パーソンセンタードケア
読み方:ぱーそんせんたーどけあ
パーソンセンタードケアは、イギリスのブラッドフォード大学の老年心理学教授のキッドウッド氏(Kitwood,T.)によって提唱された世界的に最も知られた認知症ケアの1つの理念です。
パーソンセンタードケアとは、年齢や健康状態にかかわらず、すべての人々に価値があることを認め尊重し、1人ひとりの個性に応じた取り組みを行い、認知症の人の人間関係の重要性を重視したケアのことです。
パーソンセンタードケアでは、「認知症の重症度に関わらず、認知症の人たちを私たちと同じ、”ひとりの人”としてとらえること、さらに、1人の人として受け入れ、尊重されていると本人が感じていること」が重要です。
このように、「認知症の人が周囲の人や社会とのかかわりを持ち、受け入れれていることを実感し、人として、相手の気持ちを大事にし、尊重し合う相互関係を含む”パーソンフッド”」がその目標となります。
キッドウッド氏は、「認知症と共に生きる人々の心理的ニーズ」を下記の花の絵であらわしました。この5枚の花弁は、
「くつろぎ」:Comfort
「共にあること」:Inclusion
「自分自分であること」:Identity
「たずさわること」:Occupation
「結びつき」:Attachment
のニーズをあらわし、互いに重なり合い、関連し合っています。
中心にあるニーズの「愛(Love)」は、あるがままに受け入れ、心からの思いやり、慈しむ(いつくしむ)ことを求めているといえます。
これらのニーズは、すべての人に共通するニーズですが、認知症の人たちは認知機能障害のために満たすことができにくくなっています。
とくにケアの現場では、認知症の人の個人の価値を低める行為が行われることもあります。そのために、これらのニーズが満たされないことや個人の価値を低める行為によって、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)と呼ばれる行動が現れやすくなります。
認知症の人たちの”パーソンフッド”を支えるためには、これらの心理的ニーズをより一層満たし、良い状態を高めるようにパーソンフッド”を維持するための積極的なはたらきかけとして、個人の価値を高める行為を実践していくことが重要になります。