発達と老化の理解

【記憶の分類:老化に伴う記憶機能の変化】ワーキングメモリやエピソード記憶とは?

2021-05-31

こんにちは。介護ラボのkanaです。今回は『記憶機能の変化と心理的影響』についてまとめていきます!!

宣言的記憶、手続き記憶・・・

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記憶機能の変化と心理的影響

歳を取ると「記憶が悪くなった」という話をよく聞きます。

しかし、記憶機能はいくつかの異なる機能の集合体であることが分っています。今回は、加齢に伴う記憶機能の変化をまとめていきます。

1⃣記憶の分類

2⃣短期記憶・ワーキングメモリ

短期記憶とは?

短期記憶とは、ほんの数秒程度、限られた容量のことを覚えておく記憶です。短期記憶の容量を確かめる課題としては、「2-6-3」のように、数字を約2秒1つずつ音声や文字で提示し、全部の数字が提示されたら順番に復唱する「数唱課題(順唱課題)」がよく用いられます。数字の個数を増やしていき、何個まで復唱できるかを調べます。

上記の課題を用いると、60歳代、70歳代でもその前の年代に比べ、復唱できる数字の個数はそれほど変化しないことから、短期記憶は加齢に伴う低下が小さいと考えられます。

ワーキングメモリとは、短期記憶の中でも、「計算しながら途中の結果を覚えておく」、「文を読みながらその前の内容を覚えておく」、といった複雑な知的活動の途中において使われる記憶を言います。

ワーキングメモリの課題は、短期記憶の課題と同じように、「2-6-3」のように数字を約2秒に1つずつ提示しますが、全部の数字が提示されたら、今度は数字を逆から順番に復唱する「逆唱課題」がよく用いられます。

順唱課題と同じように数字の個数を増やしていき、何個まで復唱できるかを調べます。その結果は、多くの研究で高齢者は若年者に比べて逆唱できる数字の個数が少なくなり、高齢者の中でも加齢に伴い逆唱できる個数が低下していきます。

その結果から、ワーキングメモリは加齢に伴い大きく低下しやすい記憶と考えられています。

3⃣長期記憶:宣言的記憶

記憶の分類

長期記憶の中でも言語的な記憶を宣言的記憶(陳述記憶)といいますが、言葉の意味や様々な知識に関する意味記憶と、個人の経験や出来事に関するエピソード記憶に分類されています。

意味記憶は・・・

  • 「太陽は東から昇る」
  • 「月は地球の衛星である」

といった、一般的知識が当てはまります。こうした文章を読んで理解出来るのも意味記憶の働きが大きいといえます。

エピソード記憶は、

  • 「昨日の晩御飯にお肉を食べた」
  • 「先週末に映画を観に行った」

などの個人的経験として思い出されるような記憶です。

TOT現象

意味記憶については、個人の名前や使用頻度が低い単語を中心に、分かっているけど名称が出てこないというTOT現象が生じやすくなるという報告があります。

このTOT現象は、舌先現象(したさきげんしょう、英: Tip of the tongue phenomenon)という心理学用語であり、思い出そうとすることが「喉まで出かかっているのに思い出せない」現象のことをいいます。

全般的には意味記憶の機能は老化によってあまり低下しないと考えられており、高齢者にとって知識を活用することは得意な分野といえます。

しかし、エピソード記憶は老化に伴い低下しやすいことが分っています。エピソード記憶は、個人的経験の記憶を対象とすると調べにくいので、単語等を複数個覚えてもらい、その後一定の時間を空けてから覚えてた単語を報告する「再生課題」や、別に用意した単語のリストから覚えた単語を選択する「再認課題」などが用いられています。

再認課題では年代差が小さいですが、記憶した内容をそのまま再現する再生課題では加齢に伴い再生できる個数が減っています。特に60歳代の高齢者グループでは覚えた単語を思い出せる量が20歳代の半分近くまで減っています。

しかし、忘れやすいという実感があるにしても、エピソード記憶がそんなに著しく低下しているということは疑問が出されます。その後の研究で、覚えた事柄を思い出しやすくすることが重要であり、

  • 覚える時に単語だけでなく短文等を付けて、
  • 思い出すための手がかりを増やす、
  • 覚える時や思い出すときにもっと時間後掛ける、
  • 使用する単語を高齢者になじみのあるものにする

などの工夫をすると、高齢者グループのエピソード記憶課題の再生個数が向上することが分りました。

こうした工夫は記憶成績を向上させるとはいえ、やはり多くの研究で高齢者グル-プのエピソード記憶の再生成績は、若年者グループに比べて低くなっているようです。

「歳を取ると記憶が悪くなる」という場合の多くはエピソード記憶の低下を指していると考えられますが、覚え方や思い出し方に工夫をしたり、こまめにメモとするなどの記憶の補助となる工夫をすることで、うまくエピソード記憶の機能と使うことが出来ると考えられます。

4⃣非宣言的記憶:手続き記憶

非宣言的記憶とは

非宣言的記憶(非陳述記憶)とは、言葉によらない長期記憶のことです。代表的なものは手続き記憶です。

手続き記憶は「技能の記憶」であり、

  • 自転車に乗ること
  • 車の運転
  • ピアノの演奏

など、練習して習得した技術です。スポーツ、音楽、物づくり等さまざまな領域で経験によって習得された技能が相当します。

手続き記憶は加齢によってあまり低下しないと考えられています。

感覚機能の低下や運動機能の低下によって、その技能を若い頃と同じように再現できない場合もあります。手順や判断などは記憶を活用できることも多く、急かさずゆっくり取り組めることも大切です。

5⃣自伝的記憶

自伝的記憶とは?

自伝的記憶とは「〇年前に□□ということがあった」「〇歳の頃に△△していた」などの自分の生涯に渡る経験や事件などに関する記憶のことです。エピソード記憶に含まれるものといえます。

高齢者の自伝的記憶に関する研究では、人生の中で思い出されるエピソードを自由に話してもらいます。その結果を年代別に整理してみると、やはり最近の出来事に関するものが最も多く話されるという結果になりました。

現在から時間が離れるほど思い出される件数は減っていき、0~5歳ごろの出来事は極端に減ります。

しかし、途中の10代後半~20代の頃の出来事は思い出される頻度が高まることが分っています。

手続き記憶

他の『手続き記憶』記事はこちらから・・・
【記憶とは何か?】神経学では3つに分類される vol.11

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kana

はじめまして(^-^)/ 介護ラボのカナです。
ブロガー歴3年超(818記事執筆)
介護のあれこれを2020年6月~2022年9/8まで毎日投稿(現在リライト作業中)

社会人経験10➡介護の専門学校➡2021年3月卒業➡2021年4月~回復期のリハビリテーション病院で介護福祉士➡2023年1月~リモートワークに。

好きな言葉は『日日是好日』
「福祉住環境コーディネーター2級」・「介護福祉士」取得
◉福祉住環境コーディネーター1級勉強中!
介護のことを少しでも分かり易く書いていきたいと思っています。
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