BPSD治療薬
読み方:びーぴーえすでぃーちりょうやく
BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)の治療は非薬物療法が基本です。自傷のおそれがある場合や、他者に危害を及ぼす場合、施設で他の利用者に多大な迷惑がかかる場合などにやむを得ず鎮静作用のある薬物を使用します。
第1選択肢は「抑肝散」です。理由は短期投与なら副作用が少ないからです。その代わり作用が弱く、これだけでは治まらないことが多いです。
一般的に抗精神病薬が使われます。抗精神病薬の主作用はドパミン受容体の阻害です。ドパミンをはたらかなくすることで、幻覚・妄想や易怒・過活動などが軽減します。
しかし、同時にパーキンソニズムを生じ、身体の動きが鈍くなり、転倒リスクや誤嚥のリスクが高まります。よって、ふらついている事例や、むせがある事例に投与するのは高リスクです。
また、抗精神病薬により意欲が低下し、その人らしさが失われます。なるべく少量を慎重に使うことが必要で、リスクも伴うので、本人もしくは家族の同意のもとで使用することが望まれます。
抗精神病薬には、半減期が短いものと長いものがあります。
例えば、夜間の興奮を抑えて、昼は活動的になるようにするには半減期が5~6時間のクエチアピンが適しています。半減期が1日のリスペリドンを夕方に内服すると、翌日の昼も効いていてボーっとしてしまいます。
ただし、チアプリドが血管性認知症(脳梗塞後遺症に伴う精神興奮、徘徊、せん妄)に適応になっているだけで、抗精神病薬は認知症の適応疾患になっていません。
BPSDは予防に力点をおいて、
・発症させない
・重度化させない
ことで、抗精神病薬の治療や精神科への受診が必要のない状況を作ることが最も大切になります。