介護の基本Ⅰ・Ⅱ

【❹リスクマネジメント】事故直後の対応と5つの事故原因の分析 vol.317

2021-04-26

こんにちは(^▽^)/ 介護ラボのkanaです。今日は「介護の基本」の中から『リスクマネジメント』について5回に分けて書いていきます。今日は4回目になります!!

安全管理、転倒・転落の予防

Contents

1.事故防止のための対策
 1⃣事故直後の対応
 2⃣事故原因の分析と対策
 ●5つの事故原因の分析
 3⃣リスクマネジメントの組織体制
 4⃣生活の場の安全管理
  (1)日常生活の中のリスクと対策
  ◉転倒・転落の予防
  ◉食事の誤嚥予防
  ◉誤薬の予防
  ◉非常災害時の対策

1.事故防止のための対策

1⃣事故直後の対応

事故直後の対応

事故防止に努めていても完全に事故の発生を防止することはできません。事故の発生後は、生命、身体の安全の確保を優先して対処する必要があります。

緊急対応の訓練を日頃から行うとともに、速やかに医師と利用者の家族に連絡をします。また、事故原因を明らかにできるように、事故当時の状況を速やかに記録していきます。

事故後に利用者や家族に対する事業者側の説明や対応が不十分・不適切なために、責任を追及されることもあります。サービス提供側は事故で不安を感じている利用者や家族の気持ちの理解に努めながら、事故に至るまでの経緯や事故の内容等について、サービス提供側が認識している事実を隠すことなく十分に説明することが必要です。

事前にサービス担当者会議等を通じて、利用者や家族に対して介護サービスの目標や内容とその根拠が説明されていれば、利用者側の理解も得やすくなります。

2⃣事故原因の分析と対策

事故原因の分析と対策

事故原因を分析して事故のパターンを把握するために、事故に関するデータを出来る限り収集することが必要です。そのためには転倒や骨折などの事故だけでなく、転倒の危険発生に留まった事故であるヒヤリハットについても、事業所内で積極的にデータを収集し、事故の報告書を作成します。

収集した事故のデータをもとに事故原因を多角的に分析し、利用者が受けた損害の回復を図ることが必要です。これらの原因に応じて、多面的に事故防止対策を立案して、利用者・家族に説明して同意をもらい実施します。

ヒヤリハット・アクシデント報告

他の『ヒヤリハット・アクシデント報告』記事はこちらから・・・
【医療的ケア】安全に喀痰吸引や経管栄養を提供する4つの方法 vol.48

5つの事故原因の分析

❶利用者自身の要因で事故が起きたか。
❷その要因をアセスメントで把握して、ケアマネジメントにおいて適切に対応していたか。
❸事故にかかわった職員の知識・経験、心身の状況等に問題はなかったか。
❹福祉用具や建物の設備等の機能、利用者に対するそれらの適合性に問題はなかったか。
❺職場での教育指導や勤務体制等に問題はなかったか。

3⃣リスクマネジメントの組織体制

記録の整備

事故発生後の利用者・家族への説明や、市町村への連絡、事故原因の分析作業は、各事業所の規模や体制に応じて部署をあらかじめ決定し、サービス提供に関する記録を常に整備しておくことが必要です。

厚生労働省が定める事業所の運営基準では、事故が発生した場合は、家族だけでなく「市町村」にも連絡することを求めています。これが再アセスメントのきっかけになることもあります。

組織としてサービスの継続性を保つための環境を整備することは必須事項です。

サービス提供事業所の職員が、利用者の生活を1人で継続的に支援していくことはできません。その日の業務が終わると、他の職員に利用者の支援業務を引き継ぎます。たとえば居宅サービスでも、1つのサービスだけでは利用者の生活を支えられないため、他のサービスと組み合わせて提供します。

このように職員間、事業所間でサービスを引き継ぐ連続性が保たれていることが、利用者を継続的に支援し続けることに繋がるとともに、職員が安心して働くためにも重要になります。

