行動障害型前頭側頭型認知症
読み方:こうどうしょうがいがたぜんとうそくとうようがたにんちしょう
前頭側頭型認知症はタウたんぱく又はTDP-43たんぱくが神経細胞内に異常蓄積して発症します。どちらのたんぱくが溜まっているかは、臨床症状からはわかりませんが、前頭葉萎縮が中心の「行動障害型前頭側頭型認知症」ではいずれかのたんぱく蓄積が、側頭葉萎縮が中心の「意味性認知症」ではTDP-43 たんぱくが蓄積している事例が過半数であると病理解剖から判明しています。
前頭側頭型認知症は、ドイツのピック(Pich,A.)医師が、病理解剖例の脳を肉眼で見て前頭葉や側頭葉がそこだけ萎縮している症例を報告したのが始まりで、後にピック病といわれるようになりました。
肉眼でわかるほどの萎縮がというのが特徴で、CTやMRIの画像所見が診断に役立ちます。
行動障害型前頭側頭型認知症は、前頭葉症状として、脱抑制が顕著で、突然行動を起こします。我慢が苦手で、
- 時計や看板が目に入ると読み上げる
- 店の中で欲しいものがあると持ち去る
- いきなり怒る
- 急に立ち去る
など、社会のルールを無視して我が物顔で行動します(我が道をいく行動)。このため暴力・暴言も生じやすく、介護が大変です。また常同行動という同じ行動の繰り返しが特徴で、
- ①こだわりが強い、
- ②決まった時間に決まったことをしないと気が済まない(時刻表的生活)、
- ③無断外出しても、一定のルートを回って戻ってくる周回(迷子になりやすいアルツハイマー型認知症との違い)、しかも何度も同じルートを回るといった特徴がある、
- ④気が変わりやすく(転動性の亢進)、ぼーっとしていたかと思うと(アパシー)、いきなりスイッチが入って過活動になる、
このため、介護負担が最も高いタイプが「行動障害型前頭側頭型認知症」です。
社会のルールを無視する行動や、言葉の理解の障害などから発症し、アルツハイマー型認知症とは明らかに異なる経過を示すので、見分けることが大切です。
その理由は、前頭側頭型認知症は、特に行動障害型前頭側頭型認知症にドネペジルなどのアルツハイマー型認知症薬が投与されると、過活動がさらに過激になり、介護が困難になるからです。
初期には過活動が目立ちますが、進行するとアパシーが目立つようになり、終末期には、他の認知症疾患と同様で、動けなくなり、両便失禁、誤嚥で死に至ります。