見者
- 行為の種類(どこの部位からの吸引かなど)
- 発生状況
- 対応
- 背景
- 発生要因(吸引手技が手順通りに出来なかった理由など)
などを記載します。
吸引に伴うヒヤリハット・アクシデントの「考えられる原因」として、吸引をした人自身の手技や手順の誤りなどがあります。その他、器具の点検段階でのトラブルや、周辺の環境変化に伴う要因、医師・看護職との連携がうまくいっていなかったというようなことも考えられます。
これらの原因が複数絡み合って発生してしまう出来事もあるでしょう。
同じようなヒヤリハット・アクシデントを繰り返さないためには、なぜそのようなことが起きたのかを具体的に検討して今後に生かす必要があります。そのためヒヤリハット・アクシデント報告書には状況を詳細に記録します。
ヒヤリハット・アクシデント報告書は、吸引に関わる全ての人、特に医師・看護職と共有して、人員的なミスはもちろん、物品管理や吸引をするための医師・看護職との連携体制などに不備がなかったかどうかなど、様々な視点から再発予防策を検討することが大切です。
再発予防策は、吸引を実施する物のみで気をつけていくことではなく、施設及び事業所内の管理体制や医師・看護職との連携体制にもかかわることですので、吸引に関わる全ての人で共有することが必要です。
4⃣危険防止のための医師・看護職との連携体制
前項の通り、吸引に伴う危険は、吸引を実施する人の個人的な主義・手段の誤りだけで起こるものではありません。
実際に吸引する人と、日常的な吸引器具の清潔管理をする人が異なるかもしれませんし、どの段階での誤りや不備でも危険に繋がる可能性があります。
危険を防止するには、日常的に利用者の状態や疑問点、問題点、利用者・家族の気持ちへの対応など、些細なことと思われるような事柄についても医師・看護職に連絡をして相談の上共有しておくことが大切です。
また、連絡・相談を受けた医師・看護職が確認判断をした後は、吸引に関する留意点が見直されたり追加されたりするかもしれません。新たな留意点を伝えてもらうようにして共有しておくことが必要です。
このように、危険を未然に防ぐには、常に医師・看護職との情報の交換がきちんとされるような組織的な体制を整えておく必要があります。
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