こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「医療的ケア」の中から『高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論』について10回にわけて(呼吸のしくみから吸引についての理解、利用する家族の気持ち…など)書いていきます。今日は7回目です!!
迷走神経とは?
Contents
1.人工呼吸療法(侵襲的)の場合の気管カニューレ内部の吸引
1⃣気管カニューレと気管切開部
2⃣迷走神経とは?
3⃣気管カニューレ内部の吸引の留意点
2.まとめ
1.人工呼吸療法(侵襲的)の場合の気管カニューレ内部の吸引
1⃣気管カニューレと気管切開部
空気を送り込むために気管に穴をあけて、そこから呼吸を補助する人工呼吸療法があり、気管に穴をあけることを「気管切開」いいます。通常、気管切開をすると声を発することが困難になります
気管切開をしている場合の気管カニューレは、首の中央部から気管に挿入されています。
気管カニューレの先端近くには、気管カニューレの外側周囲に小さい風船のようなものを膨らませる部分があり、これを「カフ」といいます。
カフは・・・
- チューブがずれないように固定したり、
- 十分な換気を維持したり、
- 口は鼻からの分泌物が気管に入り込まないようにしたり
するものです。
カフの中には、利用者の状態に合わせた設定の空気が入っています(空気はパイロットバルーンというところから注射器で入れます)。この空気が多すぎると気管の表面を圧迫して傷つけてしまいます。
またカフの中の空気が抜けてしまうと、送り込まれるはずの空気が気管から肺へ十分届かず漏れ出してしまうので、注意が必要です。
気管カニューレの種類には、
- カフが付いていない気管カニューレ
- カフ付き気管カニューレ
- カフとサイドチューブ付き気管カニューレ
があります。
このサイドチューブとは、気管カニューレの外側であるカフの上部に溜まっている分泌物等を吸い出すための細い管のことです。
2⃣迷走神経とは?
気管カニューレ内部の吸引とは、気管カニューレからはみ出さない深さまでの吸引をいいます。
気管カニューレより先の気管の部分には、「迷走神経」という神経があり、この部分を刺激してしまうことで心臓や呼吸の働きを停止させてしまう危険性がありますので、吸引チューブの挿入は、気管カニューレの先端を超えないよう十分注意が必要です。
- 迷走神経とは?
-
脳神経の1つで、咽頭・喉頭の筋肉の運動に関与し、心臓・肺・消化管に分布する副交感神経を含んでいます。副交感神経とはからだを緊張状態にする交感神経と反対の働きをしており、血管を拡張させたり、心拍数を減少させたりするなどの働きがあります。
また、利用者の状態によっては、医師の判断により人工呼吸器や気道カニューレを装着せず気管切開の穴をあけたままの状態にしている場合があります。
通常、気管切開をしている人は、声を発することが困難ですが、発生を可能にする器具を挿入して会話が出来るようにする場合もあります。
- 気管カニューレは、医師が定期的に清潔なものと交換します。
気管カニューレは、固定ベルトを首の周りに通して、ずれたり抜けたりしないように固定されます。利用者の体動や頭の向き、回路が引っ張られることなどによってズレることがありますので、注意が必要です。
また、気管カニューレの挿入部の皮膚は、長期間にわた硬い器具が接触しているために、ただれや出血、浸出液がみられることがあります。気管カニューレの周囲は、常に清潔に保つことが重要です。
なお、皮膚に異常がみられるときには、医師や看護職による皮膚の処置や対処が必要になりますので、医師や看護師に連絡をします。
3⃣気管カニューレ内部の吸引の留意点
人工呼吸器装着者のうち、気管切開をしている場合は、気管にカニューレ(異物)が入っているために痰が増えたり、吸い込んだ空気が口や鼻を通過しないために乾燥し、痰がかたくなったりします。
