こんにちは(^▽^)/ 介護ラボのkanaです。今日は「障害の理解」の中から『高次機能障害』について、昨日と今日、明日の3回に分けて書いていきます。
高次脳機能障害の4つの原因
Contents
1.高次脳機能障害の主な4つ原因
1⃣脳血管障害(脳卒中)
2⃣頭部外傷(外傷性脳損傷)
3⃣低酸素脳症
4⃣脳炎
2.子どもの高次脳機能障害の原因
3.障害の特性の理解
1⃣身体的側面の理解
●運動機能への影響
●感覚機能への影響
2⃣心理的側面の理解
●障害認識と新たな自己の受け入れ
●脳損傷者の自己認識階層モデル
●家族の心理
3⃣生活面の理解
1.高次脳機能障害の主な4つ原因
高次脳機能障害の原因は大きく分けて4つの原因に分類されます。
(下記の表が大まかな原因疾患になります)。
高次脳機能障害の主な原因
❶【脳血管障害(脳卒中)】
・脳梗塞
・脳出血
・くも膜下出血
❷【頭部外傷(外傷性脳損傷)
・脳挫傷
・びまん性軸索損傷
❸【低酸素脳症】
❹【脳炎】
❺【その他】
・脳損傷など
※次項から疾患別に細かくまとめていきます。
1⃣脳血管障害(脳卒中)
脳血管障害(脳卒中)とは、脳の血管の異常によって生じる病気のことをいいます。脳血管障害は、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」に分けられます。
脳梗塞の脳出血も、特に50代以上の年代で多く見られます。
生活習慣病が原因となることが多いため、再発予防の観点からも高次脳機能障害発症後の生活上の支援では留意が必要となります。
くも膜下出血は、脳動脈瘤という一種のこぶのようなものが破裂することによって生じます。出血量が多く広い範囲に広がると高次脳機能障害を発症しやすくなります。
2⃣頭部外傷(外傷性脳損傷)
交通事故やスポーツ事故、転倒などによって頭部に外側からの強い力が加わり、その隊とくに脳への損傷を受けた場合を「外傷性脳損傷」と呼んでいます。
外傷性脳損傷には、脳への障害によって出血医師損傷が生じた場合(脳挫傷)や、脳が強く揺さぶられることによって神経の伝達経路(軸索)があちこちで寸断される「びまん性軸索損傷」があります。特に意識障害を伴う場合には、高次脳機能障害が生じやすくなります。
3⃣低酸素脳症
低酸素脳症は、心臓の動きが止まる心停止や窒息などによって脳に十分な酸素が送られなくなると、脳に障害が生じることをいいます。
- 心筋梗塞
- 水に溺れること
- 喘息発作
によっても生じることがあります。脳の広範囲に影響を及ぼすことが知られており、若い年代にも見られます。
4⃣脳炎
脳炎は、ウィルス感染などによって脳に炎症が生じる病気です。ヘルペス脳炎がよく知られていますが、脳炎は子どもに多く見られます。
2.子どもの高次脳機能障害の原因
子どもの場合も、大人と同じような原因があげられますが、発症年齢によって原因の傾向が異なります。
- 幼児期:急性脳炎によるものが多い
- 学童期(小学校入学後):交通事故による頭部外傷が増加する
- 10代後半:バイク事故を含めた交通事故や、スポーツ事故などによる頭部外傷の割合が多くなる
なお、子どもの場合であっても一定の割合で脳血管障害(脳卒中)によるものがみられることも忘れてはなりません。
3.障害の特性の理解
1⃣身体的側面の理解
生活面への支援をするうえで、高次脳機能障害と合わせて生じやすい身体面への影響や特徴を知っておくことは重要です。なぜなら、高次脳機能障害と身体面への影響の両方を踏まえた支援方法を考えることが必要となるからです。
●運動機能への影響
脳の損傷した部位によっては、運動機能にも影響がみられる場合があります。脳血管障害後に起こる、「右半身麻痺」や「左半身麻痺」などの片麻痺と言われる状態もその例です。
麻痺がない場合でも、運動失調といって、右手と左手、手と足などの別々の動きを一連の動作としてまとめて行う協調運動が上手くできず、ふらついたような歩き方になることや、震えが出て細かい作業が出来なくなることもあります。
また声を出すための筋肉が上手く動かせず、ぎこちない話し方になる構音障害が出ることもあります。この場合、言葉の理解や言葉を正しく使うことが難しくなる認知症状としての失語症とは異なるため正しい理解が必要になります。
その他、食べ物を上手く飲み込むことが出来なくなる嚥下障害が生じることもあります。これらの障害に加えて高次脳機能障害があると、安全な生活を送るために環境を整えるなど、周囲からの配慮が必要となります。
●感覚機能への影響
脳の損傷によって感覚機能にも影響が出ることがあります。視野の半分が見えなくなる「半盲」や、味が分からなくなる「味覚障害」、匂いが分からなくなる「嗅覚」障害などがその例です。
半盲の場合、高次脳機能障害の症状としての半側空間無視が半盲と同じ半側に対して生じることがあり、その場合の状態はやや複雑になります。
