こんにちは 介護ラボのkanaです。今日は「医療的ケア」の中から『高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論』について10回にわけて(呼吸のしくみから吸引についての理解、利用する家族の気持ち…など)書いていきます。今日は8回目です!!
人工呼吸器装着者の生活支援上の留意点
Contents
1.人工呼吸器装着者の生活支援上の留意点
1⃣意思伝達の手段
2.人工呼吸器装着者の呼吸器管理に関する医師・看護職との連携
1⃣日常的な連携
2⃣緊急時の対応
3.まとめ
1.人工呼吸器装着者の生活支援上の留意点
前回までの①~⑧で書いた通り、人工呼吸器は複雑な仕組みを持っています。したがって人工呼吸器を装着している人に対する生活支援の場面では、トラブルを防ぐための注意が必要です。
例えば、人工呼吸器本体は室内の空気を吸い込み、フィルターを通りて送り込みます。
したがって、人工呼吸器本体の周囲の壁などの間には、一定の隙間を残しておきます。そして、室内の空気を清潔に保ち、ほこりを立てないように気を付けます。
また、回路の接続部が外れたり、緩んだり、ねじれたりする場合や、非侵襲的な人工呼吸療法の口鼻マスクまたは鼻マスクがずれてしまった場合には、空気が漏れ出してしまい、利用者に酸素が届かずに生命への危険を生じる恐れがあります。
特に、排泄時(おむつ交換)や清拭、体位変換などの際には、回路を引っ張ったり、口鼻マスクまたは鼻マスクがずれたりしないように留意することが重要です。
回路が引っ張られて気管に挿入している気管カニューレが抜けてしまうこともあり、医師・看護職による早急な対処が必要な緊急事態となってしまいます。
さらに人工呼吸器には多くのスイッチがあり、スイッチによっては送り込む空気を調整していますので、からだに触れることのないようにする注意が必要です。
人工呼吸器以外のものを使用するために電源を操作する場合には、誤って人工呼吸器の電源の差し込みが緩んだり、抜けたりしないよう、その都度差し込みの確認が必要です。
1⃣意思伝達の手段
また、人工呼吸器を装着している場合は、利用者は声を発して会話をしたり、要求を正確に伝えることが困難な状態になります。苦しいということを伝えることが困難な場合もあります。
- 必ず意思伝達の手段を確保して、利用者が自分の思いや要求をしっかりと伝えられるような工夫をするとともに、十分に声掛けをし表情などの変化を観察することが大切です。
このように、人工呼吸器装着者に対する支援では、日常生活支援の場面においても十分な注意をしなければ、生命絵の危険が生じる恐れがあります。
2.人工呼吸器装着者の呼吸器管理に関する医師・看護職との連携
人工呼吸器を装着する状態とは、自分の力だけで呼吸するのが困難であり、呼吸を補助してもらう必要のある状態です。
また、人工呼吸器という複雑な医療機器を使用していることに加え、吸引の際にも多くの危険を伴います。
医師・看護職及び医療機器提供会社等による専門的な呼吸管理の下で適切な連携を図り、安全を確保することが重要です。
次項からは、医師・看護職との連携にあたり、日常的に行う連絡や情報提供、緊急時対応についてまとめていきます。
1⃣日常的な連携
人工呼吸器を装着している人の支援にあたり、吸引に関する直接的留意点のほかにも、生活支援場面において多くの留意点があります。
日常生活の管理を確実に行うことは、多くの危険を未然に防ぎ、異常の早期発見に繋がります。
利用者の変化の有無にかかわらず、日常的に医師・看護職への連絡、相談、情報提供を実施することが大切です。
吸引方法の留意点
◉吸引方法の留意点である、
・吸引チューブの種類
・吸引チューブ挿入の深さ
・吸引時間
・吸引圧その他
は、利用者1人ひとりの状態によって異なります。具体的な方法の留意点については、事前に医師の指示を確認しておきます。
また、その留意点は利用者の状態の経過(変化)に伴って変更する必要がありますので、定期的に医師・看護職との間で相談して見直します。
◉変化の有無にかかわらず、
・体温や呼吸の状態
・痰の性状
・吸引前後の利用者の様子(気持ちも含め)
については、定期的に医師・看護職に連絡が必要です。
医師・看護職は利用者の状態変化がないかどうか、対処が必要かどうかを判断します。
医師・看護職はその判断から専門的な排痰ケアや、人工呼吸器の設定の変更・薬剤の検討などを行います。そのため、医師・看護職への情報提供は非常に重要です。
◉人工呼吸器や付属品(回路等)の管理、気管カニューレの管理及び周囲の皮膚の管理などは、基本的に医師・看護職が実施することです。
しかし、何かいつもと違うようだと気付いた際には、医師・看護職にすぐ連絡をして対処してもらうようにすることが重要です。
以上のように、「いつ」「どこで」「どのような」内容を、どのような方法で連絡を取り合うのかということを、事前に医師・看護職との間で決めておくことが必要です。
2⃣緊急時の対応
次に、人工呼吸器装着者の呼吸管理および吸引に関連して、緊急の対応を要する状態とは、主に次の通りです。
緊急の対応を要する状態
◉人工呼吸器の音に合わせて胸のふくらみがない(弱い)状態
◉痰を吸引して除去したにもかかわらず「呼吸が苦しい」という訴えがある。または苦しい表情がみられる
◉顔色が青白い、気管からの吸引物が鮮やかな赤色である
◉気管カニューレが抜けている
◉人口呼吸器のアラームが鳴りやまない
◉停電などにより、人工呼吸器の作動が停止した
このような緊急時は、生命の危険を生じる可能性があり、迅速な対応が必要です。普段から緊急時を想定して、下記のような、家族や医師・看護職と取り決めをして共有することが非常に重要になります。
★緊急時の連絡先(連絡網)
★緊急時に連絡すべき内容
・いつ
・どこで
・誰がまたは何か
・どのように
・どうしたか
・どうなったか
★対応方法
3.まとめ
このように、緊急を要する状態などになる原因には、利用者の病状の急激な変化や、人工呼吸器や回路などの付属品のトラブル(正常に作動していない)、吸引の操作に伴う異常の発生などが考えられます。
どくに、人工呼吸器は、
- 停電時
- 災害時
などに電源が確保されなければ利用者の生命にかかわりますので、日頃から停電時・災害時を想定した対処や備えについて、医師・看護職に確認をしておくことが重要になります。
もし異常が発生した場合には、まず医師・看護職に連絡して至急対処してもらうことが必要です。
緊急事態に至った原因の特定は困難かもしれませんが、医師・看護職が到着するまでの対応として、利用者の状態を常に観察しておくとともに、人工呼吸器の回路や周辺の状況にいつもと違ったことがないかどうかを確認しておくことが重要です。
医師・看護職が到着したら、その以上の原因を確認したうえで、呼吸状態を回復するための治療や処置が行われます。
緊急事態に早期に対応するには、日常的に医師・看護職との情報交換をして、緊急時に備えた事前の取り決めをしておくことが重要になります。
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