マズローの欲求階層説とは
読み方:マズローのよっきゅうかいそうせつ
人は日々、
- 食事をしたり
- 人と話をしたり
- 読書をしたり
- 散歩をしたり
- 仕事をしたり
と何らかの行動をしています。
しかし、そもそも人はなぜこうした様々な行動をとるのでしょうか?
人は何を求めて日々動きまわっているのでしょうか?
こうしたことに心理学的な視点からアプローチした人物が、アメリカ生まれの心理学者である「マズロー(Maslow,A.H.)」です。
「マズロー」は、欲求階層説において、「生理的欲求」「安全欲求」「所属・愛情欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つの欲求を分類しています。
このうち、生命維持に最低限必要な生理的欲求と安全欲求を「基本的欲求」といいます。
多くの場合、介護の分野では、食事や入浴、排泄の支援を仕事として行い、生理的欲求と住まいの提供として、安全欲求を支援することが多いです。
介護福祉職は介護を必要としている人の基本的欲求を支援することが、その主たる仕事といえるかもしれません。
- マズローの欲求階層説(人間の5つの欲求)
- ✅生理的欲求:最下層である「生理的欲求」とは、食べ物、空気、水、睡眠などを欲する欲求のこと。
人は喉が渇いた時には水分が欲しくなり、空腹の時には食べ物を求めます。自分の遺伝子を継続させようとする性欲もあります。それらは人が自らの生命を維持するために身につけた本能的な欲求になります。
✅安全欲求:これも生命維持のための欲求の1つ。
多くの動物が敵に狙われないように身を隠すなどして、安全な場所を求めますが、人も生命を脅かされない場所を無意識のうちに求めます。近代化された現在では、プライバシーが確保された定住できる場所、雇用の安定といったものに置き換わりつつあります。
☑上述の2つの欲求は基本的欲求で普遍的欲求になります。
人間を含めた動物すべてが持つ共通の欲求といえます。
この欲求が満たされないと、人は生命の危険を感じ強いストレスを覚え、状況によっては混乱が生じ、滅茶苦茶な行動を取ってしまうことがあります。
しかし、もしこの2つの欲求しか人に内在していないとしたら・・・芸術家や小説家がが自分の作品を残そうとしたり、登山家が危険な山に登るといった行為は生まれないはずです。
そこでマズローは、人には更なる欲求があると考えました。
✅社会的欲求:所属・愛情欲求:「地域や家族、学校や会社といった集団に帰属したい、愛情に包まれたい」という欲求の事です。
浪人生活や失業生活では精神的に不安定になり易く、逆に入試に合格したり、入社できるとホッとするのも、この所属・愛情欲求が関係していると考えられます。
✅承認欲求
人は集団に帰属する(所属し従う)だけではなく、その中で、
「称賛されたい、評価されたい、尊敬されたい」と願います。
それは帰属した集団にその一員であることを認められたいという欲求であり、この欲求が満たされないと疎外感(疎まれ排除されているという感覚)や劣等感を感じると考えられます。
✅自己実現欲求
人は「こうありたい」といった高次な目標を持ち、より豊かで充実感のある人生を送りたいと願っています。そうした欲求を自己実現欲求と呼んでいます。
先に記載した芸術家や小説家、登山家の例は、自己実現欲求といえます。
因みに人の脳は「爬虫類の脳」と呼ばれる脳幹、「哺乳類の脳」と呼ばれる大脳辺縁系、「人間の脳」と呼ばれる大脳皮質の3つに分かれ、脳幹は食欲や性欲など生きるための行動を、大脳辺縁系は情動や感情を、大脳皮質は知的な行動や想像力をつかさどっています。
不思議なことにマズローの5つの欲求は脳の構造と非常に似通っています。
マズローは、人の欲求は「生理的欲求」から始まり、段階的に欲求を1つひとつ満たしながら、最終的に自己実現欲求を果たそうとすると考え、この仮説を『自己実現理論』と名付けました。
極端に空腹の時、人はその欲求を満たすことだけに注力し、他の欲求を満たそうとはしません。逆に、その欲求が満たされると次の安全欲求を求め、段階的に「自己実現」という高次の欲求の実現を果たそうとするという考えです。
マズロー自身も述べているように、決してすべての人が自己実現を果たすわけではなく、むしろ自己実現まで到達する人は少数です。
また多くの人はこの5つの段階を順に経て欲求を満たしていくものの、「所属・愛情欲求」や「承認欲求」を飛び越えて、いきなり「自己実現欲求」を目指す求道者(悟りを求めて修行する人)のような人もいます。
また「安全欲求」など下位の欲求が満たされなくなると段階を逆戻りすることもあるなど、様々なパターンが存在します。
マズローは高齢者であっても成長する存在として定義しています。高齢者を支援することは、意義が大きいのです。
高齢者や障害者の支援において、自己実現とは何を意味するのでしょうか?
その人の生活歴をベースに、傾聴と対話を重視することで、やりたいことや、するべきこと、できることを把握する、そしてそれを実現するように支援することが介護の役割でもあります。
つまり・・・自己実現と尊厳の保持、自己決定は重要な行為であり、介護福祉職として、自己実現の支援と尊厳の保持が最も重要な利用者支援といえるのかもしれません。
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