また、細菌などが空気とともに侵入しやすく、痰が増加したり、空気の出口が大きいために咳をしにくくなり、痰を吐き出しにくいといった状態になります。
気管カニューレ内部の吸引では、通常、病原性の細菌等がない気管に、感染の原因となるような分泌物や細菌を付着させたり、吸引チューブと落としたりしないように、清潔な吸引チューブや滅菌精製水等を用いた無菌的な操作が必要です。
吸引の際は、1度、気管カニューレと回路を繋ぐコネクターを外すことになります。
コネクターを外す際は、清潔に取り扱い外した回路内の水滴が気管カニューレや利用者の口に入らないように留意します。コネクターについている痰は、清潔な洗浄綿などで拭き取ります。
吸引前後に利用者の状態をしっかりと確認することと、吸引後速やかに、かつ確実に人工呼吸器回路を接続することが非常に重要です。
人工呼吸器の着脱に伴ってアラームが鳴る仕組みになっていますが、吸引後に人工呼吸器を装着するまでの間、利用者には人工呼吸器からの空気の送り込みはなく全く呼吸のない、若しくは呼吸が弱い状態になっているため、利用者は非常に苦しい状態になります。
再び人工呼吸器を装着してもアラームが鳴りやまない場合は、緊急を要する状態の可能性もあり、医師・看護職に連絡をする必要があります。
人工呼吸器を装着している人は呼吸の補助が必要です。そのような人に対する気管カニューレ内部の吸引は、吸引の圧が高すぎたり、吸引時間が長すぎたりすると、利用者の体内の酸素量をさらに低下させてしまうことに繋がります。更に、気管の粘膜を傷つけて出血させてしまう危険もあります。
適切な吸引圧と吸引時間を守ることが非常に重要です。
また、気管カニューレ内部の吸引の場合、吸引チューブを深く挿入し過ぎて気管カニューレ内部を超えてしまうと、気管に吸引チューブが当たって迷走神経を刺激してしまい、突然の心停止や血圧の低下などを起こす危険があります。
気管カニューレ内部の長さには個人差がありますので、利用者によって決められた挿入の長さを確実に守る必要があります。
カフとサイドチューブが付いている気管カニューレを装着している利用者の場合には、サイドチューブからカフの上部に溜まっている分泌物等を吸い上げる場合があります。
サイドチューブからから分泌物等を吸い上げるということは、吸引圧が直接気管の内壁(粘膜)にかかるということになります。カフ上部に溜まる分泌物の量や性状は利用者の状態によって異なります。
また、呼吸に伴う貯留物の音の変化の確認が困難であったり、利用者自身がカフ上部の貯留物を自覚しにくいうえ、分泌物が視覚的に確認できない状況で吸い上げることになりますので注意が必要です。
また、分泌等の性状によってはサイドチューブが詰まりやすくなったり、利用者の誤嚥の有無によっては吸い上げる内容物の量や性状が変わったりします。
効果的に吸い上げるには、カフの中の空気圧が適切に保たれていることが必要です。カフの管理については事前に医師・看護職と連携して相談しておくことが必要です。
サイドチューブから分泌物物等を吸い上げる場合は、事前に医師・看護職に確認するとともに、吸い上げた分泌物等の量や性状に浮いても観察し、医師・看護職への報告を行うことが必要です。
人工呼吸器を装着している状態では言葉による訴えが困難となりますので、吸引前と吸引後に十分な説明や声掛け、意思確認を行うことが大切です。
さらに、吸引前と吸引後の呼吸状態や顔色・表情などを観察して、いつもと違う状態ではないか確認することも重要です。
また、介護福祉職による喀痰吸引の範囲は気管カニューレ内部となっているため、十分痰が吸いきれない場合があります。そのような場合は医師・看護職に対応を依頼します。
2.まとめ
以上のように、人工呼吸器の着脱を伴う気管カニューレ内部の吸引には重篤な症状をもたらす多くの危険が伴うため、医師・看護職との連携を密に図り、安全を確保することが重要です。
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