サービスが連続して引き継がれていくためには、各職員の果たすべき役割を明確にしておく必要があります。役割分担が不明確だと、職員は利用者の支援のために1人で多くの仕事を請け負っているように思ってしまうことがあります。1日の業務が明確になってくると、役割分担がはっきりしてくるので、業務手順や日程表、業務分担業があって、それらが実態に合わせて機能していることが求められます。

日々の業務はトラブルなどで予定通りに進まず、他の職員から支援が引き継げないこともあります。そんな中でも他の職員から支援が受けられる仕組みが事前にあると、負担が少なくてすみます。

4⃣生活の場の安全管理

(1)日常生活の中のリスクと対策
日常生活の中のリスク

介護施設などでは、ADLが不安定な高齢者や認知症高齢者が多いです。そのため、転倒事故の発生率は高く、転倒によって打撲や切り傷、骨折、脳の損傷といった大きなダメージを受ける場合があります。

転倒を防ぐには、転倒しやすい場所を把握することや、入所生活に変化があったときなどにしっかりとアセスメントをしておくことが重要です。

◉転倒・転落の予防
転落事故が多い場所

ベッドと車いすの間の移乗時に転落事故が起こることが多いです。利用者がバランスを崩して転倒したり、車いすのブレーキが不十分であったために車いすごと転倒するケースや、介護者がバランスを崩して足を滑らせたために、利用者が大腿骨を骨折したというようなケースもあります。

事故原因としては、

  • 2人で介助しなければ難しい利用者の介助を1人で行っていたり、
  • 車いすの基本操作の確認不足であったり、
  • 自力歩行可能な利用者の見守りや予測が不十分であったり、
  • 環境面では動線の確認が出来ていなかったり

することなどが挙げられます。

生活環境を整える

利用者は環境の変化があると落ち着かず、そわそわして行動しようとすることが多くみられ、転倒に繋がることがあります。利用者が落ち着いて生活できるように声掛けを行い、生活環境を整えることが大切です。

利用者に合っていない「杖」や「歩行器」「車いす」など、福祉用具によって事故の発生リスクは高くなり、本来とは異なる適切でない使用方法によって大きな事故となることもあります。

ベッドと車いすの配置が利用者の状態に合っていない場合の転落や、フロアやトイレ、居室などに利用者が移動する動線上に障害物があった場合に転倒事故の原因になってしまいます。

通路に障害物や歩行を妨げる突起物、水漏れがないかなど定期的な確認を行い、バリアフリー化とその人に合わせた家具の配置などに気を配ることが必要です。

◉食事の誤嚥予防
食事の環境

食事をおいしく食べらえることは生活上の楽しみとなり、健康にも大きく影響します。利用者の好みを確認し、心身の状況に合わせて食べたいという意欲が持てるよう、楽しく、安全に食べられる環境作りが求められます。

嚥下機能が低下して、食べ物や飲み物などを正常に飲み込むことが出来ずに喉に詰まらせて窒息したり、食べ物の残りかすなどが気管や肺に入って呼吸を阻害したり、肺炎を引き起こしたりする「誤嚥性肺炎」などを予防することが必要です。

事故を防ぐ基本としては、日常の口腔ケアと利用者本人の嚥下能力を把握したうえで、食事の形状を考慮し、飲食時の見守りを十分に行うことです。そして「力時の際の見守り」に力を注ぐことが重要です。

食事の姿勢

例えば、食事をとる際の姿勢は良肢位を保持することで違いが出ます。椅子やテーブルの高さ、座位保持機能が低下している場合はクッションなどの利用で姿勢保持を図っているかどうか、食事時間が長時間にならないように気を配っているかどうか、誤嚥事故を防ぐことが出来る確率がかなり高まります。

誤嚥事故を防ぐために食事の形状を、

  • ミキサー食
  • ムース状やゼリー状にしたもの
  • とろみをつけたもの

など、気を配るケースはよく見られます。

そして、食後の口腔ケアが不十分だと、口の中の雑菌が唾液と共に肺に入り「誤嚥性肺炎」の発生に繋がることもあります。また、認知症が重度になると、口の中に食べ物を含んだままの状態であることが認知できなくなり、喉に詰まらせるケースもあります。

