アルツハイマー病
読み方:あるつはいまーびょう
アルツハイマー病とは、βたんぱくの蓄積が始まっても無症状な時期、MCIの時期、認知症の時期の全期間をあらわす用語として使われます。
アルツハイマー病は、介護保険法第5条の2の、「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化」として認知症の定義に入っています。
ちなみに、器質的な変化とは、肉眼や顕微鏡を使って脳を調べると脳組織に見つかる病的な変化のことで、脳がダメージを受けている証拠が見つかるということです。器質的な変化は、ほかに、脳炎、脳腫瘍、脳挫傷、中毒などが含まれます。
では、脳にどのような器質的な変化が生じて認知症になるのかを、「アルツハイマー型認知症」の脳を顕微鏡で調べてみると、
・老人斑
・神経原繊維変化
という2つの病的変化がみられることを、アルツハイマー(Alzheimer,A.)医師が、1911年に報告しました。
この老人班は、βたんぱくというたんぱくが神経細胞の周囲に多量に異常蓄積して生じたものだということや、神経原繊維変化はタウたんぱくが神経細胞内に多量に異常蓄積したものだということが1980年代に明らかにされました。
ここから、アルツハイマー病の全経過を以下にまとめます。
アルツハイマー型認知症発症から25年さかのぼると、大脳皮質のごく一部にβたんぱくが老人斑として蓄積し始めます。この沈着は徐々に範囲を広げていくのですが、はじめの20年くらいは無症状です。
それは、認知機能に余力があるので、すこしくらいのダメージでは症状が出ないのです。
βたんぱくの異常蓄積が始まって10年以上経過すると、タウたんぱくの異常蓄積が徐々に始まり、量を増やしていきます。こうしてβたんぱくの沈着開始から20年くらいすると、物忘れが目立つようになります。
しかし、物忘れが強くなっても、生活管理能力が保たれていれば認知症ではないので、MCI(Mild Cognitivu Impairment:軽度認知症状)となるのです。
そして、MCIが5年ほど経過すると、生活管理に破綻が生じて、いよいよアルツハイマー型認知症を発症します。
このころにはβたんぱくとタウたんぱくの異常蓄積が大脳全体に広がっています。
発症した後は、徐々に症状が重度化し、10~15年の経過で燃え尽きるように亡くなります。