空間認知機能障害
読み方:くうかんにんちきのうしょうがい
空間認知障害とは、三次元空間の中で、自分の身体の位置や動きを把握する(空間認知)機能が障害されることをいいます。認知症の中核症状の1つになります。
頭頂連合野には、頭頂葉感覚野からの感覚情報、前頭葉からの運動情報、後頭葉からの視覚情報が集められ、三次元空間の中で自分の身体の位置や動きを把握します(空間認知)。
アルツハイマー型認知症では、早期から空間認知機能が低下します。
例えば、デイサービス(通所介護)の送迎者が到着し、車から地面に降りる時、認知症の人はビルの屋上から地面に降りるような感覚で足がすくんでしまうといったことが生じます。車の床と地面の間は小さな段差ですが、認知症の人は別の感じ方をしている可能性があることに思いをはせなくてはなりません。
人は、三次元空間の中で自分の身体イメージを持ちながら行動しています。
そして、車を運転するときは、あたかも車が自分の身体の一部になったようにあやつることができます。この機能が低下すると、車をこするようになってしまいます(注意障害も関係しています)。
また、自分の身体イメージと、服の空間的位置関係がわからなくなると、服を上手に着られなくなります。これは着衣失行といいます。
空間認知はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症で低下してくるのですが、空間認知障害がない人には理解しにくい障害です。それは、自分の身体を無意識に調節して環境に合わせ、三次元空間の中で上手に生活しているからです。
空間認知障害がない人にとっては当たり前のことで、着替えるだけで1時間以上かかるといったことが想像できないのです。それゆえ、認知症の人の行動を注意深く観察して、認知機能が正常な人には見えにくい障害を理解する必要があります。