発達と老化の理解

【成長・発達に関する3つの説】ゲゼル、ワトソン、シュテルン、ジェンセン…について vol.347

2021-05-26

こんにちは。介護ラボのkanaです。今回は「発達と老化の理解」の中から『成長・発達に関する3つの説』について書いていきます。

3つの成長・発達に関する説

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ゲゼルによる成熟優位説

近代以前のヨーロッパ社会では、生まれこそが人生を決定する要因であり、1859年に発表されたダーウィン(Darwin,C.R.)の進化論も、発達に対して遺伝的要因を重視する立場に影響を与えたといわれています。

ゲゼル(Geseell,A.:1880~1961年)は、発達を決定する要因として、遺伝的要因を重視した「成熟優位説」の提唱者です。

ゲゼルらは、遺伝的に類似である双子の子どもを対象として、発達における遺伝的要因の重要性についての研究を行いました。

階段上りを題材にした研究では、生後46週の双子の子どもの一方に4、5段ほどの階段を上る練習を6週間継続して行いました。その結果、52週目には、26秒で階段を上ることが出来るようになりました。

一方で、52週目にはまだ練習していなかった方の子どもに階段上りをさせると45秒かかっていました。しかし、練習をしていなかった子どもにも52週から階段上りの練習を開始すると、たったの2週間の練習によって10秒で階段を上れるようになってしまいました。

もちろん、46~52週までの練習もそれなりの効果があったわけですが、52週から始めた練習は非常に効果的であったといえます。

つまり、十分に成長・成熟した後でないと、効果的な学習は出来ないというのがゲゼルの結論であり、発達に決定的に影響を持っているのは遺伝的要因であるという「成熟優位説」を主張したのです。

ある知識や技術についての学習が成立するために十分に成長・成熟できた状態をレディネスといいます。

成熟

他の『成熟』記事はこちらから・・・
【成長・発達の考え方】生涯発達の7段階とは? vol.75

ワトソンによる学習説

遺伝的要因ではなく、経験による学習こそが発達を決定付けるという考え方を「学習説」といいます。

行動主義の心理学を創設したアメリカの心理学者であるワトソン(Watson,J.B.:1878~1958年)は、自分に子どもを預けてくれるならばどんな職業にでもしてみせるといったことで有名です。

人には生得的(本来備わっている 先天的なもの)な遺伝的要因の違いはなく、人間の知性は経験による学習によってのみ習得されていくという経験重視の考え方を元にしています。

ワトソンの発言は、遺伝的要因を一切排除した極端な説ですが、発達における学習の重要性が認識されるのに大きく貢献したといえます。

輻輳説・相互作用説

かつては極端な生得説や学習説も主張されていましたが、現在では、「遺伝的要因」と「環境的要因」の両方が発達に影響していると考えられるようになっています。

しかし、2つの要因がどのように関係しているのかということについては、いくつかの考え方が提案されてきました。次項で詳しくまとめていきます。

1⃣シュテルンが提唱した輻輳説

輻輳説とは?

シュテルン(Stern,W.:1871~1938年)が提唱した輻輳説は、「遺伝的要因」と「環境的要因」が加算的に働き、発達が決まるという考え方です。

発達の領域によって必要とされる遺伝的要因と環境的要因それぞれの強さは様々ですが、両者の足し算で適切な発達の程度が決まると考えられています。

その考えからは「ルクセンブルガー(Luxenburger)の図式」として示されています。遺伝的要因と環境的要因を図式化し、半々が影響を与えていることを示しています。

この考え方では、発達的現象が生じるには生得的要因+経要的要因をいう足し算が必要です。遺伝的要因は、生得的要因が強い発達的現象(例えば身長)を示し、環境的要因は経験的要因(例えば練習を必要とする運動)が強い現象にあてはなることになります。

この説では「遺伝的要因」と「環境的要因」は独立して、加算的に働いており、一方が強く影響するならば他方は弱くなると考えられます。

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2⃣相互作用説

相互作用説とは?

現在では、遺伝的要因と環境的要因は独立して加算的に働くのではなく、相互手作用して積算的に発達に影響を及ぼしているという考え方が支持されるようになっています。このような考え方を「相互作用説」といいます。

❶環境閾値説
環境閾値説とは?

初期の相互作用説としてアメリカの心理学者ジェンセン(Jensen,A.R.:1923~2012年)が、1960年代に発表した「環境閾値説」があります。ジェンセンは、発達に対する遺伝的要因が実際に発現するためには、必要としている環境的要因の程度があり、それを環境閾値を呼びました。

ジェンセンの理論は遺伝的な要因の発現という観点から環境を捉えており、生得的要因を重視した相互作用説といえます。

❷成長・発達における教育の効果
成長・発達における教育の効果

子どもへの教育は成長に応じて、より積極的に必要な経験をさせることで発達を促す重要な環境的要因です。しかし、遺伝的要因であるレディネスと環境的要因である教育の相互作用を遡って、いくつかの考え方が示されています。

前述のゲゼルの成熟優位説は、成長・成熟が一定に達しないと学習の効果は薄いと考え、学習や教育のそれぞれの内容に応じたレディネスを十分に待ってから、教育的な環境的要因が有効となる遺伝的要因重視の考え方といえます。

◉ブルーナーの早期教育
ブルーナーの早期教育

アメリカの心理学者のブルーナ(Bruner,J.S.:1915~2016年)は、どの発達段階にあっても、適切な教育方法をとれば十分なレディネスを待たずに早期からの教育が有効であるという考え方を示しました。

遺伝的要因よりも環境的要因による経験を大きく重視する立場です。この考え方は乳幼児期からの早期い教育への取り組みの理論的背景となっています。

ただし、早期教育には他の領域の発達が阻害される可能性などの批判もあります。

◉ヴィゴツキーの発達の最近領域説
ヴィゴツキーの発達の最近領域説

旧ソビエト連邦の発達心理学者であるヴィゴツキー(Vygotsky,L,S.:1896~1934年)は、遺伝的要因によるレディネスを考慮しながらも、より積極的な教育による環境的要因の効果を考慮する考え方を提唱しました。

ある発達段階では、子どもが1人で解決可能なレベルが存在しており、これには遺伝的要因の影響が強くはたらいています。しかし、大人が関り助力すれば、その子どもが1人で解決できるレベルよりもより高度なレベルの問題の解決が可能となり、これを潜在的発達可能水準と言います。

例えば、算数の問題を子ども1人で解いていてもわからないという場合でも、周囲の大人が考え方のヒントを与えるだけで自分で解くことが出来るようになるならば、その問題は潜在的発達可能水準の範囲内にあると考えられます。

一方で、あまりにも高レベルの問題は助力しても解決に至らず、これは潜在的発達可能水準を超えているということになります。

1人で解決可能なレベルと潜在的発達可能水準の差を「発達の最近接領域」といいます。

環境的要因である教育は、遺伝的要因を無視することは出来ませんが、最近接領域にはたらきかけることによって、より発達を促すことが出来るというのがヴィゴツキーの考え方になります。

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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
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