介護の心理状況の変化
読み方:かいごのしんりじょうきょうのへんか
介護者は、先の見えない長い階段で、下記の心理状況の変化があります。ときには立ち止まったり、戻ったりし、段階的な変化をします。
- ❶「とまどい・ショック・否認」(ピアサポート)
- 認知症かもしれないという疑いや違和感を覚え始める段階です。頻繁に起こる記憶の障害や不可解な行動を目にしたとき「まさか」という思いと同時に正常な部分を見つけようとします。
- 不安に思い、医療機関に相談や受診をしに行くと、認知症と告知され大きなショックを受けます。もしかしたら一時的なもので治るかもしれないという希望は絶たれて、その事実を受け止めきれず疑い、混乱します。
- 多くの介護者はこれまでに経験をしていない事なので、将来が見えずとまどいます。自身の気持ちを受け入れるための支援が必要になります。
- その際には、介護者同士の「ピアサポート(同様の経験や体験を共有する人同士による支え合い)」が有効です。具体的には家族会のような集まりに参加することです。
- 実際に同じ思いを持ち、生活をしている人と話をし、将来の過程や有効なサービスの使い方等を聞くことで、精神的な安定に繋がったりします。
- ❷「混乱・怒り・防衛」
- 生活の中で起こる様々な理解しがたい出来事が頻繁に起こり、混乱し、今の状況に怒りさえ覚え始める時期です。この怒りは自分自身に対してであり、認知症の人に向けられる場合もあります。
- 何度も何度も同じことを繰り返したり、外出し迷子になって周囲に迷惑をかけてしまうこともあります。また、畳の上で用を足してしまったり、目が離せない状況が起こり、介護者の生活の流れや社会生活や仕事を制限しなくてはならなくなり時期です。
- 一方、認知症の人は、周囲の人には上手に取り繕い、周囲の人から「まだ大丈夫そうね」などと介護者が言われ、介護者自身の状況が理解してもらえないことがあります。認知症と分かってもいても辛く当たってしまい、そのたびに後悔し、身体・精神的に疲れ、反省をします。
- 家族全体、周囲の人が認知症について理解をするための情報提供や話し合いの場面を作っていくことが大切です。
- ❸「諦め・割り切り」
- 今の状況を受け入れると同時に、周囲の助けに限界があり仕方ないと諦め、介護者として生きていこうといった割り切りも生まれる時期です。
- 徐々に、「私にしかこの介護は出来ない」、「私が最後まで面倒を見なければこの人は誰も見てくれない」といった介護への依存傾向があらわれることがあります。
- この時期には、孤立したり、人と接触を避け密室化したりすることによる抑うつ傾向が見られ始めることもあります。
- 介護者自身の心身の健康に注意を払い、介護者自身の休息時間を設けることも大切です。
- ❹「適応・受容」
- 介護者自身で生活のリズムを調整したり、上手に介護サービスを利用して介護をすることで、介護者の自己の成長や新たな価値観を見いだす時期です。
- 「できること」「できないこと」の見定めや、認知症の人の生活の質の向上のために何が必要かを分析的に受け入れることが出来る時期でもあります。
- しかし、本質的には介護の負担は変わっていません。
- 認知症の人の症状や介護者の環境や健康状況によって、再び混乱をきたすこともあります。また、終末期に向けた悲しみや悲哀の感情が生まれることもあるので、介護福祉職は注意深く見守る必要があります