傾眠状態(うとうとしている状態)での食事介助は危険であるため、しっかりと覚醒した状態で介助を行うことが重要です。

◉誤薬の予防
誤薬の予防

服薬に関する事故は利用者にとって身体的に大きな影響があり、万が一の場合は命にかかわる危険性があります。知識を深め、注意点等を理解して服薬介助をしなければなりません。どのような薬を何のために、どの位飲んでいるか、決められた時間と用量を守って飲むことが出来ているかという情報を得ることが大切です。

しっかりとした指示内容の確認や情報共有が行われていなければ、誤薬等の服薬事故のリスクが高くなってしまいます。服薬管理では、利用者にどのような疾患があり、どの薬を飲んでいるか、常に残薬の種類や量などを把握し、少なくなってきた場合は通院予定を立て、家族と通院する場合は家族に連絡するといったことにも留意することが必要です。

日々の業務は多忙で時間がなく落ち着いて利用者に向き合う時間が少ないのが現状ですが、そのような状況になれて勤務していると、正確性に欠けて大きな事故に繋がってしまいます。

このような場合はダブルチェックをすることでミスを防ぐことが出来ます。介護施設はミスをした本人を責め立てるのではなく、なぜミスが起こってしまったのか、どのようにすればミスが防げたのかを検討し、服薬ミスを防止する環境や体制、マニュアルを整える必要があります。

高齢者の1人暮らしの場合、適切に服薬が出来ていないケースがすくなくありません。服薬できていない状況が続く場合は、服薬管理をしてもらう必要がありますが、ホームヘルパーは見守ることはできますが、直接身体に触れ、口を開け、水を飲ませて錠剤を飲ませるという行為はできません。

毎日適切に服薬できる方法を工夫したり、声掛けを行ってサポートすることも、介護福祉職の仕事の1つです。

◉非常災害時の対策
非常災害時の対策

サービスを提供する側では、非常災害に関する具体的計画を元に、消防、地震や風水害への対応をはからなければなりません。

防火措置としては、消防業務の実施に関する防火管理者を配置し、消防計画を策定します。消火器やスプリンクラー、煙感知器、熱感知器の設備を整えることはもちろん、避難訓練の定期的な実施が必要です。

避難経路や避難誘導、早期の緊急通報の訓練を行い利用者の安全を図ります。防火対策以外にも、地震や風水害に対する防災マニュアルを整え、食料等の備蓄をしておくことも必要です。

同じことは在宅で生活している利用者にも言えることです。施設では地域の諸機関との連絡が確保されているので、火災や数水害に対する安全対策は、災害だけでなく生活上の安全についても施設ほど整備されていはいません。

いずれの場合においても、高齢の利用者が適切な判断が出来るように、慎重に誘導やアドバイスをする必要があります。特に在宅生活を送る利用者は、地域のコミュニティや支援機関からの情報提供・支援に限られ、その情報や支援というものはどうしても支援者からの一方通行的なものに陥りがちで、適切な判断ができにくい状況に置かれているといえます。

サービス提供の際は、利用者の人権への注意深い配慮と介護サービスの全てにきめ細かい配慮が必要です。高齢の利用者とサービス提供側は対等な関係を保ち、利用者が必要とする情報を十分かつ丁寧に説明を行い、しっかりと納得を得ることによって、安全と安心のある生活の質を保証しなければなりません。

在宅生活の安全性を担保するためには、

  • 関りを持つ家族
  • 親族
  • 地域包括支援センターの担当者
  • 担当する居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネ)
  • 民生委員
  • 訪問介護員

など、利用者にとって一定のコミュニティを作り周囲の支援者の役割が重要となります。

支援者との適切な関係構築

上記の支援者の関わり方の密度や能力、経験によって利用者の身体的な安全に留まらず、生活の質を保証するための生活の安全が大きく左右されることになるため適切な関係構築が大切となります。

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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
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