障害別に見た福祉住環境整備

【❶肢体不自由:脊髄損傷】損傷レベルと感覚・膀胱・直腸機能障害とは? vol.133

2020-10-24

こんにちは 介護ラボ・カナログのカナです。

以前【①肢体不自由(運動機能障害)】脊髄損傷レベルと介助方法 vol.72、を書いたので、重複部分が沢山ありますが、今日から福祉住環境の視点をまとめていきます!

受傷原因と治療方法

Contents

1.脊髄損傷の特徴
2.受傷原因と治療・リハビリテーション
3.脊髄の損傷レベルと到達可能なADL
4.生活上の配慮・工夫と福祉住環境整備
 1⃣感覚障害
 2⃣膀胱機能障害
 3⃣直腸機能障害

1.脊髄損傷の特徴

脊髄損傷とは?

脊髄損傷とは?
外傷や疾病などにより脊髄が損傷を受けた状態をいいます。脳とからだの各部位を結ぶ神経の連絡路が障害されることから、「運動機」「知覚機能」「自律神経」が障害を受け、麻痺などが出現します。

脊髄は、上から頸髄(C1〜C8)、胸髄(T1〜T12)、腰髄(L1〜L5)などに区分され、損傷を受けた位置により障害の状況や自立可能なADLがある程度予測できます。

◉上部の脊髄損傷 ▶︎ 呼吸障害、四肢麻痺など重篤な機能障害を示し、ADLは全介助となる。移乗動作も困難になるため、福祉用具の導入も必要になります。

◉下部の脊髄損傷 ▶︎ 上肢、特に手指の筋肉に麻痺が残り、自助具及び介助が必要となる場合があります。

・胸髄損傷 ▶︎ 体幹と両側下肢が障害された両下肢麻痺(対麻痺)
・腰髄損傷 ▶︎ 両側下肢が障害された両下肢麻痺(対麻痺)

脊髄の損傷の程度により「完全麻痺」と「不完全麻痺」に区分されます。

・完全麻痺 ▶︎ 脊髄の断面が完全に切断された状態。損傷レベル以下の運動神経麻痺と知覚障害が見られます。

・不完全麻痺 ▶︎ 神経断面が多少でも繋がっている状態。損傷レベル以下の神経がつながる一部の運動機能や知覚が残存。

肢体不自由とは?

上肢や下肢ないし体幹に運動機能障害があり、日常生活に不自由をきたしている状態のこと。中枢神経の障害が原因であるため、運動機能だけなく、感覚、高次脳機能、自律神経機能など複数の障害を併せ持つことになります。

2.受傷原因と治療・リハビリテーション

受傷原因とは?
交通事故が最も多い。高所から転落、スポーツ外傷(水泳、スキー、ラグビーなどが多い)が続きます。

◉損傷レベルに応じた、リハビリテーションが不可欠となります。

◉ADLを自立させるために、福祉用具の活用や住環境の整備が有効です。

3.脊髄の損傷レベルと到達可能なADL

脊髄の損傷レベル・ADL

損傷レベル
□運動機能 ◆ADL ◇移乗・移動方法 ▪️必要な自助具・福祉用具

C1ーC3
□首を動かせる
□呼吸障害がある
□上肢、下肢、体幹のすべてが麻痺
◆全介助
◆呼吸、唇、舌、顎の動きを利用したスイッチ操作が可能
◇特殊な電動車いすを操作して移動
▪️人工呼吸器
▪️特殊な電動車いす
▪️環境制御装置
▪️特殊寝台

C4
□自発呼吸は可能
□肩甲骨をあげられる
◆全介助
◆頭につけた棒や口に棒をくわえて動作が可能(パソコン操作、ページめくりなど)
◇特殊な電動車いすを操作して移動
▪️特殊な電動車いす
▪️ヘッドポインター
▪️環境制御装置
▪️特殊寝台

C5
□肩と肘、前腕の一部を動かせる
◆手を用いた動作以外、殆どのADLは要介助
◆スプリント(上肢装具)付きの自助具を用いて、食事、習字、ひげそりなどが可能
◇平地ではハンドリムに工夫した車いすの駆動が可能
▪️電動車いす
▪️ハンドリムに工夫した車いす
▪️車いす用滑り止め手袋
▪️スプリント(上肢装具)付きの自助具(食事、習字、ひげそり用など)
▪️環境制御装置
▪️特殊寝台
▪️リフト

C6
□肩の力はまだ不完全
□肘を曲げるのは可能だが伸ばせない
□手首を上げるのは弱い
□プッシュアップが可能
◆ADLは中等度〜一部介助(住環境のきめ細かい設定が必要)
◆自助具を用いて食事、 習字、ひげそりなどが可能
◆上半身の更衣が可能
◆ベットのサイドレールやロープ等を用いて起き上がりや寝返りが可能
◇平地ではハンドリムの工夫した実用的な車いすの駆動が可能
◇ベットと車いすの移乗が一部の人で可能(前後方向)
◇改造自動車の運転が一部の人で可能
▪️ハンドリムに工夫した車いす
▪️電動車いす(屋外用)
▪️自助具(食事、習字、ひげそり用、更衣、入浴用など)
▪️バスボード
▪️特殊寝台
▪️リフト

