こんにちは💚 介護ラボのkanaです。『各発達段階』について前々回、前回、今回の3回に分けて書いていきます。
ピアジェの結果論的判断・動機論的判断
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道徳・向社会的行動
社会の中で生活をするためにはルール・規範を守ることが求められ、それを判断する認知的能力も求められます。
例えば、次のような事例を読んで、どちらの子どもが悪いことをしたと考えるでしょうか。またその理由は何でしょうか??
- A:配膳のお手伝いをしましたが、運んできた12個のガラスのコップをうっかり落として割ってしまいました。
- B:入ってはいけないと言われていた理科実験室に入って、置いてあった1個のガラスのコップをうっかり落として割ってしまいました。
ピアジェが上記のような質問を子どもにした結果、4・5歳頃の子どもは損害の大きさに悪さの理由を見いだし、Aのような場合が悪い行為だと判断しやすかったのに対して(結果論的判断)、9・10歳頃になると、そもそもの行動の同期に着目し、Bのような場合が悪い行為だと判断しやすくなりました(動機論的判断)。
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1⃣コールバーグの道徳的判断の発達理論
コールバーグ(Kolberg,L.)は、道徳に対する判断が発達していく過程を示しました。
コールバーグの理論は、年齢による認知発達に応じて、必要な社会的経験をすることによって、必要な価値観や知識を身に付けていくことで道徳判断が発達するという考え方であり、道徳教育に対して大きな影響を与えました。
◉コールバーグが用いたモラル・ジレンマ課題
コールバーグは、モラル・ジレンマ課題という2つの正義や道徳を含んだ話を、各年代の子ども~青年に示し、その主人公はどうするべきか、どうしてそう思うのかについて、説明を求めその内容を分析しました。
- ◉コールバーグが用いたモラル・ジレンマ課題
- ヨーロッパのある国で、ある女性が特別な種類の癌にかかって死にそうになっています。医者によれば、この人を救うことができる薬が1つだけあります。
その薬は、同じ町に住んでいる薬剤師が最近発見したラジウムの一種です。その薬をつくるのにはお金がかかるため、薬の値段を製造するための費用の10倍の値段を薬剤師は付けています。
つまり、薬剤師はそのラジウムに200ドル使い、わずか1回分の薬に2000ドルの値段を付けているのです。
病気の女性の夫であるハインツは、あらゆる知人からお金を借りましたが、薬の値段の半分の1000ドルしか集められませんでした。彼は薬剤師に自分の妻が死にかけていることを話し値引きしてくれるよう、あるいは後払いをさせてくれるように頼みました。
けれども薬剤師は、「それは出来ない。私がその薬を発見したんだし、それでお金を稼ぐつもりだからね」と言います。
ハインツは思い詰めてしまい、妻のために薬を盗もうと、その男の薬局に押し入ることを考えています。
※出典:北村世都「社会性の発達」内藤佳津雄・北村世都・市川優一郎編『発達と学習』弘文堂より
コールバーグの理論では、道徳性の判断には3水準6段階の発達段階があり、その社会における慣習に基づく判断ができる「慣習的水準」を中心として、その場の損得や利害関係に基づいて判断をする「前慣習的水準」、社会の現在の規範を超えて社会のあり方や普遍的な原理を追求できる「脱慣習的水準」に大きく分類し、それぞれの水準を2つの段階に分けました。
- ◉コールバーグによる道徳判断の発達段階(3水準6段階)
- 【水準1】前慣習的水準
・段階1:罰と服従志向
罰を回避し、権威に服従する
・段階2:道具主義的相対主義者志向
取引や有効性の観点から判断する
【水準2】慣習的水準
・段階3:対人関係の調和あるいは「良い子」志向
多数意見や承認されることを重視した判断をする
・段階4:「法と秩序」志向
規則や社会的秩序を守ることを重視する
【水準3】脱慣習的水準
・段階5:社会契約的遵法主義志向
個人の権利や社会全体の価値に従って合意することを重視する
・段階6:普遍的な倫理的な原理志向
人間の権利や平等性などの倫理に従って判断する
- 「前慣習的水準」では、自分自身への罰や利益に基づく判断であり、自己中心的な判断を含んだものになっています。
- 「慣習的水準」になると、他者の承認を求める良い子志向や、規則や、秩序を守る義務感がみられるようになり、社会や集団にある規範を守るべきだという判断が形成されます。
- 「脱慣習的水準」は、現在の社会・集団における規則を超えて、より普遍的な原則に基づく判断ができ、新たな規範をつくることもできる段階です。この6段階は人間の良心や尊厳などの普遍的な倫理に基づく判断ができる段階とされていますが、達しにくい段階であると言われています。
アメリカでも日本でもコールバーグの理論に沿って子どもや青年の道徳判断の発達を調べる研究が行われてきました。文化による差もあり、各段階に何歳で到達するのかは明確ではありませんでしたが、年齢とともに高い段階の判断をする割合が増えていくという結果が示されています。
2⃣ギリガンの道徳的判断の発達
ギリガン(Giligan,C.)は、コールバーグが題材としている道徳は「正義や公平」に偏っており、「配慮や責任」を志向する道徳性もあるということを示しました。
- ◉ギリガンが用いたモラル・ジレンマ課題
- 厳しい寒さを凌ぐため、1匹のヤマアラシがモグラの家族に、冬の間だけ一緒に洞穴の中に入らせて欲しいとお願いしました。
モグラ達はヤマアラシのお願いを聞き入れました。けれどもその洞穴はとても狭かったので、ヤマアラシが洞穴の中を動き回るたびに、モグラ達はヤマアラシの針に引っ掻かれてしまう事になったのです。
ついにモグラ達はヤマアラシに洞穴から出ていってほしいとお願いしました。
ですが、ヤマアラシはこのお願いを断りました。そして言ったのです。「ここに居るのが嫌なら、君たちが出て行けばいいじゃないか。」
※出典:北村世都「社会性の発達」内藤佳津雄・北村世都・市川優一郎編『発達と学習』弘文堂より
ギリガンが用いたモラル・ジレンマ課題は上記のようなものであり、小学校高学年から中学生の子供にどうするべきか判断を求めました。
この課題に対しても、「もともとモグラの家なのでヤマアラシが出て行くべきだ」という正義や公平に基づく判断をする子どももいましたが、「ヤマアラシに毛布を掛ける(ことで棘が刺さらないようにして共存する)」といった回答も見られることを示しました。
これは他者との関係性や配慮を重視する考え方であり、『配慮と責任感の道徳性』といえます。
配慮は英語ではcareであり、介護の倫理にも深く関わっている考え方です。
ギリガンは、「配慮と責任感の道徳性」は女性に特徴的なものと主張しましたが、他の研究では男女差が示されていないものもあり、「正義と公平の道徳性」と「配慮と責任感の道徳性」のどちらも個人や状況に応じて適用していると考えられます。
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