半側空間無視とは、片側半分からの刺激を認識できなくなることで、片側だけ食べ残しがある、まっすぐ歩けずに認識できる側に寄って行くなどの様子が見られたりしますが、本人はその状態に気付いてないことが殆どです。これに対して、半盲は片側が見えていないことの自覚がありますので対処方法が異なります。
2⃣心理的側面の理解
身体機能の障害と異なり、認知機能の障害が一見して分かりにくいことは先に述べたとおりですが、本人も自分の状態に気付きにくいことが多く、そのために周囲とうまくやっていくことが難しくなります。心理面を理解するためには、認知障害から生じる特徴を理解しておく必要があります。
●障害認識と新たな自己の受け入れ
自分の病気や障害が正しく認識できない状態を「病識低下」や「病識欠如」といいます。心理学的には自己意識性の障害とも言います。
この状態は高次脳機能障害にみられる症状の1つでもあり、そこにさらに本人の心理機能が絡んでくるため、話は複雑になります。特に発症して間もない場合、本人は以前との変化に気付いていないため今まで通り何でも出来ると思って行動しようとします。
その際に、周りから行動を止められたり、出来ていないことを指摘されると興奮して怒り出すことがあります。怒り出さないまでも、出来ないことを認めず他人のせいにして何かと言い訳をするため、周りは戸惑います。
そこで・・・本人が自分の状態を理解出来るように働きかけ、上手くできないことについては対処方法を学ぶことを促します。これらを通して何とかやれそうだと思えるようになることで、新たな自分を受け入れられるように支援することが「高次脳機能障害のリハビリテーションの目標」となります。
信頼関係を築きながら安心できる環境の中で、段階的に病識に働きかけていきます。下記の階層モデルを参考に、気づきがいまどんな段階にあるのか理解することは適切な支援をする上での手掛かりとなります。
●脳損傷者の自己認識階層モデル
⭐Crosson,B.らによる脳損傷者の自己認識の階層モデル
●家族の心理
高次脳機能障害の原因となる怪我や病気の場合、発症直後は生命の危機や意識障害を伴う重篤な状態である事が殆どです。家族はどん底に突き落とされたような経験をします。そこから徐々に急性期から回復し始めると、高次脳機能障害についてもいつか治るのではないかと強い希望を抱きます。
入院場面では、看護師や医療スタッフに守られた環境にあるため、問題は表に現れにくいものです。ところが、退院後自宅での生活が始まると、
- 自分からは何もしようとしない
- ちょっとしたことでイライラして怒り出す
など、入院前にはなかったことがみられます。困った行動を止めようとすると更に怒りが激しくなり、物を投げつけたり、殴りかかってくるなど、身近にいる家族だからこそ、怒りの矛先が向きやすいこともあります。
以前とは人が変わったような状態に家族は戸惑い、その状態が長期化すると不安や無力感、気分の落ち込み、孤立感などが強まることもあります。
生活面の支援を進めるうえでは、家族の心理面にも配慮しながら支援をすることが求められます。
3⃣生活面の理解
身体の重い障害が伴わない限り、トイレに行くことや、用意された食事を摂る、入浴するなどのADL(日常生活動作)は、殆どの場合自分で出来るようになります。
しかし、高次機能障害の為、働きかけがなければ入浴しようとしないといったことは起こる可能性がありますが、入浴動作そのものが出来ないということではありません。一方、
- 買い物をする
- 掃除をする
- 調理をする
といった手順の多い動作では、注意障害や記憶障害、遂行機能障害のため支援が必要となる場合がよくあります。
他の『記憶障害』記事はこちらから・・・
【①認知症の中核症状とは?】記憶障害・見当識障害・遂行機能障害について vol.211
1週間、生活面の理解1か月単位の予定を管理することや、1人暮らしをするなど、生活全般を自己管理するためにはさらに支援を必要とします。しかし支援といっても必ずしも手取り足取り介助するということではありません。出来る限り本人が希望する自立した生活に向けてどのような支援があればどこまでやれるのかを見極めながら、手順書や予定表などを一緒に作成して活用するなど、その人に合った対処方法を考えて生活に取り入れる練習をしていきます。
また、ある程度決まった日課や環境のもとであれば、自立した生活が送れるようになった場合でも、転居などにより生活環境が大きく変化したり家族構成が変化したりすると、出来ていたことも一時的に出来なくなることがあります。
そこで、環境に何らかの変化があった場合には、生活状況を改めて確認しながら、支援の組みなおしをすることも必要です。高次脳機能障害のある人への支援は常に集中的な支援は必要としないものの、環境は変化していくことが常であり、長期的な支援が必要とされます。
他の『高次脳機能障害』記事はこちらから・・・
【片麻痺の観察と支援】と4つの場面(食事・入浴・排泄・外出) vol.28
【①認知・行動障害】高次脳機能障害とは?福祉住環境の4つのポイント vol.156
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