異食
読み方:いしょく
認知症の人が、食べ物ではない物を口にいれることを異食といいます。これは、視覚認知障害(失認)から食べられない物を食べられると誤認して起こる場合があります。また、口唇傾向という認知障害で、手に取るものすべてを口に運ぶために生じます。判断力の低下から、調理が必要なものもそのまま食べてしまうといったことも起こります。
異食がみられる場合、口に入れると危険な物を身の回りに置かない(隠す)といった対応は、一時的に危険を除去するという意味では有効です。しかし、人の生活の中から食べられない物をすべて除去することは困難であり、介護者の見守りが不可欠です。
また異食がみられた際には、
「いつ」
「どこで」
「どのような状況」
で行われたかをアセスメントする必要があります。
原因は2つにわけられます。
- 中等度以降のアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では視覚認知障害から見間違いにより食べられない物を食べられると誤認して食べてしまうことがある。これは失認なので、BPSDであると同時に中核症状でもあります。
- アルツハイマー型認知症が重度以降に進行すると、食べられるかどうかの判断無しに手当たり次第に口に持っていくようになります(口唇傾向)。これは1歳児が示す行為と同じです。口唇傾向はBPSDというよりは認知障害そのもので、中核症状です。例えば、冷蔵庫から肉を出してそのまま食べてしまうことなどがあり、肉という食物であることは認識していますが、加熱が必要だということを忘れていたりします。
- 異食した状況(例)
- ・食後、食堂で1人ぼっちですごしていると、置いてあった花瓶の花を口に入れた
・夕方、家に帰りたくて1人でい施設の中で歩いていたら、置いてあったティッシュペーパーを口に入れた
・午前も午後も、1人でソファーに座って過ごしていたが、置いてあったクッションから中身のスポンジを取り出し口に入れた
上記の例のように、孤独感が強くなり、不安や混乱が生じた時、それを埋めるための行動と考えられる場合があります。
他者と接しているときや、みんなで運動しているときなどはには異食はなく、1人ぼっちの状況で孤独感が強くなり、不安や混乱が生じると異食することがあります。
孤独感を緩和することが有効なこともありますので、その場合は、
・気心知れた人と接する機会を増やす
・一緒に散歩や買い物に出かける
・スキンシップの機会をつくる
といった、他者と触れ合いながら孤独を感じない時間を増やすことを試してみるいことも有効です。