C
□手関節までの動きはほぼ完全である
□手首の屈伸が可能
□プッシュアップが可能
◆ADLは一部介助〜ほぼ自立(住環境のきめ細かい設定が必要)
◆自助具なしで食事が可能
◆整容と更衣が自立
◆起き上がりや寝返りが可能
◇標準形車いすで移動
◇ベットと車いすの移乗が可能(横方向)
◇便器と車いす
の移乗が可能
◇改造自動車の運転が可能
▪️車いす
▪️入浴用自助具
▪️バスボード

C8ーT1
□上肢が全て使える
◆車いすでのADLが自立
◇車いすで段差の乗り越えが可能
◇改造自動車の運転と車いすの搭載が可能
▪️車いす
▪️入浴用自助具

T2–T6
□体幹のバランスが一部安定する
◆簡単な家事動作が自立
▪️車いす

T7–L2
□体幹のバランスがほぼ安定する
□骨盤帯の挙上が可能
◆福祉住環境整備により、家事、仕事が可能
◆スポーツが可能
◇実用的な車いすで移動
◇実用性は乏しいが、装具と松葉杖で歩行可能
▪️車いす

L3–L4
□体幹は安定する
□下肢が一部動く
◆ADLは全て自立
◇短下肢装具と杖で歩行可能
▪️短下肢装具
▪️杖

L5–S3
□足関節の動きが不十分
◆ADLは全て自立
◇歩行自立

4.生活上の配慮・工夫と福祉住環境整備

頸髄や胸髄の損傷により、「感覚障害」「膀胱機能障害」「直腸障害」が生じることがあります。下記に詳しくまとめていきます。

1⃣感覚障害

移乗時の受傷予防

移乗時の受傷予防
残存髄節以下の温冷感・触覚・痛覚などの感覚が麻痺するため、ベットから車いすへの移乗時、浴槽への出入り時、便器への移乗時に受傷することがあります。
※ぶつける可能性のある箇所にクッション材を付け、台などの角は面取りして丸みを持たせます。

褥瘡予防 ▶︎ 長時間車いすに座っている場合、少なくとも1時間に1回はプッシュアップを行い、座骨部を徐圧。プッシュアップが出来ない頸髄損傷者では、からだを側方に傾けるとよい。車いすには必ずクッションを使用します。ベットから車いすに自力で移乗する場合、滑りやすく、臀部に剪断力(ずれ力)が掛からない素材のシーツなどを使用します。

やけど予防 ▶︎ 入浴時に熱湯がかかっているのに気付かず、やけどをすることがあるので注意が必要です。

2⃣膀胱機能障害

膀胱機能障害

使用する尿器具や排尿方法は、損傷レベルや膀胱機能の回復状態に応じて様々です。
排尿の場所(自宅、外出時、仕事場)や、生活時間(就寝時、日中)によって使用する場所や尿器具を把握します。トイレは寝室や居間近くに設置することが必要です。

3⃣直腸機能障害

直腸機能障害

脊髄を損傷した殆どの人が、正常な便意と排便コントロールを失い、慢性期には便秘傾向になります。※イレウス(腸閉塞)の発生に注意して、緩下剤、座薬、浣腸などの薬剤使用により、定期的な排便習慣を確立する必要があります。

◉排便方法は症例によって異なります ▶︎ 坐薬の挿入、浣腸、摘便などを、どこでどのような姿勢で行うかを把握、手すりの取り付け位置、便器と壁の距離や配置、便器の形状を決めます。

◉排便に時間がかかる場合があります ▶︎ 空調整備や冷暖房設備、クッション性のある便座の使用を考慮します。

気になるワードがありましたら、下記の「ワード」若しくは、サイドバー(携帯スマホは最下部)に「サイト内検索」があります。良かったらキーワード検索してみて下さい(^▽^)/

ADL QOL グループホーム ケーススタディ コミュニケーション ノーマライゼーション バリアフリー ブログについて ユニバーサルデザイン 介護の法律や制度 介護サービス 介護予防 介護保険 介護福祉士 介護福祉職 他職種 住環境整備 入浴 入浴の介護 医行為 喀痰吸引 地域包括ケアシステム 多職種 尊厳 感染症 支援 施設 権利擁護 社会保障 福祉住環境 福祉住環境整備 福祉用具 経管栄養 老化 脳性麻痺 自立支援 視覚障害 認知症 誤嚥性肺炎 障害について 障害者 障害者総合支援制度 障害者総合支援法 食事 高齢者


人気ブログランキング

にほんブログ村 介護ブログへ
にほんブログ村

に参加しています。よかったら応援お願いします💛

Twitterのフォローよろしくお願いします🥺





Follow me!

  • X
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
よろしくお願いします♡

-障害別に見た福祉住環境整備
-, , , ,